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速読:マクラーレンF1「MCL39」先代比較、ノリスが「普通に感じた」2025年の新車は本当に「革新的」なのか?
マクラーレンの2025年型F1マシン「MCL39」がライバルに先んじて公開された。シルバーストンでのシェイクダウンでは、カモフラージュ柄が施され技術的なディティールが隠された状態での走行となった。それでも、幾つかの変更点が確認できた。
マクラーレンは、2024年にコンストラクターズタイトルを獲得した「MCL38」の基本設計を継承するのではなく、少なくとも表面的には劇的ではないにせよ、広範囲にアップデートを施す道を選んだ。
チーム代表のアンドレア・ステラは、表面的な変更にとどまらず、新しいモノコックを含め「ほぼすべての部品」が変更されたと説明し、MCL39を「革新的なクルマ」と評した。
特に空力効率の向上を最優先に開発を進めた一方で、ロングラン時のタイヤマネジメントの改善にも注力したという。
技術的な変更点
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マクラーレンの2025年型F1マシン「MCL39」と2024年型「MCL38」の正面比較画像
MCL39では、サイドポッド前方に位置する吸気口=インレット(青色)が「逆三角形型」あるいは「P型」に変更されたように見える。これは昨季のレッドブルやフェラーリのデザインに似た方向性で、冷却効率と空力性能の最適化を狙ったものと考えられる。
フロントノーズはMCL38よりも細くスリムなデザインに進化したようにも見えるが、ノーズは依然として前から2番目のウイングエレメントに接続されている。 リアビューミラーのマウント部の形状にも変更が加えられている。
インダクションポッド(紫色)は、これまでの角張ったデザインから、より楕円形に近い開口部へと変更された。これにより、ドライバーのヘルメット周囲の気流とインダクションポッドへの気流の干渉が軽減され、吸気効率の向上が期待される。
フロントサスペンションは引き続きプルロッド式を採用しているが、アッパーウィッシュボーン後脚(赤色)のインボード側の取り付け位置が若干低くなっているようだ。これは一般的にアンチダイブ効果を増大させ、ブレーキング時の前傾姿勢(ノーズダイブ)を抑え、安定性を向上させることを目的とした変更と考えられる。
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マクラーレンの2025年型F1マシン「MCL39」と2024年型「MCL38」の側面比較画像
リアサスペンションはプッシュロッド式を継続しているが、ロアウィッシュボーン前脚(桃色)のインボード側の取り付け位置が下げられたように見える。前後サスペンションの変更理由についてステラは、タイヤマネジメントの改善を目的としつつも、空力的な要素も影響していると示唆した。
サスペンションのジオメトリー変更は、レッドブルが現行レギュレーション下でリードしてきた領域であり、ピッチング(加減速時の前後の揺れ)を抑えるための戦いは今なお続いている。マクラーレンの変更も、車体の姿勢変化を最適化し、安定した空力性能を維持する狙いがあると見られる。
サイドポッド上部のボディワーク(緑色)はスリム化され、リアエンド付近の熱排出エリアも小型化された。これは冷却効率と空力パフォーマンスの最適化を目的とした変更と見られる。
この改良は、モノコック形状の変更に加え、冷却ダクトの見直しやパワーユニット周りのパッケージングの効率化によるものと考えられる。特に、リアエンドのコンパクト化は空力負荷を最適化し、フロアやディフューザーの効果を高める狙いがあると推測される。
普通に感じた、とノリス
実際にドライバーはMCL39をどう評価したのだろうか?
シルバーストンでのシェイクダウンは走行距離が200kmまでに制限され、使用したタイヤもデモ用だったため、クルマのパフォーマンスを正確に判断することは難しかった。それでもノリスは、大幅な変更により問題が生じなかったことに安堵した様子を見せた。
「最初の印象としては『普通に感じた』と言える。これは良い兆候だ。チームは今年、大胆な設計変更や新たなチャレンジに取り組んできた。これが設計上の難しさを引き起こすこともあったけど、それを乗り越えたチームの仕事ぶりは素晴らしい」とノリスは語った。
「新しいアイデアを試す際、すべてが完璧に機能するかどうかは分からない。風洞やシミュレーションと実際のトラック上の挙動がどれほど一致するかも重要なポイントだけど、今のところすべてが予定通りに機能しているように感じるし、問題はない」
Courtesy Of McLaren
英国シルバーストン・サーキットで2025年型F1マシン「MCL39」のシェイクダウンを行うランド・ノリス、2025年2月13日
2025年は現行レギュレーションの最終年となるため、多くのチームが早期に、2026年の新レギュレーションに向けた開発へリソースを移行する可能性が高い。しかし、マクラーレンはタイトル争いを続けるため、「全力で開発を進める」と宣言している。
マクラーレンは2025年のダブルタイトル獲得に向け、着実に準備を整えたように見える。しかし、最終的にタイトル争いを左右するのは、レッドブル、フェラーリ、メルセデスといったライバルチームの進化次第とも言える。
MCL39の設計は果たして本当に「革新的」なのか。それとも、他チームも同様の進化を遂げ、競争がより激化するのか。その答えは、シーズンの開幕を告げるオーストラリアGPが終わったときに幾らか明らかになるだろう。