最終アブダビGP決勝レースを前に、グリッド上で記念撮影するマックス・フェルスタッペンとレッドブル・ホンダの面々
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コロナ危機、”チームの一体感”の維持に余念なきレッドブル・ホンダ

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如何に個人の戦いに見えようとも程度の差こそあれ、専門深化した現代のあらゆるスポーツはチーム戦と言える。表立ってテレビに映るアスリートの背後には、彼らを支える無数の人々が存在する。

ただ一人コックピットに座って前後左右に激しく襲いかかるGフォースに耐えながら、同じトラックを周回し続けるのがレーシングだとしても、戦っているのはドライバーだけではなく、モータースポーツ、特にF1においては尚の事、成功のためにはチーム力が欠かせない。少なくともレッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表はそう信じている。

ホーナーはレーシングドライバーとしてのキャリアを早々に断念し、自らが立ち上げたアーデンチームを成功に導いた後、今度は設立から僅か6シーズンでレッドブルをチャンピオンチームにまで育て上げた。常勝チームに求められるものが何たるかを熟知している。

笑顔を見せるレッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表、2019年F1ハンガリーGP予選にて
© Getty Images / Red Bull Content Pool、笑顔を見せるレッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表、2019年F1ハンガリーGP予選にて

イギリスでは3月23日より不要不急の外出を禁じており、ミルトンキーンズのファクトリーは閉鎖されている。面と向かって仕事を進める事が出来ないという初めての経験に対してホーナーは、Web会議サービスZoomを使ったバーチャル会議を頻繁に行う事でチームの士気を維持しようとしている。曰くこれは”タウンホール・ミーティング”と呼ばれているようだ。

「みんなが離れ離れになっている今の状況は本当に不自然だから、チームとして一体感を醸成することがとても重要だ」とホーナー代表。英紙ガーディアンのインタビューに答えた。

「変化に対応してこれを管理できるのが我々のチームの強みだ。我々は問題を放置したりせずちゃんと対応して解決する」

「チームとしての一体感を保つために、連絡を絶やさないように気を使っている。オンライン上でフィットネスのクラスを開催したり、パブでクイズをしたりね。様々なことを行っている」

ホーナーは11歳の時に初めてカートを手に入れ、レーシングドライバーとしてのキャリアをスタートさせた。1991年にフォーミュラ・ルノーのスカラシップを獲得すると、英フォーミュラ2とフォーミュラ3で成功を収めた。1996年にはTOM’Sに在籍していた事もある。

1997年にF3000への参戦に際してアーデンを設立。この時ホーナーは、レース機材とマシンの運搬用としてヘルムート・マルコから中古トレーラーを購入した。後に2人はチームの双頭としてレッドブル・レーシングを率いる事になる。

次なるステップに向けて新たな道を歩み始めたホーナーであったが、ポルトガルでのプレシーズンレースの際にファン・パブロ・モントーヤと大事故寸前のバトルとなり、これがきっかけで1998年末に現役を退いてチームマネジメントに徹するようになった。

「これほど長い期間に渡ってサーキットに足を運んでいないのは12歳の時以来初めてだと思うし、同じ場所に籠もり続けたのも今回が間違いなく学生時代以来最長だ」とホーナーは続ける。

「最近、デビッド・クルサードとFaceTime(アップル社製のビデオ通話アプリ)をしたんだ。彼とFaceTimeをするなんて初めてだ。彼は船乗りみたいな髭面になっていたよ」

レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表とデイビッド・クルサード、2014年F1イギリスGPにて
© Getty Images / Red Bull Content Pool、クリスチャン・ホーナー代表とデイビッド・クルサード、2014年F1イギリスGPにて

人の上に立って成功に導く者はその誰もが、直面した事のない危機にあっても希望とチャンスを見出すものだ。ホーナー代表は新型肺炎が猛威を振るう現在の状況について「周りの人たちへの感謝の気持ちが高まるという事に関してはポジティブだ」と語る。

「このウイルスは誰にでも感染する可能性がある。だからこそ人々は家に留まっているんだ。命ほど貴重で価値のあるものなど存在しない。愛する人や親しい人の事を思えば尚の事さ」