ウィリアムズの2025年型F1マシン「FW47」と2024年型「FW46」の正面比較画像
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速読:ウィリアムズF1「FW47」先代比較—”1000の改良”の焦点は何処に

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ウィリアムズ・レーシングの2025年型F1マシン「FW47」は、空力性能の向上とリアサスペンションの刷新を特徴とし、昨年型「FW46」をベースにしながら競争力の強化を図った。劇的と呼べる変化は今のところ、見当たらない。

チームは2025年シーズンの即時的な成功よりも、2026年以降の長期的な競争力向上を優先している。しかし、それは決して現状に甘んじることを意味せず、細部に至るまで徹底的な改良が施された。

チーム代表のジェームズ・ヴァウルズは、FW47をFW46の「進化形」と評し、「マシンを見れば、1,000もの改良点があることが分かる。文字通り、ボルト1本として以前と同じ位置にあるものはない」と説明した。

FW47の主な技術的変更点

サイドポッドとフロアエッジ

ウィリアムズの2025年型F1マシン「FW47」と2024年型「FW46」の側面比較画像copyright Formula1 Data

ウィリアムズの2025年型F1マシン「FW47」と2024年型「FW46」の側面比較画像

FW47では、サイドポッドの形状がより滑らかに後方へ流れるデザインへと変更された。これにより、リアディフューザーへ向かう気流が最適化され、ダウンフォースの向上が期待される。

また、フロアエッジも完全に再設計された。より攻撃的なボルテックスジェネレーターが追加されており、リアホイール前方には新たなエアロパーツが確認できる。

最新メルセデスの導入でリアサスがプッシュロッドに

ウィリアムズ・レーシングの2025年型F1マシン「FW47」のリアウィング、サスペンション、フロア、エンジンカバー、2025年2月14日シルバーストン・サーキットCourtesy Of Williams

ウィリアムズ・レーシングの2025年型F1マシン「FW47」のリアウィング、サスペンション、フロア、エンジンカバー、2025年2月14日シルバーストン・サーキット

2024年型FW46は、前年のメルセデス製ギアボックスを使用していたため、リアサスペンションはプルロッド式だった。しかし、2025年型FW47では最新のメルセデス製ギアボックスを採用し、プッシュロッド式のリアサスペンションへと変更された。

近年のF1で主流となっているプッシュロッド式リアサスペンションは、ダンパーなどのインボード部を車体の高い位置に配置する。この設計により、ディフューザーおよびリアウィング周辺の気流が最適化され、より多くのダウンフォースを生み出すことが可能となる。

また、リアのアンチリフト効果も強化されており、ブレーキング時の安定性向上も期待される。

いずれにせよ、リア周りの空力特性は昨年のFW46とは大きく異なるものとなるだろう。

フロントウイングとノーズ

ウィリアムズの2025年型F1マシン「FW47」と2024年型「FW46」の正面比較画像Courtesy Of Formula1 Data

ウィリアムズの2025年型F1マシン「FW47」と2024年型「FW46」の正面比較画像

ウィリアムズは完全に新しいフロントウイングとノーズ(緑色)を導入した。

ノーズの先端形状は、従来モデルは上面が平坦だったが、より丸みを帯びたデザインに変更された。前方からの気流を受け流しやすくし、空気抵抗の低減やフロントウイングへの効果的な気流供給を狙う。

また、ウイングの後縁形状(紫色)が大幅に変更され、外側寄りの前縁形状(黄色)も調整された。地面との距離が広がったことでダウンフォースは若干減少するものの、車高変化の影響を受けにくくなると考えられる。

この変更の狙いは、絶対的なダウンフォース量を追求するのではなく、バランスを向上させ、より広い速度域で安定した挙動を実現することにあると見られる。これにより、ドライバーがマシンの限界を引き出しやすくなる可能性がある。

アレックス・アルボンは昨年、アップグレード版FW46について「速くはなったが、高速域での扱いが難しくなった」と指摘。特に高速コーナーでの不安定さが課題となっていた。

なお、リアサスペンションがプッシュロッド式に変更された一方で、フロントサスペンションは従来通りプッシュロッド方式を維持。大きな変更は加えられていないようだ。

フロントウイングに関してウィリアムズは、昨年のマクラーレンやメルセデスの手法に倣った、より空力的に柔軟なウイングを導入する方向で開発を進めていた。規制が強化される6月のスペインGPまでは、このウイングを使用するものと思われる。

2025年シーズンのウィリアムズの展望

2024年シーズンのウィリアムズは、ポイント獲得やQ3進出の機会が増えたものの、クラッシュや信頼性の問題に悩まされた。2025年は、より安定したパフォーマンスを発揮し、コンスタントにQ3進出を果たすことが目標となる。

少なくともシェイクダウン仕様を見る限り、FW47はFW46の改良版であり、大幅な変革は見られない。ただし、これはチームの長期戦略に基づくものと考えられる。

ヴァウルズ代表は「ウィリアムズの真の目標は2026年以降の成功だ」と述べ、2025年シーズンは過渡期として位置づけていることを強調した。

名門復権に向け、ウィリアムズはチームスタッフを700人から1,050人以上へと増強し、大規模なインフラ改善を進めているが、その成果が形となるには時間を要する。

2025年シーズンのウィリアムズは、中団上位を目指しつつ、2026年以降の飛躍に向けた布石を打つ重要な年となる。開幕戦までにどの程度のアップデートが行われるのかというのはもちろん、シーズン中の進化にも注目したい。