マクラーレンのザク・ブラウンCEO、2021年6月25日F1シュタイヤーマルクGPにて
Courtesy Of McLaren

FIAの”政治的発言禁止ルール”を支持するバーレーン資本のマクラーレン

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書面による事前承認なしに中立的でない「政治的、宗教的、および個人的な声明や意見」を禁止する新たなルールを国際自動車連盟(FIA)が制定した事について、マクラーレンのザク・ブラウンCEOは支持する立場を明らかにした。

絶対君主制を採用するドバイ出身のモハメド・ベン・スレイエム体制のFIAは今年12月、2023年国際スポーツ競技規則(ISC)にドライバーやチームを規制する新たな条項を加えた。

LGBTQ+コミュニティに連帯を示すべく「SAME LOVE」のメッセージが描かれたレインボーカラーのストライプTシャツを着用したセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)、2021年8月1日F1ハンガリーGPにてcopyright astonmartinf1@Instagram

LGBTQ+コミュニティに連帯を示すべく「SAME LOVE」のメッセージが描かれたレインボーカラーのストライプTシャツを着用したセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)、2021年8月1日F1ハンガリーGPにて

改定版のISCは何処までが「中立的」で、何を以て「政治的、宗教的、および個人的な声明や意見」とみなすのかが不明瞭であり、あらゆる行動・発言が制裁の対象となる危険性を孕んでいる。

改定に至った詳細な経緯は明らかにされていないが、人権問題に対するF1ドライバー達による近年の抗議活動が念頭にある事は明白だと広く考えられている。

米国ミネアポリスで起きた白人警官による黒人射殺事件、ハンガリーで成立した反LGBTQ法など、ルイス・ハミルトンとセバスチャン・ベッテルを筆頭にドライバー達はたびたび、強い抗議の意を示してきた。

オリンピック憲章において「スポーツを行うことは人権の一つ」と謳われている事が象徴するように両者は不可分だ。スポーツは人権の上に成り立つものであり、ドライバー達が関心を示すのはある意味、必然と言える。

マクラーレンの指揮官はESPNとのインタビューの中で、グランプリが政治的な問題に係わる事は「見たいと思う(ファンの)気持ちを損なう可能性がある」として「健全ではない」と主張し、規制は「F1とFIAの権利の範囲内」だと支持した。

ブラウンはアメリカ人で、F1に参戦するマクラーレン・レーシングの筆頭株主は75%以上の株を保有する英国のマクラーレン・グループだが、そのマクラーレン・グループを支配しているのは過半数以上の株式を持つバーレーン王国政府だ。

バーレーンは長年に渡って人権問題が指摘されてきた。今年10月には国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチとバーレーン・インスティテュート・フォー・ライツ・アンド・デモクラシーが、強要した自白内容を証拠として被告人に死刑判決を下す事例が相次いでいると指摘するレポートを公開した。

新たなISCはドライバーとチームに対する検閲体制を設けるものだが、ブラウンは「誰もが言論の自由を認められている」と強調する。

「ドライバーやチームが議論したい問題に関して、話し合いのためのドアがFIAに開かれていることを嬉しく思う」

「それは『できない』というものではなく『我々の許可がなければできない』というものだった。だから、少なくともドアは開かれている」