マクラーレン・テクノロジー・センターのエントランスホールに置かれたF1マシンを含む歴代のレースカー、2022年6月10日
Courtesy Of McLaren

トヨタに落ち度はないとマクラーレンF1、自社風洞建設の背景を説明するブラウンCEO

  • Published:

英国ウォーキングのファクトリーに最新鋭の風洞施設を建設した理由についてマクラーレンのザク・ブラウンCEOは、トヨタに落ち度があったからではなく、地理的な要因に基づく効率の悪さと金銭的支出が理由だと説明した。

マクラーレンは長年に渡って、600km以上離れたドイツ・ケルンにあるトヨタの風洞を借りてきた。風洞試験のためにエンジニアは越境しなければならず、イギリスがEUから離脱したために、検問を含めて物流的にも余計な手間がかかるようになった。

Toyota Motorsport GmbHの風洞Courtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION

Toyota Motorsport GmbHの風洞

トヨタの風洞について、かつてテクニカル・ディレクターを務めていたジェームス・キーは、良好な関係を強調しつつも、ライバルチームと比べて時代遅れになってきていると説明したが、ブラウンは蘭「RacingNews365」とのインタビューの中で、風洞の新設を決定したのは「トヨタの風洞のせいではない」と説明し、「トヨタは長年に渡って素晴らしいパートナーだった」と強調した。

「我々が直面していた課題は、風洞が別の国にあるという点にあった。それにより非効率性という課題を抱える事になった。それは我々自身の問題だ」

マクラーレンのザク・ブラウンCEO、2023年1月14日フォーミュラE選手権メキシコにてCourtesy Of McLaren

マクラーレンのザク・ブラウンCEO、2023年1月14日フォーミュラE選手権メキシコにて

F1は2021年より予算上限ルールを導入した。インフラの維持管理にかかる費用より、レンタルの費用が高くなるのは自明であり、その分だけマシン開発に割ける予算が減ってしまう。

ブラウンは「借りる場合、自前で持つよりも多くのお金を払い続ける事になる」「しかし今や我々は、自分たちの風洞を持つことになるため支払いは不要になる」と述べ、風洞のレンタルは時代の潮流に合わないと説明した。

2024年型F1マシンの開発に向けてウォーキングの風洞は既に設置が完了しており、キャリブレーションを含むセットアップ作業を終えて間もなくの稼働が見込まれている。

風洞やシミュレーターの新設、ファクトリーの工作機械の修理といったインフラへの投資のみならず、マクラーレンは上位争い復帰に向けて人材面にもコストを投下している。

ロブ・マーシャルとデビッド・サンチェスという業界きっての著名エンジニア2名は、レッドブルとフェラーリのガーデニング休暇を経て来年の1月1日からマクラーレンでの職務を開始する。