ルノー・スポール
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全チームの秘密知るFIAの元技術者がルノー入り、メルセデスとフェラーリは猛反発「大問題」

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F1日本GPの2日目の朝を迎えた10月6日(金)、ルノー・スポールF1チームは、FIAの技術部門責任者を務めていたマルチン・ブコウスキーをチームに迎え入れることを発表した。

ブコウスキーのルノーでの役割は、車体開発とマシン製造に関する監督全般だという。これに対して、メルセデスやフェラーリ等のライバルチームが猛反発、対立が深まっている。背景にあるのは、ブコウスキーが全チームの秘密知るFIAの元技術者であるという点だ。

ブコウスキーはFIA時代、全チームの機密情報やマシン開発に関する審査・管理の仕事に就いていた。2018年の各チームのマシンデザインについても熟知しており、ライバルの秘密を知り尽くしている人物と言える。競合チームは、ブコウスキーが前職にて知り得た知識を使ってルノーのマシン開発に携わることを懸念している。

メルセデスのチーム代表を務めるトト・ウォルフは、ブコウスキーのガーデニング休暇期間が短いことを問題提起する。通常F1業界内で転職する際には、機密事項が無効化する一定期間を経た後に、他チームに移る事が”常識的に”許されている。

「誰もマルチンのキャリアパスを邪魔したいわけじゃないんだ。多くの情報を持っている上級管理職の人間が転職する際に、どの位の休暇期間を取るべきかという問題なんだ。業界的には最低6か月だし12か月以上が一般的なんだからね」

マルチンは前職を辞してから3ヶ月という短い期間で、職場を変える事になる。ウォルフは、FIAとりわけ会長を務めるジャン・トッドがこの問題に介入し、解決のための役割を演じるべきだとの考えを示した。

「FIAには高い透明性を求めているんだ。彼らはマシンの詳細を知り尽くしている。全チームの車の弱みも強みもよく知っているんだ。でも、一般常識が守られるって信じてるよ。ジャン・トッドはこの問題に介入すべきだ。ルノーは、何が道徳的・倫理的に正しいかを現実的に評価することになると思う」

レッドブルを率いるクリスチャン・ホーナーもまた、ウォルフの意見に同意する。

「マルチンに問題があるわけじゃないんだ。問題はその期間だよ。彼は全員の秘密を握っているし、来年のマシンデザインについても知る立場にあったんだ。チームが、自分のところのコンポーネントがルノーのマシンにあるのを見つけたら、大きな問題になるはずだよ」

「個人的には、FIAが上級職にある者の3カ月以内での転職を認めるのは問題だと考えている。これは次回のストラテジー会議で議題になるハズさ。この件について調査が必要なのは明らかだよ」

レッドブルと袂を分かちワークス化したルノーは、現在急速に投下資本を拡大している。本拠地エンストンも拡充され、エンジン開発においても組織の再編成が実施された。2020年までに優勝争いに加わることを目的としており、ブコウスキーの加入は、目的達成のためならば手段をいとわないスタンスの現れと見て取れる。

他チームが同様の反発を繰り広げるのは必至であり、この問題はF1界に大きな波紋を投げかけている。