事故の際、F1のマーシャルはどのようにしてドライバーを救出するのか?

陰圧式固定器具を使ってドライバーの体を固定するcopyright youtube.com

2018年からコックピット保護装置”ヘイロー“が導入されることが発表された。F1界はドライバーの安全確保のために大きな変革期を迎えようとしている。時速300キロメートルを優に超える速度でサーキットを駆け抜けるフォーミュラ1、60年を超える歴史の中でこれまでに35人以上のドライバーがレース中のクラッシュ事故によって命を落としている。

絶え間ない安全技術の開発によって年々死亡事故は減り続けているものの、ドライバーが自身の命を懸けてレースを行っているのに変わりはない。マシン同士の衝突、コンクリートウォールへの激突、いざという時ドライバーはどのようにして救出されるのだろうか?

F1ハイブリッドターボ時代に圧倒的な強さ誇る王者メルセデスAMGがこの程公開した動画でその様子を見てみよう。

救急医療の原則は”スピード”にある。心肺停止の場合、2分以内に蘇生治療が開始されればその救命率は90%と言われるが、5分では25%程度まで下落すると言われている。クラッシュ事故が発生すると、F1ではメディカルカーがほんの数秒で事故現場に現れる。F1では、FIAの医療ドクターが全てのグランプリに帯同するとともに、緊急医療専門の地元の医師が治療にあたるべく待機している。

ドライバーをコックピットから下ろす前に、マーシャルは頸部固定具(ネックカラー)を使ってドライバーの首を固定した上で、ドライバーをシートに括り付ける。

身体をなるべく動かさないようにするため、ドライバーはシートごと操縦席から引きずり出される。医療班はドライバーの血液や嘔吐物から身を守るため、感染防止衣を着用する。

外傷を負った際の救命救急処置における原則の1つに、「挙上」と呼ばれるものがある。外傷によって出血した部位を心臓よりも高い位置に上げることによって、出血量を減らす効果が期待できる。動画ではドライバーの足を高く挙げている様子が確認できる。

陰圧式固定器具(いんあつしきこていきぐ)を使ってドライバーの体全体を固定する。赤色のマット状の陰圧式固定器具を体に巻きつけ、ポンプによって内部の空気を抜くと、ギプスのように固くなるのだそうだ。

今回のデモンストレーションでは、マシンからドライバーを降ろし、搬送するための準備が整うまでに4分19秒を要した。ドライバーはこの後医療ヘリに乗せられ、予め指定された地元の病院へと搬送される事になる。

テレビでは放送されていないが、グランプリ週末の木曜にはメディカルカーのドライバーもまた毎戦プラクティス走行を行っている。医療専用車に改造されたメルセデスAMG C 63 Sは総重量が2トン近くもあるため、事故現場に迅速に出動するためにはメディカルカーのドライバーにも高い運転技術とコースへの理解が要求されるのだ。

ヘイローに限らず、F1には人命を守るための洗練されたシステムが存在しており、さらなる安全性向上のために日夜研究開発と訓練が続けられている。

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