FIAのジャン・トッド会長

F1の信用は失落…レッドブル、不正疑惑へのFIAの”腐敗”対応を激しく非難

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レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、フェラーリ製F1エンジンの不正疑惑を巡る国際自動車連盟(FIA)の一連の対応によって、F1の名声が地に落ちたと考えており、その腐敗レベルはFIFA(国際サッカー連盟)のようだと批判した。

跳馬エンジンを巡っては昨季、燃料流量規制への違反が疑われFIAが調査を実施したものの、調査の結果を明らかにしないままにフェラーリとの間で”秘密裏の合意”を交わして問題の終結を宣言。これに対してレッドブル・ホンダを含む非フェラーリ系の7チームが激しく反発し、情報開示を請求した。

これに対してFIAは、和解は正当な手段であるとして、契約を盾にして詳細を公表するつもりはないと主張。更には世界モータースポーツ評議会(WMSC)で「FIA会長とFIA技術部門を全会一致で支持する」との言質を取付け、これを全世界に向けて発信した。WMSCはFIAの内部組織であり、その議長を務めているのはジャン・トッドFIA会長だ。

FIAは声明の中で「FIAとF1世界選手権の評判およびイメージを損なう如何なるコメントにも強く反対する」とも述べ、チーム側との対決姿勢を示していただけに、両者の対立の溝が深まる事が懸念されていた。

このような状況の中、独ミュンヘンのタブロイド紙「Tz」は、2015年に発生したFIFAの汚職事件に触れてヘルムート・マルコが「これはスキャンダルに他ならない。FIFAレベルだ」と強く批判したと伝えた。

「FIAとFIFAを分けているのは文字1つだけだ。どのような団体であれ、このような行為は政治的な自殺行為であり、それがリーダーであるジャン・トッドによってなされたのだ」

更にヘルムート・マルコは「FIAは、我々が毎年300万ユーロ規模を投資しているスポーツの信用を落とした」とも述べ、本来であれば得られるはずのリターンがFIAの対応によって毀損されたと主張した。

FIA側に問題があるとの考えは少数派ではない。かつてF1を牛耳っていたバーニー・エクレストンはF1 Insiderに対し、F1チーム側はFIAを訴えるべきだと焚き付けている。

「それは数百万ドルに上るだろう。彼らにはそれを受ける資格があると思う」とバーニー・エクレストン。

「(私がトップにいた時代には)常に火種があり、私はそれを消防士として消火しなければならなかった。だが当時は何時だって私自身とF1チーム、そしてFIAにとっての妥協点を探る事ができた。だが(今回の件については)もう手遅れだ」

一部には人材の技術的能力の低下を指摘する声もある。現行F1パワーユニットは非常に複雑な代物であり、問題を解明して白黒つけるためにはFIA側に高い水準の専門知識と技術力が求められるものの、それを持たないがために調査を打ち切らざるを得なかったという見方だ。

なお2015年に発覚したFIFAのスキャンダルでは、20年以上に渡って続いてきた複数の汚職事件が暴かれ、200億円近い膨大な金額の賄賂を巡って40名近い幹部が起訴されている。