レッドブルの言動は「一線を越えた」とメルセデス、緊張高まる空中戦収拾へ
再審請求却下の決定を受け発表した声明の中で、ライバルチームの首脳陣を攻撃的な表現で非難した理由についてメルセデスのトト・ウォルフ代表は、レッドブルは「一線を越えていた」として「議論に少しでも敬意を取り戻したかった」と説明した。
イギリスGPで発生したマックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンの接触事故の裁定見直しの是非を判断する公聴会を経てスチュワードは、レッドブルが提出した4つの証拠は再審査の要件を満たしていないと判断。一件に終止符が打たれた。
この判断を受けメルセデスは、スチュワードの判断を支持すると共に「ルイス・ハミルトンの名声と品位を汚そうとしている」との表現でレッドブル上層部を痛烈に非難した。レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はこの声明を「敵対的」と称した。
例の声明を出した理由についてウォルフはハンガリーGPの金曜会見の中で、ライバルの「感情の高ぶり」に理解を示す一方、レッドブルの言動は「一線を越えていた」として、理性ある対応を要求するためだったと説明した。
なお声明の中には「再審査請求のために提出された書類を含めて」という一文でメルセデスが反発した理由の一つが記されていたが、これが具体的にどういった内容であるかは明示されなかった。
また同じ様に、請求却下を告げるスチュワードの文書にも「疑念」という表現で嘆願書内のレッドブルのとある記述に言及するものがあった事から、それが「ハミルトンの名声と品位を汚し得る」ものだと広く捉えられていた。
この点についてウォルフは「これ以上、油に火を焚べて論争を焚き付けたくない」として具体的な内容を明らかにしようとしなかったが、それは事故そのもの以外の物事までをも対象にした「より広いテイストを与える」もので「行き過ぎた」ものだったと語った。
「F1はコンテンツと論争を必要としている。スポーツに関わるものである限り、それは非常に面白いものになるが、このスポーツは団結すべきであって、そこには尊重すべき一定の境界線がある」
「多様性と平等性を誇れない今は尚更そうで、これ以上(意見の)2極化を生み出すべきではない」
「我々は言葉を適切に使わなければならない。煽るのではなく和らげる事を目指すべきだ」
なおホーナーは”スチュワードの疑念”について、嘆願書に記したのはウォルフによるスチュワードへの働きかけに関するものだと説明しているが、その説明だけではメルセデスが一歩踏み込んだ強い表現を使ってまでレッドブル上層部を非難した理由としては余りに弱い。
緊張高まる空中戦を収拾したいとするウォルフのこうした発言の背景の一つには、接触事故後にSNSを通してハミルトンが受けた人種差別的な嫌がらせがあるものと思われる。
シルバーアローのボスは「スポーツチームとしての我々が望んでいるのは、ソーシャルメディア上でこれ以上の対立を起こさせず、緊張を和らげる事にある」と付け加えた。
英国でのグランプリを終えてハミルトンのSNSアカウントに人種差別的嫌がらせが蔓延した事から、Facebookがコメント削除に動く事態が発生。FIA、F1、そしてメルセデスは人種差別を容認しないとする共同声明を発表し、レッドブルもまたこうした行為を非難する立場を明確した。
人種や出身国、民族や宗教、性別や容姿など自ら主体的に変えることが困難な事象に基づく侮辱や批判は、日本のみならず世界的に不法行為として認められており、特にF1のホーム足るイギリスにおいては、ネット上の有害コンテンツの削除等を怠った企業に対して厳罰を科すオンライン・セーフティ法案の成立が目前に控えている。