メルセデスW14を駆るルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセル、2023年11月5日F1サンパウロGP決勝レース
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

懸念される来季のメルセデスW15、前年制覇のブラジルで周回遅れ寸前…”悪夢”の原因は失格の教訓かそれとも

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トト・ウォルフ代表の言葉を借りれば、F1サンパウロGPはメルセデスにとって「悪夢」のような週末であり、また、2010年のF1復帰以来「最悪の週末」だった。

ジョージ・ラッセルは油温の上昇による差し迫ったエンジン故障のリスクを抱えてリタイアを余儀なくされた。チェッカーを受けたのはルイス・ハミルトンのみだが、あと11秒で優勝したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に周回遅れにされるほど遅かった。

ブラジルでのW14の問題点

メルセデスは通常、タイヤのデグラデーションでライバルに対して優位を誇っているが、インテルラゴス・サーキットでは逆に、これが致命的な課題としてチームを襲った。

土曜のスプリントではリアが酷く滑った事でタイヤが摩耗した。メルセデスは日曜までに対処する事ができず、決勝レースでも同様の問題を抱えた。

また、直線スピードの遅さも他車に軽々とオーバーテイクを許す要因となった。

W14のロングストレートでの速度はマックス時速319kmに留まった。これは終盤にハミルトンを抜き去ったピエール・ガスリー(アルピーヌ)より12km/hも遅い。

また単純にペースも悪かった。ハミルトンが刻んだファステストは全体の12番手に過ぎず、同7位の角田裕毅(アルファタウリ)よりコンマ5秒も遅かった。

セットアップの問題

サンパウロではスプリント・フォーマットが採用された。これはタイヤへの理解を深めたり、セットアップを突き詰めるためのフリー走行が週末を通して60分間に制限された事を意味する。通常の週末の3分の1だ。

2戦前のアメリカGPではハミルトンがプランクの過剰摩耗により失格となった。ウォルフはその一因をスプリント・フォーマットに求めた。車高を下げすぎたというわけだ。

英「Sky Sports」によるとオースティンでの失敗を教訓にウォルフはブラジルで車高に余裕をもたせた事を認め、セットアップに問題があった可能性があるとの見方を示した。

だが同時に、インテルラゴスでの不振は車高やウイングレベルの僅かな違いだけでは説明できないとも認め、「機械的な面で何かが根本的に間違っていた」と述べ困惑を隠さなかった。

一般的に車高を下げれば、その分だけグランドエフェクト効果を活用してダウンフォースを引き出す事ができる。だが逆に下げすぎてしまうと、車体の底が路面に接触する可能性が高まり、バウンシングやプランクの過剰摩耗など、弊害を引き起こすリスクが上がる。

メルセデスのピットウォール、2023年11月5日F1サンパウロGPCourtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.

メルセデスのピットウォール、2023年11月5日F1サンパウロGP

不快な驚き

昨年のサンパウロGPでは、ラッセルがスプリントと決勝の両レースを制するという誰もが予想し得ない衝撃的な結末を生み出した。グランドエフェクトカー導入以来、メルセデスにとっての初勝利だった。

期待外れのW13が昨年のインテルラゴスで思わぬ競争力を発揮した一方、チームが大きな期待を以て臨んだ本大会は「悪夢」の週末になった。

アストンマーチンがアメリカとメキシコで大苦戦を強いられつつも、翌週のサンパウロで表彰台に上がった事などに触れウォルフは、週末ごとにパフォーマンスが激変するのは何もメルセデスに限った事ではないと強調し、現行グランドエフェクトカーは全チームにとって「不快な驚き」をもたらす傾向があると主張した。

懸念されるW15の開発の方向性

ウォルフは今季型W14のアップグレードを「絆創膏」に例え、本質的な改善は来年のW15を待つ他にないとしている。

現在、英国ブラックリーのファクトリーで開発が進められている2024年型マシンについてウォルフは「根本的な変更の方向性が正しい事が確認できた」と説明した。

だが、F1ドライバーとしての現役引退後、解説者として活躍するカルン・チャンドックは「これらの浮き沈みの理由を明確に理解していなければ、チャンピオンシップを争うことは不可能だ」として、次のように続けた。

「週末に入る際に『ここで苦労する事は分かっている。遅くなる事も分かっている。自分たちはそれを受け入れる』と言うのであれば良いが、メルセデスはそうではない。彼らはなぜ、上手くいくのか、上手くいかないのかを明確に理解していないように見える。これは来年に向けての懸念材料だ」

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