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F1パワーユニット不正疑惑に進展、FIAとフェラーリが”意味深な合意”

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2019年シーズン後半に世間を騒がせたスクーデリア・フェラーリのF1エンジン不正疑惑に進展があった。国際自動車連盟(FIA)はバルセロナテスト最終セッションが行われた2月28日に、2019年のF1パワーユニットに関する技術調査の終了を発表すると共に、フェラーリとの間で”とある合意”に達した事を明らかにした。

声明は僅か6行の短文であり、また「当事者同士の機密」とされているため詳細は謎に包まれているが、FIAは双方の間で「多くの技術的コミットメントが合意された」としており、これにより今後はF1パワーユニットに対する監視状況が改善されると述べている。

昨年のアメリカGPでは、馬力を上げるためにフェラーリが違法な手段で燃料流量センサーを欺いているのではとの疑惑が持ち上がった。マラネッロが開発した昨季型パワーユニット「064」は5戦連続ポールポジションを演出するなど、テストを含めたシーズン中盤まで、誰もが及ばぬ非常に印象的なストレートスピードを生み出していた。

ところが、COTAで技術指令書が通知された後は一転、その破壊的な速さは影を潜めた。むろんチーム側は不正の存在を完全否定しており、マッティア・ビノット代表は「シーズンが終わるまでエンジンに対するオペレーションを変更したことはない」と語り、アメリカGP以降に競争力が低下したのは、不正の穴を塞ぐための技術指令書とは何ら関係がないと主張していた。

違法性が疑われていたフェラーリPUに対する調査が完了したのであれば、FIAは調査の結果として「違法」があったのかあるいは「適法」だったのかを発表すべきところだが、奇妙な事に声明には一切この点に関する言及がない。

更には、今回の合意によってフェラーリは「二酸化炭素排出量の削減および持続可能な燃料に関する(FIAの)研究活動を支援する」ともしており、ペナルティを受けたとも読める内容になっている。もしもフェラーリが今も無実を主張しているのであれば、このような義務を受け入れる事は少々考えにくい。

従って論理的帰結の一つとしては、フェラーリ側に何らかの”落ち度”があった事が証明されたものの、その詳細を伏せることを条件として、FIAがフェラーリに対して”奉仕活動”を約束させたというシナリオが考えられる。

ないしは、疑惑の証拠となりうる物を発見したもののそれを証明するのはコスト高だと判断し、これ以上追求を行わない見返りとして、FIAが抱える仕事を手伝う旨の確約を取付けたという可能性もあるだろう。兎にも角にも発表された声明を読む限りは、残念ながらフェラーリが白だという線は限りなく薄い。

いずれにしても今回のFIAの対応が透明性を欠いている事は間違いなく、様々な憶測を呼ぶ事になりそうだ。