照明に照らされ闇夜に浮かぶジェッダ市街地コース、2022年3月25日F1サウジアラビアGPフリー走行2にて
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F1ドライバー、サウジ続行に懸念か…深夜2時半まで議論。ミサイル攻撃を受け全チームが続行同意の一方で

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F1チームは金曜の夜のFP2を経て行われた緊急会合の中で、予定通りサウジアラビアGPを継続開催する事に全会一致で同意した。対照的にドライバー達は、その会合後も会議室に残り、日付が変わってなお議論を続けた。

3月25日(金)に初日を迎えたF1サウジアラビアGPではFP1の最中に、ジェッダ市街地コースから20km弱、車で20分程の場所に位置するサウジ・アラムコ社の石油貯蔵タンク2基がミサイル攻撃により爆発炎上する事件が起きた。

上空に舞い上がった黒い煙はサーキットから目視できるほどに高くまで上り、イエメンの親イラン武装組織フーシ派の報道官は攻撃の事実を認める犯行声明を出した。声明によるとこの日は「66を超える様々な作戦」を実行したとの事で、これは攻撃の一部に過ぎなかった。

イベント会場近郊での爆破事件を受けF1のステファノ・ドメニカリCEOは、国際自動車連盟(FIA)のモハメド・ベン・スレイエム会長やチーム代表者、ドライバーを緊急招集して会合を開いた。これによりFP2は15分遅れで開始された。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)がトップタイムを刻んだ2回目のセッション終了後にも再び会合が行われ、F1チームは全会一致でイベント続行に合意した。

Sky SportsによるとドメニカリCEOは、地元当局から安全性について「完全な保証」を得ていると述べ、イベントを続行するという決断の合理性を主張した。

「彼らはこの地域を守るためのあらゆるシステムを配置した。地元当局を信頼するしかないと思う。もちろん、イベントは決行する」

ベン・スレイエム会長は、フーシ派の狙いはサーキットではなく地元のインフラだと強調した。

「我々はハイレベルの安全担当者とのミーティングを行い、その後、チーム代表やドライバー達とも会合の場を持った。断言するが、彼らが狙っているのは市民ではなく、経済のインフラであり、もちろんサーキットでもない」

また、レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表は「どんなテロ行為も容認されるべきではない。このような状況は受け入れられない。ステファノと会長が対処している。主催者からは保証を得ているし、我々はレースに出るつもりだ」と語った。

ただしメルセデスのトト・ウォルフ代表によると、この合意はチーム代表とF1との間でなされたものでドライバー達は含まれていない。

ウォルフは「我々はレースをする。全会一致の決定だったかって? チーム代表者たちの間ではそうだ」と語った。

実際、この40分に渡ったミーティングの後、F1やFIA、チーム代表者らは退室したが、ドライバー達は会議室に残った。

結局、話し合いは現地深夜2時20分頃まで行われた。途中でウォルフとホーナー、マクラーレンのアンドレアス・ザイドル代表、アルファロメオのフレデリック・バスール代表が再び会議室に足を踏み入れる場面もあった。

会議を経てGPDAのディレクターを務めるジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)はザイドル代表と共にレースコントロールへと向かった。こうした場面において積極的な役割を果たしてきたセバスチャン・ベッテルはコロナ感染により欠場を余儀なくされ、アレックス・ヴルツも不在であったため、ディレクターは24歳のラッセルしかいなかった。

ドライバー達は4時間半近くに渡って話し合いを続けた。議論が長引いたのは、一部あるいは全てのドライバーがイベント続行に強い懸念を持っている事の左証と言える。如何にチームとF1、主催者がイベント続行を決断しようとも、GPDAが反旗を翻せばレースは成立しない。

現時点でドライバー側からの声明はないが、BBC SportのチーフF1ライターを務めるアンドリュー・ベンソンは「今週末のサウジアラビアでのレース続行を決定したと聞いている」と伝えた。

なおロイター通信によると2基のタンクが攻撃された件に関しては幸いにも死傷者は確認されていない。

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