F1モナコGPの舞台となるモンテカルロ市街地コース
Courtesy Of Ferrari S.p.A.

大阪市、F1誘致へ…市街地コースでの開催に強い意欲「夢物語だとは思わない」

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大阪市の吉村洋文市長は12日、ソーシャルネットワークサービスのTwitterを通して、此花区の人工島・夢洲でのF1開催に前向きな姿勢を示した。F1世界選手権は、FIA国際自動車連盟が統括するフォーミュラカーによるレースで、4輪モータースポーツの最高峰に位置づけられている。

夢洲地区は2025年5月から11月にかけて開催される日本国際博覧会(略称「大阪・関西万博」)の会場となっており、これに関連して大阪府と大阪市は、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を目指すなど、万博開催終了後の土地活用について検討を進めている。

吉村洋文市長はツイートで「F1大阪グランプリ、公道レース、夢物語だとは思わない。モナコ、シンガポールができるなら大阪もできる」と語り、フォーミュラ1誘致に積極的な考えを示した。モナコGPとシンガポールGPは共に、市街地に仮設されたストリートコースでレースが開催されており、カレンダーの中でも特に人気の高い大会として知られる。

中でもモナコGPは、インディアナポリス500マイルレース、ル・マン24時間レースと並び「世界三大レース」の一つに数えられるビッグイベント。1929年に初開催され、今年で77回目の開催を迎える世界で最も伝統と権威あるレースの一つだ。

近年のF1では市街地コースでのレース開催が増加傾向にあり、2019シーズンは3大会が一般道を使用したロードコースでグランプリを開催する。更に、2020年にはベトナムの首都ハノイの市街中心部を使用したF1ベトナムGPの開催が予定されており、現在交渉が進められている米国でのマイアミGPもまた、湾岸地区を利用した公道コースの建設が計画されている。

公道レースと言えば、モータースポーツの中で現在特に注目されているのが電気自動車を使ったフォーミュラE選手権だ。排気ガスを排出せず、また騒音も発生しないため各国の大都市を中心に開催され、徐々に存在感を高めている。東京都は小池百合子知事のもと、同レースの誘致に向けた検討を進める方針を示している

F1を開催するにあたっては、F1の商業権を持つリバティ・メディア社に対して開催権料が発生する。開催国によってかなりの振れ幅があるものの、平均32億円程度が必要だ。単体で収益を上げることは容易ではなく、費用負担が大きいとして契約更新を諦める国も少なくない。アジア圏ではこれまでに韓国、マレーシア、インドといった国々が莫大な費用を投じて開催にこぎ着けたものの、採算が取れずにカレンダーから姿を消した。

リバティ・メディア社は、中国の首都北京への現地オフィス開設を決定するなど、同国での市場開拓に意欲を示しており、近い将来に中国でのF1開催を年に2度実施する方向で検討を進めているが、マレーシアGPの撤退はシンガポールGPの台頭が直接的な要因とされており、近隣国での盛り上がりは、F1を目的とする訪日外国人旅行客の獲得を困難にする可能性がある。

一時よりは立て直したかに思われる部分もあるが、日本におけるF1人気は低迷傾向にあり、国内のファンのみを頼りに事業計画を立てることは難しい。インバウンドを視野に入れてのプロモーションとビジネスプランなくして、マレーシアの二の舞を避ける事は厳しいだろう。

大阪GP構想の実現には、採算性以外の課題もある。F1では原則として1国2開催を禁止しているが、日本では長らく三重県鈴鹿サーキットでグランプリが開催されており、2021年までの契約を有している。過去これまでに例外的に1国2開催が行われた例はあるものの、FIAとリバティ・メディア社にとってよほど魅力的な要因でもない限りは、日本での2レース開催は現実的とは言えない。

乗り越えなければならない課題は多いものの、吉村洋文市長は「ハードルは認識してる。夢洲には世界最高水準のIRがくる。夢洲は人が住まない非日常の人工島。公道の形状、配置もこれから本格設計。やろうじゃないか」と述べ、誘致に強い意気込みを示している。

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