マックス・フェルスタッペンとレッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表、2020年F1ベルギーGPにて
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ホンダF1撤退で危惧されるフェルスタッペン離脱「エンジン関連の解除条項は存在しない」とレッドブル、ルノーとの再提携に前向き

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2021年末でのホンダのF1撤退がアナウンスされた事で、マックス・フェルスタッペンが契約満了を待たずにライバルチームに移籍するのではとの憶測が広がる中、レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表はその存在を全面的に否定した。

レッドブル・ホンダは昨シーズンを終えて、メルセデス及びルイス・ハミルトンを打ち倒してのチャンピオンシップ制覇への挑戦を続けるべく、絶対的エースとしての立場を確立させたフェルスタッペンとの間で2023年末までの新たな契約を交わしたが、2020年シーズンの半分を消化した今、状況は当時と比べて大きく変化した。

ホンダはスクーデリア・トロロッソ(現アルファタウリ)との新たな旅路をスタートさせた2018年以降、一貫して信頼性とパフォーマンスを引き上げ、レッドブルとの提携以降は計5度の優勝を飾るなど力強いリザルトを残してきたが、本田技研の八郷社長は現行レギュレーションの最終年となる来季末を持ってF1から撤退する事を決断。このニュースは日本のみならず世界中で衝撃を以て受け止められた。

ワークスエンジンを失う事のデメリットは計りしれず、ホンダの後任エンジンへの関心と合わせて、F1ファンはフェルスタッペンの去就に大きな注目を注いでいる。その背景には、フェルスタッペンとレッドブルとの契約書にエンジン関連の解除条項が存在するのではとの憶測がある。

それは、例えば「ワークスエンジンを失った場合、契約年数に関わらず、その事実が発覚した当該年末を以て甲は一方的に本契約を解除する事ができる」というような類のものだ。

しかしながらServusTVに出演したクリスチャン・ホーナー代表は「ドライバーとチーム間の契約はプライベートなものだが、マックスとの契約にエンジン関連の条項がない事は確かだ」と述べ、その存在を真っ向から否定すると共に、新型エンジンの導入を一年前倒しとしたホンダの決断が、フェルスタッペンに希望を与えているはずだと主張した。

「彼には競争力があり、チームに居心地の良さを感じているし、ホンダのプログラムを強く信じている。それに彼もまた、ホンダが2022年から2021年にエンジンを前倒しした事の意味を理解していると思う。言うまでもなくそれは好材料だ」とクリスチャン・ホーナーは説明する。

「つまり我々は、来年もまた更に一歩前進することになるだろう。彼はこれに胸を踊らせているし、2022年までにはまだ長い道のりがある」

エンジン関連の解除条項が存在しないという事実は、必ずしもフェルスタッペンが他チームに移籍する可能性を否定するものではない。レッドブルは年末までに2022年以降のパワーユニット(PU)を決定するとしているが、その道は平坦ではない。

第1候補はメルセデスだが、コンストラクター参戦を取り止め、PUサプライヤーという立場に切り替わる事なしにレッドブルと手を組むとは考えにくい。情報が限られる中、ホンダの知的財産権を譲り受けてレッドブルが自社製造を行い、ホンダとの関係が深い”無限”のバッチを付けて選手権を戦うのではといった根拠に乏しい希望的願望に基づく憶測も流れるなどホンダの後任PUへの関心は高いが、少なくとも現時点で最も可能性が高いのはルノーとの再提携に他ならない。

破綻に終わったかつてのパートナーシップ故に、ルノーのシリル・アビテブール代表とクリスチャン・ホーナーは犬猿の仲と表現されるまでに関係が悪化しているが、ルカ・デメオがルノーの新たな最高経営責任者(CEO)に就くなど、状況は当時と大きく様変わりしており、クリスチャン・ホーナーはルノーとの契約について前向きな姿勢を示している。

「袂を分けて以降のルノーは変わった。新しい役員会は多くの新鮮な風をもたらし、幾つかの変化をもたらしている。物事は前進している」とクリスチャン・ホーナーは語った。

先に言及したホンダの資産を使っての自社製造の他には、新規参入のエンジンメーカーに期待するというオプションも上げられる。だがこれも荒唐無稽と言わざるを得ない。各国の自動車メーカーは、一年遅れでV6ハイブリッドのF1に参戦したホンダが、如何程の大金をつぎ込み、どれほど苦労していたのかを目の当たりにしている。現行規約が続く限り新規参戦などあり得ない。

クリスチャン・ホーナーは、ホンダの撤退はF1とリバティメディアへの警告だと考えている。

「現在のレギュレーションは、新規参入を考えるメーカーにとって高コスト過ぎる。故に、新しいエンジンレギュレーションが施行されるまで、新しいメーカーが登場する事はないだろう。開発には莫大なコストがかかる」とクリスチャン・ホーナーは続ける。

「国際自動車連盟(FIA)とリバティはこの問題をしっかりと解決しなければならない。彼らはシャシーについて良い仕事をしてきたが、今はホモロゲーションされたエンジンが必要であり、パワーユニットにも予算上限が必要だ」

「2026年以降のエンジンについて、彼らは今後6ヶ月から最大12ヶ月以内にこれを決定しなければならない」