レッドブル、フォード合流で次世代F1エンジン開発加速…アウディ参戦により激化する人材市場
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2026年型次世代F1パワーユニットの開発についてレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、フォードとの提携によりプロジェクトが加速している事を明かし、競争力を発揮できるはずと自信を示した。
ホンダが2021年末でF1から撤退したことを受けレッドブルは、複雑奇怪で高価なMGU-Hを廃しながらも電動化比率を引き上げた新型PUが導入される2026年に向け、レッドブル・パワートレインズ(RBPT)を設立。エンジン開発を内製化した。
更に、フォードとの戦略的パートナーシップの締結を経て、米国メーカーが持つバッテリー技術と人材の供与を受ける手筈を整え、ERS(エネルギー回生システム)の開発を本格化させた。
リスク認めるも競争力に自信
レッドブル史上初となるゼロスタートのRBPTプロジェクトについてマルコはFormel1.deとのインタビューの中で「ある種のリスク」が伴う事は確かだと認めながらも、経験豊富な人材を多数起用しておりICE(内燃エンジン)に関する現在の各数値はポジティブであり、少なくともこの分野において「不利になる事はない」と語った。
プロジェクト最大の懸念事項は電動化エリアであったが、それもフォードとの提携によって補完された。フォードは米国デトロイトにF1プロジェクトのためのリソースを集結させており、人材をミルトン・キーンズに常駐させる計画だ。
マルコは更に、ターボに関してもフォードからノウハウが提供されている事を明かし「競争力を発揮できると信じてる」と自信を見せた。
開発はスケジュール通り
実戦投入まで3年を切る中、現時点でプロジェクトは順調に推移しているようで、マルコはERS部門のための新たな施設も2ヶ月以内に完成する予定だとして「スケジュール通り」だと説明した。
現在ミルトン・キーンズでは6台のテストベンチが稼動しており、既に1基以上のエンジンが完成しているといい、ICEに関しては改良点を洗い出しながらの開発が続けられている。
マルコはまた「人材の確保も順調だ。最適な人員レベルにはまだ達していないが、それに近づいている」と述べた。
アウディ参戦で人材獲得競争が激化
とは言え、必要人員を揃えるのは簡単ではないようだ。
2026年のF1パワーユニット・サプライヤーには現時点で既に、メルセデスやフェラーリ、ホンダを含む6社が名前を連ねている。
アウディが新たに参入を決定した事でパワーユニット関連の人材市場の競争は激化しており、マルコは人材の引き抜きが活発化している事を明かした。
なおフォードもF1プロジェクト用に人材の追加募集をかけている。
元メルセデスエンジン責任者獲得に失敗
市場の激化による影響かどうかは不明だが、マルコはメルセデスF1エンジンの元開発責任者、アンディ・コーウェルの獲得に失敗した事を明らかにした。
コーウェルは2004年から2020年半ばまでメルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインズ(HPP)に所属。現行の1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジン時代におけるドライバー及びコンストラクターの両タイトル6連覇の立役者として知られる。
レッドブルはコーウェルにアプローチしたものの、54歳のイギリス人エンジニアの興味は「別の方向」に向いていたため、獲得する事は叶わなかったとマルコは説明した。コーウェルは2020年6月末を以てメルセデスを去っている。