F1チームの競争力を予想し合う7名のジャーナリスト
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2024年F1開幕に向けた序列予想…本場欧州の専門家6名はどう見る?角田裕毅のRBは満場一致

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たとえ大本命はレッドブルだと誰もが薄々感じているとしても、バーレーンでの2024年シーズンの開幕に向けての最大の関心事が、チームの序列変化であるという事について異論を挟む者はほとんどいないだろう。

本場ヨーロッパのジャーナリスト達は各チームの競争力をどのように予想しているのだろうか? 結局のところ、開幕戦を担うバーレーンGPでチェッカーフラッグが振られるまでは知る術もないわけだが、予想という名の指標があるかないかは、週末およびレースの観戦体験の質を大きく左右する。

2023年3月5日にバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われたF1バーレーンGPの決勝レース開始直後のホームストレートCourtesy Of Red Bull Content Pool

2023年3月5日にバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われたF1バーレーンGPの決勝レース開始直後のホームストレート

誰もがレッドブルを推しているが本当に速いのか? アルピーヌの下馬評は割れているが、一体どっちに転ぶのか? ある種の予想は観戦する上での道標となる。その価値は、当たるか、当たらないか、にあるわけではない。

手がかりとなるのはロングランペース、GPSデータ、速度、クルマの挙動、ドライバーやチーム関係者の発言などなど。開幕が近づくにつれ識者による予想は更に増えていくだろうが、ここではプレシーズンテスト閉幕早々に明らかにされた6名のプロフェッショナルによる開幕戦順位予想をまとめる。

F1公式プレゼンテーターのウィル・バクストン(BXN)と解説のジョリオン・パーマー(PAL)、英「Sky Sports」のテッド・クラヴィッツ(TED)、同じくイギリスの専門メディア「The Race」のスコット・ミッチェル=マルム(SMM)、米「ESPN」のローレンス・エドモンソン(EDM)、そして独「AMuS」のミヒャエル・シュミット(SMT)は、サクヒールでの3日間のテストを経て以下のように予想した。

順位 PAL SMM BXN EDM TED SMT
1 RBR
2 FER MER
3 MCL MER FER
4 MER AMR MCL
5 AMR MER MCL AMR
6 RB
7 ALP WIL ALP WIL
8 WIL ALP WIL ALP SAU
9 SAU HAS
10 HAS ALP

当然に評価はある程度分かれるわけだが、興味深いことにエナジードリンク企業を親会社とするレッドブル(RBR)と、その姉妹チーム、RBの予想順位は満場一致だった。

2022年のグランドエフェクトカー規定導入以降に行われた44戦で38勝を挙げているレッドブルが最有力というのは驚くべきことではない。見解が分かれるのは、レッドブルが1位かどうかではなく、2位以下をどのくらい引き離すのかという事だろう。ヘルムート・マルコはコンマ3秒と控えめだ。

RBに関しては6名全てが6位に位置づけた。これは昨年のコンストラクター順位より2つも高い。2023年のWチャンピオンカーの前後サスを搭載しながらも、レッドブル「RB19」のクローンとは程遠い「VCARB 01」のロングランペースには光るものがあった。

全チームの序列予想を公表していないため上記の表にないが、F1公式プレゼンテーターのローレンス・バレットは、RBがアストンマーチンを打ち負かすだろうとさえ口にした。

バーレーン・インターナショナル・サーキットでのF1テスト2日目にRBの「VCARB 01」をドライブするダニエル・リカルド、2024年2月22日Courtesy Of Red Bull Content Pool

バーレーン・インターナショナル・サーキットでのF1テスト2日目にRBの「VCARB 01」をドライブするダニエル・リカルド、2024年2月22日

2位に関しては5名がフェラーリ(FER)を推す一方、ミヒャエル・シュミットだけはメルセデス(MER)の名を挙げた。ただしシュミットは、テストを終えた現段階で確実に言えるのは「マックス・フェルスタッペンがトップでアルピーヌが最下位ということだけだ」としている。

セットアップ作業のために頻繁にピットインを繰り返し、レース・シミュレーションをフルに消化しなかったメルセデスは2位~5位と予想がバラけた。現行のレギュレーション下としてはシルバーアローにとってベストなテストになったと言えるだろうが、パーマーが指摘しているように1ラップペースが課題の一つだろう。

上位集団の中ではアストンマーチン(AMR)の評価が低い。最終日のフェルナンド・アロンソのロングランはレッドブルに迫るもので、かなり有望に見えたが、それはアロンソだからこそであって、クルマの性能によるものではないとの厳しい見方もある。

信頼性トラブルが原因で走行時間を失い、ランド・ノリスがレース・シミュレーションを完了できず、また、オスカー・ピアストリのロングランが芳しくなかったマクラーレン(MCL)は3~5位と評価が分かれた。

RBを除くトップ7以下に関しては9位にザウバー=ステイク(SAU)、最下位にハース(HAS)を予想する専門家が目立つ。このグループの中で唯一のメーカー系チームであるアルピーヌ(ALP)は、ウィリアムズ(WIL)と7・8位争いを繰り広げると予想されているが、シュミットだけはこれを10位に位置づけた。

シュミットの見立てによれば、A524は重量過多で空力効率も悪く、1ラップペースが遅い上にロングラン・パフォーマンスも低いとの事で、チームが買収されかねないほど深刻な状況との見方を示している。

小松礼雄体制下のハースはVF-24で大きく前進した。昨年までのマシンであればタイヤが数周で終わってしまい、全チーム最多となる439ラップも走り込めなかった事だろう。昨年のバーレーンGPは予選11位、決勝13位と後退した。レースでどこまで踏ん張れるか見所だ。

評価のばらつきが最も大きいのはアルピーヌ(標準偏差:1)で、これにメルセデス(同:0.95)とマクラーレン(同:0.74)が続いた。

6名の識者による予想順位を平均すると以下の並びとなる。メルセデスとマクラーレンは拮抗しており、この前提に基づけばどちらが3位のマシンかは際どいところだ。

順位 チーム PAL SMM BXN EDM TED SMT 平均値
1 レッドブル 1 1 1 1 1 1 1.00
2 フェラーリ 2 2 2 2 2 3 2.17
3 メルセデス 4 4 5 3 3 2 3.50
4 マクラーレン 3 3 3 5 4 4 3.67
5 アストンマーチン 5 5 4 4 5 5 4.67
6 RB 6 6 6 6 6 6 6.00
7 ウィリアムズ 8 7 7 8 7 7 7.33
8 アルピーヌ 7 8 8 7 8 10 8.00
9 ザウバー 9 9 9 9 9 8 8.83
10 ハース 10 10 10 10 10 9 9.83

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