ホンダF1、ジェットエンジン技術を搭載したスペック3を投入 / F1フランスGP《preview》
ホンダF1は、第8戦フランスグランプリの舞台ポール・リカール・サーキットで、今季3世代目となる最新型スペック3エンジンを3台のマシンに投入する事を正式に発表した。
ホンダはマクラーレンとの失意の3年間を挽回すべく、全社総動員でF1エンジンの開発を加速させてきた。子会社のホンダ・エアクラフト・カンパニーは小型ビジネスジェット機「HondaJet」を開発。一昨年以降のホンダF1エンジンには、ジェットエンジン開発で培われたノウハウや知見が活かされている。
ジェットエンジンは、氷点下から数千℃という広範囲に渡る温度領域にさらされながらも、壊れる事なく機能し続ける事が求められる。一歩間違えれば大惨事になりかねず、極めて高い耐久性・信頼性が要求されるだけに、時にF1以上にシビアな精度と技術が問われる。
今回、トロロッソ・ホンダのアレックス・アルボンを除く3台のマシンに投入されるのは、航空機用ジェットエンジンの開発のノウハウを投じた新型のターボチャージャーと内燃エンジンだ。いずれも信頼性ではなくパフォーマンス向上を目的として開発された。なお、ダニール・クビアトは既に3基のICEを使用しているため、日曜の決勝でグリッド降格ペナルティを受ける事になる。
だが、レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコによると、今回のスペック3エンジンの改善幅は小さく、著しいステップアップは期待出来ないとのことで、メルセデスやフェラーリと競い合えるだけのパワーアップは、モンツァで開催されるF1イタリアGPを待つ必要があるという。
ホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクターがフランスGPに向けて抱負を語った。
ホンダF1:フランスGPに向けて
田辺 豊治ホンダF1現場責任者
シーズン第7戦カナダGPを終え、ここからはフランスを皮切りに7週間で5レースという、欧州での転戦が始まります。
レースが行われるポール・リカール・サーキットは、昨年からF1のフランスGP開催が再開された伝統のあるサーキットです。4本のストレートに組み合わされたタイトな低速コーナー、長く回り込むような中速コーナー、超高速コーナーのシーニュなどさまざまなタイプのコーナーが配されており、いつもと同様に、パワーユニット、車体ともに、それらの特徴に合わせたセットアップの最適化が重要になります。
なお、このラウンドからフェルスタッペン選手、ガスリー選手、クビアト選手のマシンにSpec3のPUを投入することを決めました。今回はパフォーマンスの向上を図るためにICE(内燃エンジン)とターボのアップデートを行っています。
現在、F1のPU開発においては、更なる競争力向上を目指し、Hondaのさまざまな開発部門との間で連携を深める事を進めています。特にレース部門との技術的な共通点が多く見られる航空エンジン研究開発部門との関係を強化し、昨シーズン途中に行ったMGU-Hのアップデート時には、同部門の支援をもとにした技術を適用、信頼性を大幅に向上させました。
今回のターボーチャージャーのアップデートでは、これまでIHIと取り組んできたターボにおける空力設計の分野でも、航空エンジン開発部門が有する知見と技術を反映しています。ただし、今回のアップデートではまだ上位のPUマニュファクチャラーに追 いつくだけのパフォーマンスレベルには至っていないと考えていますので、引き続きHondaとして総力を挙げて開発を続けていきます
フランスGPの戦いの舞台となるのは、昨年28年ぶりにカレンダーに復活したポール・リカール・サーキット。昨年のグランプリでは、ルイス・ハミルトンがポール・トゥ・ウイン。2位にマックス・フェルスタッペン、3位にキミ・ライコネンが続く結果となった。
F1フランスGPは、日本時間2019年6月21日(金)18時からのフリー走行1で幕を開ける。