ホンダ、マクラーレン時代の傷癒えず?レッドブルとの間に考え方の相違
レッドブルは、ホンダの今季型パワーユニットの信頼性を絶賛する一方で、フェラーリとメルセデスにキャッチアップするためには、リスクを取ったアプローチが必要だと考えている。だが、ホンダ側はそれに難色を示しているようだ。
レッドブルは今年、ルノーからホンダへとエンジンサプライヤーを変更。決断が遅れたために、今季RB15はホンダの搭載を前提に設計されたマシンではないとみられるが、それでもなお、3強チームという立場を守り、8戦を終えてコンストラクターズランキングで3位につけている。
とは言え、レッドブルは開幕前に「シーズン最低5勝」を公言していたものの、8戦を終えて優勝はおろか2位表彰台すらもない。今シーズンのカギを握っているのはトレッドが薄くなった新しいピレリタイヤだが、こに上手く適合したのはメルセデスとマクラーレンのみ。メルセデスとのギャップは拡大し、マクラーレンに接近を許す状況となっている。
一定レベルへの到達を前提にすれば、エンジンよりも車体側の性能がラップタイムに大きな影響を与えることは、メルセデスと同じパワーユニットを搭載するウィリアムズがチームメイト同士でCリーグを争っている点からも明らかだが、仮に課題がマシンの基本的なコンセプトにある場合、シーズン中に抜本的な対策を講じる事は難しい。
ホンダは既に今季2度大掛かりなアップグレードを投入しているが、目立った性能改善は見られず、依然としてライバルに切り込めない状況にある。レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、上位争いのためにはリスクを負うことが必要だと主張する。
「ホンダの今年のエンジンは信じられないほど信頼性が高い。何しろ一度も故障していないのだからね」とヘルムート・マルコ。「ホンダは我々への約束を全て守っている」
「とは言えこれまでのアップデートは、メルセデスやフェラーリに匹敵できるほどのメリットをもたらさなかった。より多くのパワーを得るために、我々としては将来的にもう少しリスクを取りたいと考えている」
「例えそれによって後方からのスタートとなったとしても、マックスがエキサイティングなレースを保証してくれる」
「我々は日本のパートナーと共に、より多くのリスクを取ろうとしているが、それは簡単なことではない。なぜなら、ホンダは少し違う考え方の文化を持っているからだ」
ヘルムート・マルコの言う「リスク」が意味するものが開発に対する姿勢なのか、アップグレードの投入回数・タイミングに関する話なのかは分からない。可能性としては、HRD-Sakuraでは既にかなりの馬力向上が見込めるエンジンが形になっているものの、信頼性の面で実戦投入を見送っている、という事もあり得るかもしれない。
興味深いのは「ホンダはそれとは少し違う考え方の文化を持っている」という発言だ。
奇しくも前日、元F1ドライバーのロバート・ドーンボスは「ホンダはマクラーレン時代に(信頼性不足によって)酷くブランドに傷がついたため、敢えて限界までプッシュしていない」と指摘。信頼性を確保することが最優先事項になっている、と主張していた。基本的に信頼性とパフォーマンスはトレードオフの関係にある。
ホンダはマクラーレンとの共闘時代、2度の世界王者に輝いたフェルナンド・アロンソに「GP2(格下のカテゴリ)エンジンだ」と批判される等、厳しいバッシングに晒された。現F1マネージングディレクターの山本雅史氏は当時、「結果に結び付けられないが故にF1以外での成功が霞んでしまうかもしれない」と述べ、ブランドイメージの悪化を懸念していた。