ホンダのF1撤退はかなり前から知っていた、とレッドブル…年末までに撤退を含めたあらゆる可能性を検討
ホンダが2021年限りでFIA-F1世界選手権から撤退するとのニュースは、日本だけでなくモータースポーツ業界全体に衝撃を与えたが、レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコと総帥ディートリッヒ・マテシッツにとっては既知の事実であったようだ。
レッドブル・レーシングとスクーデリア・アルファタウリの2チームにF1パワーユニットを供給するホンダは10月2日(金)日本時間夕方、現在の契約を更新することなく来季末を以てF1でのパワーユニットサプライヤーとしての役務を終了する事を正式に発表した。
八郷隆弘社長はその理由について、2030年と2050年の2段階でカーボンニュートラルを実現するとの本田技研工業が掲げる目標の達成のために、F1部門が持つエネルギーマネジメントや電動化技術等に関わるノウハウ並びに人材を配置転換するためだと説明した。F1への再度の参戦は計画していないとの事で、フォーミュラEを始めとする電動シリーズへの新規参戦の可能性も除外した。
ホンダの撤退はレッドブル系2チームにとって、後1年半足らずでエンジンを失う事を意味するが、少なくともヘルムート・マルコとディートリッヒ・マテシッツ総帥は撤退の計画を前もって知らされていたようで、驚きではなかったという。
ヘルムート・マルコはSpeedweekとのインタビューの中で「ホンダの決断については遥か以前から知っていたため、我々は既にあらゆる可能性を念頭に動いている」と語った。
どのくらい前から知っていたのかと問われるとヘルムート・マルコは「(正式発表より)もっと前からだ。今シーズン中だ」と答え、自身とディートリッヒ・マテシッツは予めホンダが撤退する事を知っていたため、かなり前の段階から解決策の検討にあたってきた事を明らかにした。
この情報は限られた極一部にのみ開示されていたようで、ヘルムート・マルコの言葉を借りると「戦略的事項に関与する立場」にはないチーム代表のクリスチャン・ホーナーには知らされていなかったようだ。なお八郷社長は会見の中で、8月にレッドブル側に撤退の考えを伝え、9月末に最終決定を下したと説明している。
レッドブルがホンダの代替パワーユニットとしてメルセデスを第一のターゲットに据えているであろう事は明らかだが、そのシナリオが現実のものとなるためには、メルセデスが来季末を以てコンストラクターとしてのF1参戦を取り止め、パワーユニットサプライヤーとしてのみF1に残留する場合に限られるように見える。
この場合、レッドブルは犬猿の仲であるかつてのPUパートナー、ルノーと再び手を組まなくてはならない状況に追い込まれる可能性がある。ヘルムート・マルコは”あらゆる可能性”を評価・検討した後に、2020年末までに今後の計画を決定したいとの意向を明らかにしつつ、”あらゆる可能性”の中にF1からの撤退が含まれる事を認めた。
レッドブルとアルファタウリを含む既存グリッドの全10チームは、今年8月に2025年までの新たなコンコルド協定に合意したばかりだが、これは必ずしも参戦継続を約束するものではなく、また、2025年まで留まる義務を負うものでもない。
ヘルムート・マルコは撤退というオプションを行使する事は優先事項ではないとしながらも「契約は一年ごとに解除する事ができる」と述べ、撤退の可能性を否定しなかった。
「今は全てを整理している段階だ。事実関係がまとまったら、マテシッツ氏が最終決断を下す事になる」