メルセデスW11、2020年F1バルセロナテストにて
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またか…テスト4度目の信頼性トラブル。メルセデス製F1エンジンに何が起きているのか?

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テストも残りあと僅かという5日目に、懸念されていたパワーユニットの信頼性問題が7連覇を狙うメルセデスAMGを直撃した。グリッド降格ペナルティを一度も受けずに昨シーズンを終えたのは僅か2台。そのうちの1台はメルセデスだった。高い信頼性が売りの一つであったブリックスワースのエンジンに、一体何が起きてるのだろうか?

27日(木)午後の走行を担当したルイス・ハミルトンは遅々としてガレージから出てこず、グリーンフラッグから1時間ほど経ったところでようやくコースインしたかと思いきや、ターン6を通過したところで突如マシントラブルに見舞われた。

クルマはコース脇に停車。クルマを降りたハミルトンがその後コースに戻ってくることはなく、午後は僅か14周に留まった。対照的に、アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーは午後の4時間で100周以上を走り込んだ。チームは、油圧系に問題が発生したため予防措置としてエンジンが自動的にシャットダウンしたと発表。最終日を前に2度目のエンジン交換を行った。

メルセデス製F1パワーユニットは先週の第一回テストで、ワークス・カスタマー共にトラブルを抱えた。1度目は2日目に発生し、バルテリ・ボッタスがMGU-H関連と思しき問題に見舞われた。また3日目はICE=内燃エンジン関連とみられる問題のために、ウィリアムズがエンジン交換を余儀なくされた。

更に第2回テストの初日には、オイルシステムの問題で再びウィリアムズがエンジン交換を行い、今度はハミルトンが同じく油圧絡みのトラブルに見舞われた。メルセデスは前日のウィリアムズのトラブルを受けて、懸念すべきデータが確認された場合に即座にセーフモードを起動するようソフトウェアの設定を変更していたようで、これが今日のマシンストップに繋がったようだ。

シェイクダウンを行うウィリアムズFW43、カタロニア・サーキットにて
© Williams、ウィリアムズFW43

パワーユニットに不安があるのはメルセデスだけではない。フェラーリも第1週に潤滑システムに問題を抱えた。また、最終的に問題ないことが確認されたとは言え、ホンダも予防措置として一度エンジンを載せ替えている。

今のところ一切問題が出ていないのはルノーだけだが、エンジントラブルが多発しているのは原因はどこにあるのだろうか? 開発競争の激化を背景として、各サプライヤーが限界まで攻めている現れの一つなのだろうか? それともパワーユニットの関連の規約変更が生み出した新たな問題なのだろうか?

2020年シーズンはレギュレーションが安定しているものの、決して変更がないわけではない。エンジン絡みの主だった変更としては、サバイバルセルの外側に保管してよい燃料量が0.25リットルに削減された点や、補助オイルタンクの設置が1台に限定された事ならびに、その容量は2.5リッター以下としてソレノイドによって制御する事が新たに定められた点などが挙げられる。

チームは詳細な分析を進めるとしており、現時点では”油圧の異常”という他に詳しいことは何も明らかにされていないが、テクニカルディレクターを務めるジェームス・アリソンは「6日しか冬季テストがないにも関わらず、ガレージの中で半日を過ごす事になってしまいフラストレーションを抱えている」と述べる一方で、「(問題が発生した)午後のルイスの走行によって、非常に有用なデータを得る事ができた」とも語っており、問題解決の糸口を掴んだ可能性もあるが果たして。

今シーズンは、パワーユニットの信頼性がチャンピオンシップの行方を左右する事になるのだろうか?