引退ベッテルを惜しむホーナー…角田裕毅との類似点、日本のF1ファンからの贈り物の裏話、思い出を語る
史上最年少チャンピオンを含め、レッドブル・レーシングと共に数々の偉業を達成したセバスチャン・ベッテルが2022年シーズン末でのF1引退を発表した事を受け、クリスチャン・ホーナーが思い出を振り返りつつ、角田裕毅との類似点や日本のF1ファンからの贈り物の裏話などを語った。
ドイツ国内におけるカート競技での活躍を経てベッテルは、1998年よりオーストリアの飲料メーカー、レッドブルの支援を受けキャリアを歩んでいった。両者の付き合いは2014年末を以てチームを去るまでの17年間に渡った。
2005年のレッドブル・レーシングF1初参戦当時からチームを率いてきたホーナーにとってベッテルは、過去に所属していた一介のドライバーではない。2010年のチームにとっての初タイトル、そして最終的に4年に渡って続く事になったダブルタイトル制覇という絶頂期を共に成し遂げ、歩んだ戦友だった。
衝撃の引退発表から数時間後、ホーナーは「我々と共に過ごした日々のセバスチャンは驚くべき存在だった」と振り返った。
「若手の時に彼は、レッドブルに手紙を書いてサポートしてもらえないかと頼んできたんだ。そこからローカル、その次にグループからと支援を受け、ジュニアプログラムとトロ・ロッソを通じてサポートを得て、最終的にレッドブル・レーシングに加わった」
「セブが特に際立っていたのは、当初から非常に集中力のある若者で、仕事に対する姿勢が完全にドイツ的だったことだ。彼は夜遅くまでよく働き、ユーモアのセンスも抜群だったため、イギリスのチームに溶け込み、すぐにその文化を受け入れた」
「ビジネス面でも慕われていた。秘書のためにチョコレートを持ってきたり、ガレージの中で専門用語を覚えたりとね。ユーキとは少し違うが、彼のコックニー・スラング(ロンドンの下町英語)の使い方は伝説的だった。また、その能力を最大限に引き出すという事を含めて、人との付き合い方も素晴らしかった」
「当時のクルマに乗る彼は恐るべき存在だった。あの頃はF1が再び絶頂期を迎えた時だった。我々は強大なライバル、大規模チームを相手に戦い、何度か傑出した成功を収めた」
「彼はあの頃、単に成功するという事だけでなく、記録を達成する事にも目を向けていた。それは彼にとって大きな意味を持つ事だったんだ」
「また、ファンに対しても正面から向き合っていた。彼は日本のファンから貰った記念品やプレゼントの一切をかき集めて、それを自宅に持ち帰ると言って聞かなかったんだ」
「中には少し風変わりなものもあったが、彼は捨てたりせずにその全てを持ち帰った」
「彼と歩めた事はチームにとっても喜びだった。共に素晴らしい成果を成し遂げる事ができた」
「少年から青年へと成長する姿を見てきて思うのは、彼は本当に芯のある男だという事だ。本当に強い信念を持っていた。キャリアの後半、彼は自分正しいと感じる事のために立ち上がるようになった」
「家族もそうだし、プライベートを大切にする人でもあった。だから彼が最近インスタグラマーになったのを見れて嬉しいよ」
「彼のF1キャリアは終わりを迎えることになるが、この先の人生でたくさん、やりたい事があるのだろうと思う。きっとこの先も、様々な事を成し遂げていってくれるだろうと私は確信している」
「彼と会えなくなるのは寂しいが、彼にとってはちょうど良いタイミングだと思う。中団で走り回る彼を見るのは気分が良いものでもないし、彼はそこにいるべき存在でもない。彼がF1に別れを告げる時だと言うに適切な時期だと思う」