モーターホームの前を歩くレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン、F1オーストリアGPにて
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ホンダF1「フェルスタッペンをレッドブルに引き止めるべく、全力で開発に取り組んでいる」

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ホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクターは、マックス・フェルスタッペンをレッドブル・レーシングに引き止めるべく、全力で開発取り組んでいると主張する。

F1参戦5シーズン目を迎えたフェルスタッペンは、次世代ワールドチャンピオンの最有力候補とみなされながらも優勝回数はわずか5回。ルイス・ハミルトンやセバスチャン・ベッテルが同時期に達成したリザルトと比べると、やや見劣りする結果に甘んじており、ホンダをエンジンサプライヤーに迎えた今シーズンは、8戦を消化してまだ一度もポディウムの頂点に立っていない。

フェルスタッペンはF1オーストリアGP開幕前日に行われた公式記者会見で「4位に甘んじていたくはない。僕はレースで勝ちたい」「35歳になるまで4位を争う状況が続く事を望んではない」と語り、将来的にミルトンキーンズのチームを離れる可能性がゼロではないと仄めかした

スペインメディアの報道によると、フェルスタッペンの契約のパフォーマンス条項には、8月4日の第12戦ハンガリーGPまでに優勝できなければ、フェルスタッペンに他チームとの交渉権が与えられる内容が含まれているという。事実だとすれば、レッドブル・ホンダは母国オーストリアGPを含めて後4戦以内に、フェルスタッペンを表彰台の頂点に立たせる必要がある。

加熱するフェルスタッペンの移籍話

チーム首脳陣らが一同に介した金曜プレスカンファレンスでは、出席した田辺TDとレッドブルのチーフレースエンジニアを務めるポール・モナハンに「フェルスタッペンは”今後数レースでのアップデートに注目したい”と述べているが、彼を長期的にチームに留めておく自信はあるか」との質問が飛んだ。

「我々はレッドブルと共に、目的と目標の達成のために一生懸命努力を重ねています」と田辺TD。「性能を追求しているのはパワーユニットだけでなくシャシーもです。我々はドライバーを繋ぎ止めるために懸命に努力を続けています。だからこそマックスは、クルマに自信を感じてくれているのだと思います。トップレベルを達成するために埋めなければならないギャップがあることは理解していますし、そのための期間が限られている事も分かっています」

ホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクター、F1オーストリアGP金曜会見にて
© Getty Images / Red Bull Content Pool、会見に出席した田辺豊治テクニカル・ディレクター

一方のポール・モナハンは次のように述べ、競争あるパッケージを用意することに自信を持っていると答えた。

「我々はマックスに対して、優勝争いやチャンピオンシップへの挑戦に足るだけのクルマを提供できる自信がある。ただし、それがいつになるかについては我々の範疇にはない。というのも、それを達成するためにはライバルに追いついた上で彼らを追い越す必要があるからだ」

「田辺さんが言っていたように、マシンの性能を向上させるために、我々はエンジンとシャシーの双方に多くのアップデートを計画している。それが正しいものでありクルマに相応の違いをもたらせると確信でき次第、実戦投入するつもりだ」

レッドブルのポール・モナハン、F1オーストリアGP金曜会見にて
© Getty Images / Red Bull Content Pool、ポール・モナハンとアンドリュー・グリーン

ホンダはシーズン8戦目のフランスGPで、早くも今季3世代目となるスペック3を開封。シーズンが21戦で構成され、年間4基目以上のエンジン投入にグリッド降格が科される事を踏まえれば、異様なほど早い段階での3基目投入と言えるが、その背景には、一刻も早くフェルスタッペンを優勝させなければとの想いがあるのかもしれない。

スペック3は主として性能向上のためのアップグレードだとされ、航空機用ジェットエンジンのノウハウが投じられている。ポール・リカールでは期待通りのパフォーマンス向上を果たしたのだろうか?

「基本的にはそうです」と田辺TD。「トラックで最新の仕様を走らせたところ、データ上で改善を確認する事が出来ました。その後ダイナモのデータと比較してみましたが、やはり改善が確認出来ました。ですがその一方で、スペック3には大きな改善が施されているわけではありません」

「前にも述べたように、スペック3の導入によって信頼性とパフォーマンスが向上しましたが、パフォーマンスのゲインはそれほど大きくないため、引き続き性能を向上させるべく開発に取り組んでいます」