F1:差別撤廃を強力推進、オーストリアGPで宣誓・キャンペーン展開へ
F1は7月3日~5日に予定されている2020年シーズンの開幕オーストリアGPの週末を利用して、人種差別撤廃に向けた宣誓を行い、その意志を内外に強く示すためにビジュアル・キャンペーンを張る。また、多様性を確保していくためのF1タスクフォースを発足させ、国際的スポーツとしての責務を果たしていく。
米国ミネソタ州で起きた白人警察官による黒人ジョージ・フロイドの悲劇的な殺害事件を機に、差別の構造要因撤廃を叫ぶ「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)」運動が、アメリカのみならず世界中で大きなうねりとなっており、それは4輪最高峰のモータスポーツであるF1にも押し寄せている。
© LewisHamilton@Twitter
グリッド唯一のF1ドライバーにして6度の世界王者であるルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)は、フロイドの死に対して沈黙を続けていたF1業界全体を非難。ソーシャルメディアを通して啓蒙活動に取り組むだけでなく、先日はロンドンで行われた抗議デモ活動に参加するなど、白人が多数派であるイギリス中心のF1コミュニティの中で声を上げ続けている。
こうした状況の中、開幕戦を2週間後に控えたF1は6月22日(月)、ここ数週間に渡り、あらゆる階層の人々が人種差別や不平等を非難するために団結を強めている事に触れて「(新型コロナウイルス感染症によるカレンダー中断から)復帰する最初の国際スポーツとして我々は、これらの重要な問題の解決のために声を上げる」として、「#WeRaceAsOne」への取り組みを発表した。
F1はこの新たなイニシアチブについて、「1週間や1年に1度掲げるようなテーマ」といった類のものではなく、F1の今後の基本戦略となるものだと説明し、まずは開幕オーストリアGPの週末に、具体的なアクションの第一弾を実行に移す事を明らかにした。
F1はイベント期間中、人種差別への反対姿勢を示し、これを支援していくという強い決意を示すためのビジュアルキャンペーンを展開すると共に、COVID-19との闘いの最前線に立つ医療関係者らの不屈の精神に対する感謝を表明する。また、詳細は開幕戦の前に発表される見通しだが、F1内部におけるダイバシティ(多様性)の確保と機会均等を目指すためのタスクフォースを発足させる。
F1のチェイス・ケアリーCEOは「#WeRaceAsOne」について「前例のないこの時期に、世界中の人々が示してくれた勇敢さと団結力に感謝の意を表すものであり、また、世界が直面している最も重要な問題に立ち向かい結果を出すためのプラットフォーム」だと説明し、次のように続けた。
「F1は一致団結し、人種差別を終わらせなければならないと声を大にして宣言する。我々は週末を通じて差別との闘いに対する全面的な支持を表明すると共に、F1をより多様的で包括的なものにするための努力を加速させていく。世界的なスポーツとして我々は、ファンの多様性と社会的関心事を代弁しなければならない。もっと耳を傾け、何をすべきかを理解し、実行に移す必要があると考えている」と述べた。
レッドブル・リンクでの週末においては「#WeRaceAsOne」の一環として、マシンやサーキット、そしてガレージ等の至るところに”虹”が掲げられる事になっており、マクラーレンはいち早く、ランド・ノリスとカルロス・サインツが乗るMCL35のヘイローにプリントされるレインボーマークを公開し、”End Racism(人種差別を終わらせる)”のメッセージを車体に掲載する事を明らかにした。
イングランドのプレミアリーグが抗議活動への賛同の意志を表明して6月17日の再開を迎えたように、様々な人種、文化的背景を持った世界各国にファンを持つ国際的スポーツは例外なく、人種差別撤廃を巡る運動への何らかの言及を求められる事になるだろう。