メディアセッションに応じるスクーデリア・フェラーリのマッティア・ビノット代表、2020年F1シュタイアーマルクGPにて
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フェラーリF1、エンジンパワーの低下は「技術指令書への対処の結果」

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スクーデリア・フェラーリのマッティア・ビノット代表は、国際自動車連盟(FIA)が抜け穴を防ぐために発行した技術指令書への対応によって、F1パワーユニットの性能が低下した事を初めて認めた。

2019年シーズンの後半開幕と同時に突如として抜きん出たスピードを爆発させたフェラーリは、ベルギーからメキシコまでの6戦連続でポールポジションを獲得。その不可解なほど高いパフォーマンスと唐突な向上率に対し、メルセデスやレッドブル・ホンダらライバルチームは懐疑的な視線を向けた。

そこでFIAは、燃料流量やパフォーマンス向上のためのオイル燃焼に関する不正行為を取り締まるべく、アメリカGPの週末を皮切りに一連の技術指令を発行。レギュレーションを明確化して抜け穴を防いだ。すると跳馬の異次元の速さは消失。アメリカGPを含むシーズン最終3戦でのパフォーマンスは大きく低下した。

スピードは車体構成にも依存するため、たまたま最終3レースで速度が落ちただけという見方も出来たわけだが、翌年2月のバルセロナで行われたプレシーズンテストでもスピードは戻らず、テスト最終日にはFIAが一連の不正調査の終了を発表すると共に、フェラーリとの間で”秘密裏の和解”に至ったと発表した。FIAはフェラーリの合法性に疑問を持っていたが、証明するに至らなかったと説明した。

2020年シーズンの開幕オーストリアGPでのフェラーリは、スピードトラップで昨年よりも13km/hも遅くグリッド最下位に並んだ。セバスチャン・ベッテルは「ライバルに比べてダウンフォースもグリップも不足」「あまりにドラッギー(空気抵抗が大きい)」と車体側の問題点を指摘したが、カスタマーチームのハースは跳馬の予選モードが弱体化していると明かした。

ハンガリーGPの金曜プレスカンファレンスに出席したマッティア・ビノットは、ウィンターブレイクを通してエンジンパワーが低下した理由について説明するよう求められ、次のように答えた。

「レギュレーションというものは非常に難しく複雑だ。パワーユニットの規約の中には、今も明確化が必要な部分があると思ってる。それは、これまでも常に存在していたし今後も存在するだろう」

「昨年は多くの技術指令書が発行され、最終的にレギュレーションの幾つかの分野が明確にされた。この結果我々は対応を余儀なくされた。これは何もフェラーリに限った話ではないと思っているが、対処する事によって幾らかパフォーマンスを失った」

「規制の幾つかの分野が(当時と比較して)より明確になった事は明らかだ。もし必要とあれば、今後も同じように不透明な規約が明確にされる事を願う」

フェラーリ製PUがトップ争いから脱落した結果、2020年シーズンはV6ハイブリッド・ターボ時代の覇者、メルセデスが再び支配的な速さを見せつけている。昨シーズンから大きく進化したライバルメーカーについてホンダF1の山本雅史マネージング・ディレクターは驚きを隠さなかった

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