ホンダウエルカムプラザ青山にて行われた特別展示「Honda F1 2021 2nd Stage ~夢は挑戦の先にしかない」2021年9月21日
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

レッドブルとホンダの首脳級会談、再提携に向け既に”暫定合意”とも…将来を占うF1日本GPウィーク

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ヘルムート・マルコらレッドブル・レーシングの首脳陣は10月4日(火)、ホンダの本社がある東京都港区南青山に足を運んだ。少なくとも今後数シーズンについて、あるいは2026年以降の再提携を主な議題とする首脳級会談が行われたものと見られている。

ホンダは昨年末を以てパワーユニット・サプライヤーとしての活動に終止符を打ち、F1から正式に撤退した。だがそれは形式的なものだった。

2021年F1ワールドチャンピオン獲得を喜ぶマックス・フェルスタッペンとレッドブル・ホンダの面々、2021年12月12日F1アブダビGPにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

2021年F1ワールドチャンピオン獲得を喜ぶマックス・フェルスタッペンとレッドブル・ホンダの面々、2021年12月12日F1アブダビGPにて

レッドブルとアルファタウリが搭載するエンジンは今も変わらず、栃木県のHRD Sakuraで製造・組み立てられており、今週末に控える鈴鹿F1日本GPでドライバーズタイトル連覇に王手をかけるマックス・フェルスタッペンの背中を押しているのは依然として、紛うことなきホンダ製パワーユニット(PU)だ。

ホンダの脱炭素姿勢と合致する新時代F1

ホンダの撤退を受けレッドブルは、車体だけでなくF1エンジンの内製化を目指して新たな事業会社「レッドブル・パワートレインズ(RBPT)」を設立。プロトタイプを稼働させ、本格的な開発に着手した。

レッドブルは2026年以降の提携に向けたポルシェとの交渉決裂を経て、RBPTプロジェクト重視の姿勢を打ち出し、あくまでも独自エンジン開発に固執していく考えを示したが、同時にゼロからのPU開発が如何にチャレンジでリスクあるものかを公に認めている。

英国ミルトンキーンズに建設中のレッドブル・パワートレインズの新ファクトリーの内部 (2)Courtesy Of Red Bull Content Pool

英国ミルトンキーンズに建設中のレッドブル・パワートレインズの新ファクトリーの内部

最大の懸念はハイブリッド領域だ。HGU-Hが廃止されるとは言え、F1は新たなF1パワーユニット規定が導入される2026年以降の新時代もハイブリッドを継続する。

むしろPU全体のおけるその役割はこれまで以上に大きく、エネルギー回生システム(ERS)による出力は現行の約3倍に相当する350kW(約476馬力)へと引き上げられる。また100%持続可能な燃料への切り替えも行われる。

ORFとのインタビューの中でマルコは、ハイブリッド分野に関するノウハウがレッドブルに欠如している事を認めた上で、ホンダは「再提携に興味を持っている」とし、シンガポールGPと日本GPの間の1週間を使い、共に世界の頂点を掴んだ日本のエンジンメーカーと東京で話し合いの場を持つ計画だと明かした。

レッドブルが検討しているのは、ICE(内燃エンジン)を独自開発・製造し、電動化エリアにおいて外部パートナーの力を借りるあり方だ。この形はホンダの事業方針と合致するだけの十分な余地がある。

ホンダはカーボンフリー技術の中核となる電動化領域の研究開発にリソースを振り向けるとの理由でF1から撤退したが、2026年以降のF1は依然としてホンダにとって魅力的な要素を備えている。

ホンダはカーボンニュートラルの実現に向けてEV一辺倒の流れとは距離を置き多面的に取り組む姿勢を強調しており、ジェット機や船舶なども手掛けている関係上、合成燃料やバイオ燃料といった代替燃料の研究開発にも注力している。

F1は2026年に電動化領域の役割を拡大させ、カーボンニュートラル燃料を導入する。ホンダが目指す方向性はフォーミュラEよりも遥かに、F1のそれと親和性が高い。ホンダ復活への期待が渦巻くのも無理はない。

イタリア・ドッツァ近郊で50台限定の「ホンダeリミテッド・エディション」をドライブするマックス・フェルスタッペン(レッドブル) (3)Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

イタリア・ドッツァ近郊で50台限定の「ホンダeリミテッド・エディション」をドライブするマックス・フェルスタッペン(レッドブル) (3)

レッドブルがICEを、ホンダがハイブリッドを担当する新たなパートナーシップに関する両者の議論についてThe Raceは「非常に順調に進展しているものと考えられており、これがどう機能し得るかという条件面では暫定的な合意に至ったと考えられている」と伝えた。

ただし最終決定には無論、取締役会の承認が必要だ。

同メディアは「2026年の提案が成功するかどうかは、HRCがどの程度関与することを望んでいるのか、どの程度の財政負担が必要なのか、そして、カーボンニュートラル技術の追求を理由に僅か2年前にF1からの撤退を発表したばかりのホンダがこのプロジェクトをどう折り合いをつけていくのか、といった詳細次第であると言える」と指摘した。

レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコとホンダF1の山本雅史マネージング・ディレクター、2020年F1スペインGPにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコとホンダF1の山本雅史マネージング・ディレクター、2020年F1スペインGPにて

改訂ブランディング契約なるか

鈴鹿でのホームレースを前にした会談におけるもう一つの重要テーマは、2025年末までの現行契約に係るブランディングのあり方だと見られている。

撤退を経てマシンに掲げられるステッカーロゴは「HONDA」から「HRC」に切り替えられた。仮に王座を取ったとしてもホンダの名前が記録に残る事はない。だが2つのチームのマシンを駆動しているのは紛れもないホンダ製。この奇妙な契約は2025年末まで続くことになっているが、火曜の会合を経て何らかの変更が加えられる可能性があるというのだ。

HRC(ホンダ・レーシング)のロゴが掲げられたレッドブルRB18のエンジンカバー、2022年5月6日F1マイアミGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

HRC(ホンダ・レーシング)のロゴが掲げられたレッドブルRB18のエンジンカバー、2022年5月6日F1マイアミGP

ブランディング拡大に向けた動きは今夏のポルシェ騒動の遥か前から一部で語られていた。伝えられるところによると会談の結果次第では、3年ぶりの開催となる鈴鹿サーキットでのF1日本GPで何らかの「兆候」が見られるかもしれないという。

続報:ホンダ、パートナーシップ強化へ

会談云々は別にしても、ニック・デ・フリースの2023年アルファタウリ加入発表や予算上限疑惑に関する2021年の最終監査報告、そしてフェルスタッペンの戴冠など、鈴鹿F1日本GPの週末は重要発表が相次ぐ可能性があるだけに、3年ぶりという理由だけでなく全く目が離せない。

なお、”レッドブル・ホンダ”がドライバーズ世界選手権を制した昨季のコストキャップを超過したとの疑惑については、理論的には選手権剥奪の可能性もあるものの、超過額は比較的少額と見られており、軽微違反として罰金で事なきを得るのではとの見方が広がっている。

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