フェラーリSF21でモンツァ・サーキットを走行するシャルル・ルクレール、2021年9月10日F1イタリアGPにて
Courtesy Of Ferrari S.p.A.

フェラーリ、失地回復のPU全面刷新…鍵は15馬力増見込まれるハイブリッドのアップグレード

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今季のスクーデリア・フェラーリはレッドブル・ホンダとメルセデスのタイトル争いに絡めず、マクラーレンとのコンストラクターズ選手権3位争いに甘んじているが、2022年の優勝及び王座争い復帰に向け、舞台裏では着々と開発が進められている。

シーズン後半戦も始まり、来シーズンに向けたマラネロでのマシン開発はシャシーの製造段階に入っており、今後は空力、ボディーワーク、ウイングなどの開発が進められていく事になるが、やはり注目はパワーユニット(PU)だ。

マラネロにあるスクーデリア・フェラーリのファクトリーCourtesy Of Ferrari S.p.A.

マラネロにあるスクーデリア・フェラーリのファクトリー

跳馬の今季型のPU「065/6」についてチーム代表のマッティア・ビノットは「まだギャップがある」と述べ、メルセデスやホンダ、ルノーらライバルメーカーと比較して後塵を拝している事を認めている。曰く、メルセデスとのパワー差は約20馬力との事だ。

マッティア・ビノットによれば、来季導入の次世代シャシーに搭載されるのは「コンセプトとデザインが一新」された完全に新しいPUだという。ただし魔法のように一気に改善…というわけにはいかず段階を踏む必要がある。

その第一弾が数戦以内の導入が予定されている今季型PU向けのアップグレードだ。これはハイブリッドシステムの仕様変更を含むもので、2022年型の成否を占う上で重要なステップとなる。

フェラーリはまだ今季レギュレーションで許されたアップグレードを消化していない。通常この手のアップグレードはエンジンパワーが求められる地元モンツァで投じられるが、ダイナモでのテストサイクルが完了していないため見送られた。

既にシャルル・ルクレール、カルロス・サインツ共に規制上限の基数に達しているため、投入に際してはグリッド降格による後方からの巻き返しが容易なコースを選ぶ必要があることに加えて輸送面での課題もある。マッティア・ビノットはこのアップグレードについて次のように説明する。

「これはハイブリッド側のテクノロジーを変更するもので、導入のためにはまず材料輸送の課題をクリアしなければならないのだが、危険物であるためホモロゲーションと認証が必要となる」

「つまりサーキットで実際に使用できるようにするためには、ダイナモ上で信頼性を証明するだけでなく、さまざまな面での対処が必要という事だ」

「どこで導入するかについては現時点でまだ決まっていないが、可能な限り早い段階で投入する事が来シーズンのためにもなるため、できるだけ早く決定する予定だ。できれば次の数レース中での実現を望んでいる」

ガレージ内で指揮を執るスクーデリア・フェラーリのマッティア・ビノット代表、2021年9月11日F1イタリアGPにてCourtesy Of Ferrari S.p.A.

ガレージ内で指揮を執るスクーデリア・フェラーリのマッティア・ビノット代表、2021年9月11日F1イタリアGPにて

開発の中心はハイブリッドシステムだが、一部のコンポーネントの小型化によって重量も削減される見通しで、合わせてシェルによる新開発のオイルと燃料の導入も行われる事になるようだ。

なおAuto Motor und SportによるとアップグレードはトルコGPで導入される可能性が高く、10~15馬力の出力増という「かなり大きなアドバンテージ」が見込まれるとしている。またGazzettaはトルコGPか遅くともアメリカGPまでの投入されると伝えている。

どうやら次戦ロシアGPまでにテストベンチでの計5回、7,500kmのロングランを終える事ができない見通しのようで、ソチ・オートドローム以降のイベントでの投入が有力視される。

チャンピオンシップを戦う上で必要なのはクルマだけではない。腕の立つドライバーの囲い込みも外せない。シャルル・ルクレールは2024年までという異例の長期契約を結んでいるが、複数のイタリアメディアは早くも2026年までの延長が検討されていると伝えている。