2020年FIA-F2選手権スパで優勝した角田裕毅
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最大の楽しみは鈴鹿…F1ドライバー角田裕毅の誕生はホンダと鈴鹿F1日本グランプリを救う

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日本グランプリの本拠地である鈴鹿サーキットを所有するホンダにとって、日本人F1ドライバーの重要性は極めて大きい。

ホンダが2015年にF1に復帰して以来、日本のモータースポーツファンはホンダ製F1パワーユニットを搭載して鈴鹿を走るマシン及びドライバーに枯れる程大きな声援を贈り続けてきたが、それでも観客動員数は伸び悩んでいた。

F1日本GPの観客数は2006年の36万1,000人を境に減少傾向にあり、2017年にはピーク時の4割を切る13万7000人にまで低下した。ホンダがスクーデリア・トロロッソとのタッグを開始した2018年には幾らか増加傾向が見られたが、ホンダは来年末を以てF1を去る。

F1日本GP観客動員数の推移を示したグラフ(2019年版)

そんな状況の中、角田裕毅のアルファタウリ・ホンダでのF1デビューが発表された。新型コロナウイルスの流行状況次第ではあるものの、それを除けば2021年大会のチケット販売の見通しは明るいと言える。日本メーカーの活躍も去る事ながら、ファンは日本人F1ドライバーの誕生を待ち望んでいた。

それは、スーパーGTとスーパーフォーミュラのダブルチャンピオンとして、昨年の日本GP金曜フリー走行でトロロッソ・ホンダSTR14をドライブした山本尚貴に対するファンのサポートを見ても明らかだった。

台風19号の接近に伴い土曜のイベントがキャンセルされたため3日間を通しての集客数は減ってしまったものの、レッドブルとの提携初年度という事もあって、開幕初日と日曜の観客数で見ると昨年は前年比8.9%増を達成している。

ガレージ内で山本尚貴と談笑するトロロッソ・ホンダのピエール・ガスリー、2019年F1日本GPにて
山本尚貴と談笑するトロロッソ・ホンダのピエール・ガスリー、2019年F1日本GPにて / © Red Bull Content Pool

鈴鹿サーキットが角田裕毅に大きな期待を寄せている事は疑いない。

株式会社モビリティランドの田中薫代表取締役社長は角田裕毅のデビュー発表を受け「7年ぶりの日本人F1ドライバーの誕生をとてもうれしく思います。角田選手はSRS(鈴鹿サーキット・レーシングスクール)の出身で、ホームコースと言える鈴鹿への凱旋を心待ちにしています。一人でも多くのお客様に楽しんで頂けるよう、2年ぶりの開催となる来年のF1日本グランプリに向けて準備を重ねて参ります」との談話を発表した。

当然、角田裕毅本人も鈴鹿での日本GPを強く意識している。

F1への登竜門足る位置付けのFIA-F2選手権は、F1のサポートレースとして開催されているため、F1を目指す若手ドライバー達はデビュー前の段階で幾つかのF1サーキットを経験するわけだが、今年は新型コロナウイルスの影響でカレンダーから多くの常連サーキットが脱落した。

角田裕毅はアブダビテスト前に行われたインタビュー(当人は既にデビューの事実を承知済み)の中で、F1で楽しみにしているイベントを3つ挙げた。いずれも今年参戦していたF2では走行が叶わなかったコースでのグランプリだ。

1つ目は熱狂的なイタリアのファンが大挙するチームのホームレースであるモンツァでのイタリアGP、2つ目は「走ることが夢だった」と語るモンテカルロ市街地コースでのモナコGP、そして3つ目は…そう、鈴鹿でのF1日本GPだ。

角田裕毅は「最大の楽しみは鈴鹿です。日本のファンの皆さんの前で走ることは日本人として誇りですし、最高の走りをしたいと思っています」と語り、母国凱旋レースへの想いを口にした。

ホンダのF1撤退は日本GPの観客動員数減少に繋がりかねず、そうなるとイベントの存続そのものが危ぶまれる。F1ドライバー角田裕毅の誕生は、鈴鹿サーキットを、日本GPを救う事になるかもしれない。

2021年の日本グランプリは10月10日に決勝レースが行われる。

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