ルイス・ハミルトン「僕も一切の支援なくカメラの前に放り込まれた」と大坂なおみに共感…テニス界に改善呼びかける
7度のF1ワールドチャンピオンであるルイス・ハミルトンは、精神的ストレスを理由に全仏オープンを棄権したテニスプレイヤー、大坂なおみの姿勢を「途方もなく勇敢」と称して全面的に支持すると共に、テニス界に対して問題の改善を呼びかけた。
大坂なおみは「アスリートのメンタルヘルスが考慮されていない」などして、全仏オープン1回戦後の会見を拒否。これによって1万5000ドル(約164万円)の罰金を科せられた。その後、四大大会の主催者が出場停止の可能性を仄めかして会見に応じるよう勧告すると、2回戦を前に大会棄権を発表した。
決断の背景について大坂なおみは、2018年の初のグランドスラム以来、「長い間、うつ状態に悩まされてきた」「もともと人前で話すのが得意なタイプではなく、世界中のメディアの前で話す事に大きな不安を抱えるようになっていた」と告白し、当面の間、競技生活から離れる意向を示した。
超一流のプロスポーツ選手が、メディアインタビューに応じるより競技の棄権を選択したという事実は、テニスというカテゴリーを超えたスポーツ全般に対する問題提起となり、スポーツ選手とメディアとの関係、そしてメンタルヘルスの観点から広く議論を巻き起こした。
大坂なおみに対しては「うつの後出し」等といった批判も出ているが、棄権発表を受けていち早く支持に回っていたハミルトンは、第6戦アゼルバイジャンGP開幕を翌日に控えたプレスカンファレンスの中で、こうした反発は「馬鹿げており話にならない」と一蹴した。
22歳の時にマクラーレンでF1デビューを果たした7度のF1王者は「カメラの後ろに立っているだけで気が重くなるものなんだ。特に内向的なタイプの人がそうしたプレッシャーに耐えるのは容易じゃない」と述べ、23歳で屈指の世界ランカーとなった大坂なおみへの共感を示した。
「彼女は素晴らしいアスリート、そして人であり、彼女の行為は非常に大きなインパクトをもたらした。ただ、まだ若い彼女の肩には大きな負担が掛かっていた。避けられない事態だった」
「実際、若い時に脚光とスポットライトの中に放り込まれると、それは重くのしかかってくるものなんだ。ほとんどの人は準備ができないままにそういう状況に置かれてしまう」
「僕がF1デビューした時、チームのPR活動として僕は突然カメラの前に放り出される事になった。全く準備ができていない状態でね。何に気をつければ良いのか、どうすれば良いのかを教えてもらう事はなく、失敗しながら学んでいった」
「僕はピットに放り込まれ、何の指導もサポートも受ける事ができなかったんだ」
ハミルトンは大坂なおみの姿勢を「途方もなく勇敢」と称し、会見拒否によって罰金を科す等しているテニス界に対し、対応の再考を呼びかけた。
「誰かが自分のメンタルヘルスについて語らなきゃならない状況、そしてそれに対して罰金が科せられる状況は格好悪い」
「彼らはもっと上手く対応できたはずだ。熟慮の上、将来的にもっと上手くやれるような方法を見つけて欲しいと思ってる。僕らは自分自身を限界まで追い込んでいるアスリートではあるけれど、本当にギリギリの所に立っているただの人間なんだ」