F1、人工知能を用いて車両開発状況やマシンパフォーマンスをリアルタイムで可視化

F1のリアルタイム情報分析「カー・パフォーマンス・スコア」copyright Formula1

F1はAmazonが提供するクラウドコンピューティングサービス(AWS)の協力を得て、7月3日から5日まで開催される開幕オーストリアGPでの「カー・パフォーマンス・スコア」の導入を皮切りに、2020年シーズンを通して新たに6つのリアルタイム分析情報を導入する。

F1とAWSはこれまでに「コーナーからの脱出スピード」や「ピットストップ戦略予測」、「ピットウィンドウ」や「バトル予測」、「ピット戦略バトル」そして「タイヤパフォーマンス」という6つの「F1 Insights」を導入しているが、今季は更に6つの新しいリアルタイム分析がテレビ放送画面上でグラフィックとして展開される。

分析には、F1マシンに搭載された300個のセンサーから送信される毎秒110万点以上のデータとサーキット側からデータに加えて、オンラインストレージ(Amazon S3)上に保存された過去70年分のレースデータが用いられる。

F1のエンジニアとサイエンティスト達はこのデータとAWSが提供するサービスの1つであるAmazon SageMaker使って、AI(人工知能)の中核技術である機械学習モデルを構築。このモデルを用いてレースのパフォーマンス指標をリアルタイムで分析し、これを国際映像に統合する。

F1はハイコンテクストなスポーツであり、レースを存分に楽しむためには一定程度の知識が求められるため、初心者がとっつきにくい側面がある。日本における無料放送の消滅が指し示すように、F1は世界的に無料放送チャネルを減らす戦略を取っており、新規ファン(有料放送加入者)獲得のためにはコンテクストの分解が必要と言える。

ピットウォールの裏側で行われているストラテジストの判断や、目の前で繰り広げられている闘いの中で記録されるラップタイムへの理解を助けるという点で、こうしたリアルタイム分析情報は新規F1ファン獲得のための重要なツールの1つとして位置付けられているものと考えられる。

以下、今季のF1への導入が予定されている6つのインサイトを紹介する。

1、カー・パフォーマンス・スコア

「低速コーナリング」「高速コーナリング」「直線スピード」、そしてアンダーステアとオーバーステアを20段階で評価する「ハンドリング」の4つ指標から構成される。ファンはチーム毎に異なるマシンの相対的なパフォーマンスを視覚的に理解できるようになるという。

2、ドライバースピード比較

今まさに目の前を走るドライバーと、1983年以降にF1に参戦した過去のドライバーとのスピード比較を行う。導入はシルバーストン・サーキットでの2戦目となる8月7日~9日の70周年記念GP。異なるマシンに乗るドライバーのスピードをどの様に比較するのかは明らかにされていない。

3、低・高速コーナーパフォーマンス

ラップタイムへの影響が大きい時速175km/h以上の高速コーナーと125km/h以下の低速コーナーでのパフォーマンスを可視化する。導入は8月28日~30日開催のF1ベルギーGP。

4、ドライバースキル評価

予選パフォーマンス、スタート、レースペース、タイヤマネジメント、追い抜き/ディフェンススタイルなど、様々なサブセットによってドライバーのスキルを点数化する。導入時期は決定しておらず、シーズン後半が予定される。

5、マシン開発状況とパフォーマンス変動

シーズンを通して各グランプリ毎のマシン・パフォーマンス・データを累積する事で、各チームの車両開発率を導き出す。これも導入時期は未定で、シーズン後半の登場が計画されている。

6、レースペース予測

フリー走行と予選の各セッションにおけるデータを元にして、決勝におけるレースペース予測を行う。こちらもシーズン後半のデビューが予定される。

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