秘密裏にF1ベテラン技術者の採用活動を進める”謎の組織”
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国際自動車連盟(FIA)による「関心表明プロセス」の最終決定を前に、「トップ・ティア・モータースポーツ・チーム」なる謎の組織がエンジニアの採用活動を秘密裏に進めている実態が浮かび上がってきた。
分かっているのは英国バンベリーにオフィスがあるという事のみ。この名前で登記されている法人は確認できなかった。ちなみに日本語に訳すと「一流のモータースポーツ・チーム」という意味だ。
そのトップ・ティア・モータースポーツが今月、テクニカル・ディレクターとしてニック・チェスターを起用した事が分かった。
リポン出身の53歳は1994年にシムテックに入社して以降、一貫してF1でキャリアを重ねてきた業界一筋30年のベテラン技術者だ。
2005年と2006年には革新的なチューンド・マス・ダンパーの開発を通してフェルナンド・アロンソとルノーのダブルタイトル2連覇に貢献。2013年からはジェームズ・アリソンの後任としてエンストン、つまりロータスとルノーでテクニカルディレクターを務めた。
組織再編の一環として2019年末にルノーを去ると、メルセデス・ベンツ・フォーミュラEのテクニカル・ディレクターに抜擢され、メルセデスの撤退後は先月までマクラーレン・フォーミュラEで同職を務めていた。
そんなチェスターをテクニカルディレクターとして起用する組織、それも素性を一切明かさないトップレベルのチームともなれば、最も怪しいのは2025年のF1参戦を目指しているアンドレッティ・キャデラックだ。そう、英バンベリーはアンドレッティ・フォーミュラEプログラムの本拠地である。
トップ・ティア・モータースポーツは3月に入ってエアロダイナミスト、CFDエンジニア、構造エンジニア、プログラムプランナーの求人活動を開始しており、特に空力エンジニアに関してはF1での経験を優遇するとしている。
トップ・ティア・モータースポーツに入社したF1エキスパートはチェスターだけではない。
メルセデスFEやルノーなど、チェスターと仕事上の付き合いが長いジョン・トムリンソンは空力部門のトップに就任した。また、マノーGPのテクニカルディレクターを務めた事もあるジョン・マックイリアムはチーフデザイナーとして新たな雇用契約を結んだ。
判明している3名の内の2名がルノーの元関係者というのは興味深い。アルピーヌのローラン・ロッシCEOは、参戦決定の暁にはアンドレッティにパワーユニットを供給する予定である事を認めている。
FIAは関心表明プロセスを通じて「2025年、2026年、2027年のいずれかのシーズン」からF1に参戦する「少なくとも1チーム」を評価・検討した上で、6月末までに決定を下すとしている。