スクーデリア・アルファタウリのレーシングスーツを着用したダニエル・リカルド、2023年7月
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ペレスの後釜狙い、最前列級の走り、事前承認…リカルドのアルファタウリF1復帰の舞台裏を明かすレッドブル

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セルジオ・ペレスの後任としてのレッドブル・レーシング復帰の野望、タイヤテストでのフロントロウ級の走り、そしてテスト事前段階でのジュニアチームでのドライブの相談など、ダニエル・リカルドのアルファタウリ起用の舞台裏についてチーム代表のクリスチャン・ホーナーが明かした。

マクラーレンとの早期契約解除を経て今年、浪人生活をスタートさせたリカルドは当初、トップチームからの2024年F1復帰を目指していたが、開幕僅か10戦でニック・デ・フリースからアルファタウリのシートを奪い、第12戦ハンガリーGPでグリッドにカムバックする事となった。

ニック・デ・フリースと話をするスクーデリア・アルファタウリのフランツ・トスト代表、2023年6月3日F1スペインGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

ニック・デ・フリースと話をするスクーデリア・アルファタウリのフランツ・トスト代表、2023年6月3日F1スペインGP

決定打となったのはシルバーストンで行われたF1イギリスGP後のタイヤテストだが、事前段階で既にデ・フリースとの交代の可能性についてリカルドとの間で話し合いが行われ、本人もこれを了承の上でテストに臨んでいた事が明らかになった。

ホーナーはポッドキャスト「F1 Nation」の中で「もし上手くいったらアルファタウリに乗る気はあるか?ニックは期待していたほど上手くいっていないんだと言ったら彼は『ああ、もちろんだ』と答えた」と振り返った。

リカルドが自身の価値を証明するのにさほど時間はかからなかった。初めてレッドブルRB19のステアリングを握って11周ほど走った後、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコはデ・フリースに電話をかけ、解任の事実を知らせた。そう、決定はテスト終了を待つことなく下された。

レッドブルRB19に乗り込むダニエル・リカルド、2023年7月11日F1イギリスGP後に行われたピレリのタイヤ開発テストにて

テストでのリカルドの走りについてホーナーは「非常に印象的」と評した上で次のように述べ、リカルドがその前の週末に行われたF1イギリスGP予選でのフロントロウに足る十分なラップタイムを記録したとの報道を裏付けた。

「テストを見に行った時に最も印象的だったのは、このクルマに乗るのが初めてというだけでなく、7ヶ月間に渡ってマシンに乗っていなかったにも関わらず、3周目か4周目には我々のドライバー達が達成したタイムの1秒以内にまで縮めた事だった」

「その後、比較可能なタイヤを履いて初めてまともに走った際、彼の自信がどんどん高まっていくのが分かった。おそらく、あの日の7周目の走りはグリッドの最前列に並ぶものだっただろうと思う。本当に印象的だった」

「彼がまだあのレベルで走れているのを見て、私はただただ嬉しかった」

「これはフロントロウに足るラップだろうと言った時、彼の目に安堵が見えた。まだやれるんだ、おかしくなってはいないんだ、昔のダニエルはまだ健在なんだと、肩の力が抜けていくようだった」

「ロングランも本当に印象的だったし、ピレリのために的確な仕事をしてみせた」

このテストはホーナーに2014年に向けて行われたテストを思い出させた。「マーク・ウェバーの後任として誰が相応しいかを検討していた時だ。あの時はキミ・ライコネンが有力候補の一人だった」とホーナーは語った。

昨年の最終アブダビGP後に初めてシミュレーターをドライブした際のリカルドのままであれば、シーズン途中の電撃交代はなかった事だろう。

「アブダビの翌日か数日後にシミュレーターでドライブしたんだが、あれは完全な大惨事だった。以前のエンジニアとの仕事によって身についたと思われる悪癖がいたるところで目についた」とホーナーは語る。

「我々は徐々にそれを取り除いていった。セッションを重ねるごとに、彼はどんどんと良くなっていった。レースドライバーたちのペースにまったく引けを取らないところまで彼が自信を深めていった事がよく分かる」

F1モナコGPに合わせて行われたRCボート競技に参加したレッドブルのマックス・フェルスタッペンとダニエル・リカルド、セルジオ・ペレス、2023年5月25日Courtesy Of Red Bull Content Pool

F1モナコGPに合わせて行われたRCボート競技に参加したレッドブルのマックス・フェルスタッペンとダニエル・リカルド、セルジオ・ペレス、2023年5月25日

アルファタウリでのF1復帰は”ゴールデンゴール”達成に向けた手段に過ぎない。ホーナーはセルジオ・ペレスの後任としてマックス・フェルスタッペンと共に再び世界選手権を戦うことがリカルドの究極の目標だと明かした。

とは言え、それは現時点では単なるリカルド個人の目標に過ぎない。ホーナーはペレスの2024年続投を改めて強調し、「現時点では今シーズン末までの事しか決まっていない。だからそれ以上の事は考えていないし、期待してもいない」と語った。

「我々は彼をシーズン終了までアルファタウリに貸し出す事にした。我々のドライバーは当然、来年もマックスとチェコの2人となる。ただ、才能あるリザーブドライバーを確保して置くのは良いことだ」

「ダニエルがアルファタウリの先に2025年のレッドブルのシートを見据え、それを狙っている事は確かだと思う。それが彼のゴールデンゴールだ。アルファタウリでのドライブは2025年に向けて自分の主張を表明する最良のルートだと考えているのだと思う」