キャリア通算2度目のポールポジションを獲得してポーズを取るランド・ノリス(マクラーレン)、2024年6月22日(土) F1スペインGP予選(カタロニア・サーキット)
Courtesy Of McLaren

「アートワーク」の如きポールラップ、直前の火災がノリスに与えた影響…手を差し伸べたライバルチーム

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マクラーレンのホスピタリティで火災が発生したためランド・ノリスは、通常通りの準備ができないまま予選に臨むことを強いられたが、それでも「アートワーク」のような「完璧」なラップを刻んでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を0.020秒差で破り、通算2回目、3年ぶりのポールポジションを獲得した。

フェルスタッペンは僚友セルジオ・ペレスのスリップストリームの恩恵を受けたが、ノリスもまた、Q3の最終ラップでエステバン・オコン(アルピーヌ)から巧みに牽引を得た。

F1スペインGP予選を経て、オコンのトウを得たことについてノリスは「あれは計画していたことなんだ。マックスがそうするのは分かっていたからね」と振り返った。

「イモラの予選ではマックスがスリップストリームを得た結果、僕とオスカー(ピアストリ)は1-2を逃した。週末を通してスリップストリームが必要であることは明らかだったから、これを得る計画を立てたんだ」

「とは言え、みんなが思っているほど大きな効果はなく、100分の5、6秒程度だと思う。マックスもスリップストリームを得ていたから、それによって彼に対してギャップを得たわけじゃない」

「ただ、僕のラップは美しかった。アートワークのように感じた。すべてのコーナーが流るようで、体が自然に動いた」

「何も考えなくてよい時があるんだ。今日は頭を空っぽにしてすべてが完璧に流れるようなラップを走ることができた」

「潜在意識の中でただ前だけを見て、あとは両手に任せるような感じだ」

「自分の体や心がどこかに飛んでいくような感覚を言葉で表現するのは得意じゃないんだ。自分でもよく分からないけど、どんなスポーツでもそのレベルに到達する必要がある。何も考えずに物事が自然に流れるようなね」

「長い間このリズムに乗れていなかったから、この感覚を取り戻せて嬉しい」

ガレージからコースに向かうランド・ノリスとマクラーレンのピットウォール、2024年6月22日F1スペインGP予選Courtesy Of McLaren

ガレージからコースに向かうランド・ノリスとマクラーレンのピットウォール、2024年6月22日F1スペインGP予選

ドラマティックなポールラップを刻む数時間前、FP3に先立ちマクラーレンのホスピタリティが火災に見舞われ、ノリスを含めてチームメンバー、ゲスト全員が避難を余儀なくされた。

火災はサーキットの緊急サービスと地元消防隊の迅速な働きにより鎮火した。マクラーレンの隣にホスピタリティを構えるピレリのマリオ・イゾラやアルピーヌのクルーも消化器を手に駆けつけた。イゾラは母国イタリアで長年に渡って、救急隊員のボランティア活動に従事している。

チームメンバーの1人が予防措置として病院に搬送されたが、土曜のうちに退院した。ホスピタリティは少なくとも、バルセロナでの残りの週末に使用することはできない。

予選に向けてはドライバーズルームが使用できなかったが、ノリスは「何より、みんなが無事で元気なのが一番のニュースだ。チーム全体にとってちょっとした恐怖だったけど、1人が念の為に病院に運ばれた以外は大丈夫だった」と語った。

「予想以上にストレスの多い日だったかもしれない。靴を失くしちゃったんだ。それが僕にとっての一番悪いニュースだったかもね。それに、いつもの部屋が使えなかったから普段よりリラックスできなかった。いつもと少し違った状況で予選に臨まなきゃならなかった」

「みんなが手を差し伸べてくれて本当に助かった。支援を申し出てくれたりとか、多くのチームがマクラーレンに親切にしてくれたから、そういう面では本当に良かった」

「ただ今日や明日、もしかするとその先もだけど、少なくとも今のところモーターホームが使えないのが残念だね」

ホスピタリティ内にあったドライビングに必要な装備や私物はどうなったのだろうか? セッションに向けて他チームに借りたのだろうか?

「正直、少し混乱していたけど、一応すべての装備は1〜2セットはあったし、幾つかのものは取り出せたけど、火事のせいで使うのに最適とは言えないし、ひどく臭うものもあった」とノリスは説明する。

「僕はセッションの前に好んで音楽を聴くんだ。オスカーは音が大きいっていつも文句を言うんだけどね。でも今回はそれができなかった」

「僕はエンジニアリングオフィスにいて、オスカーは下の(移動用の)トラックにいるんだけど、僕がザク(ブラウンCEO)のオフィスを占拠しているから、ザクが少し不機嫌なんだ。でも正直、何も問題はない。僕はこういうことで文句を言うタイプじゃないからね」

「何の準備もないまま必要に応じてクルマに飛び乗ることもできるけど、自分のための数分間が持てるなら、ステアリングを握る前にその時間を使ってリラックスして自分自身のことについて考えたりする。今日は何もできなかったけどね」

「明日になれば、静かに過ごせる時間が取れないことが少し影響するかもしれないけど、それで世界が終わるわけじゃないし、文句は言わないよ」

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