ターン1から見たモンツァ・サーキットのメインストレート、2024年8月29日F1イタリアGP
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

モンツァ改修に不満と懸念が続出、古き良き伝統ある「個性が失われた」と角田裕毅を含むドライバー達

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角田裕毅(RBフォーミュラ1)を含む何人かのドライバー達は、古き良き挑戦的な魅力が失われた等として、2024年のF1イタリアGPに向けて行われたモンツァ・サーキットの改修に不満を表明した。

グランプリの存続に向けてモンツァは施設の改修と近代化に着手した。全長5.7kmのコースは全面再舗装された。また、アスカリを含む幾つかのシケインの縁石は変更され、一部にはグラベルトラップが追加された。

舗装とグラベル追加の改修が行われたモンツァ・サーキットの第1シケイン、2024年8月29日F1イタリアGPCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

舗装とグラベル追加の改修が行われたモンツァ・サーキットの第1シケイン、2024年8月29日F1イタリアGP

慣れ親しんだコースが変更された場合、ドライバーが不満を漏らすのは珍しくはないが、コーナー径やランオフエリアの変更といった通常、批判の的になるものとは異なり、開幕前日のトラックウォークを済ませたドライバー達が懸念を示したのは縁石の変更だった。

アレックス・アルボン(ウィリアムズ)は「少し個性が失われた気がする」と語った。

「新しく設置された縁石は、少しありきたりな感じがする。モンツァのコースには独特なものがあったと思う。路面はかなりバンピーだったけど、それは決して悪いものじゃなかったし、縁石もかなりユニークだった」

縁石はドライビングの難易度に影響し、コーナーのキャラクターに影響を及ぼすだけでなく、その使い方によってタイムが大きく変わる要素だ。3箇所あるシケインの縁石がフラットなものに置き換えられたことで、これらのコーナーはドライビングの難易度が低下する可能性がある。

2021年のイタリアGPウィナーであるダニエル・リカルド(RBフォーミュラ1)もアルボンと同じ見解を示した。

英AUTOSPORTによるとリカルドは、特にモンツァを独自足らしめていた縁石の変更に不満を抱いているようで、「今朝、コースを一周してきたけど、正直、あまり感心しなかった。サーキットの特徴の一部が失われた気がする」と語った。

「舗装の改修は素晴らしく見えるし、アスファルトは本当に良さそうな感じだけど、縁石には少しがっかりだよ。まだ走っていないけどね」

「多分、僕らがもっと縁石を使えるようにするためだろうけど、(縁石が)かなりフラットになったから、ターン9と10(アスカリ)を通過する際は、今までよりもワイドに走れるようになると思う。全開で行くのも簡単になるかもね」

「全てを否定したいわけじゃないんだ。多分、簡単に全開で行けて、よりスリップストリームが得られるようになれば、もっと前のクルマに接近できるって考えなのかもしれない。分からないけど、サーキットに与える影響や感覚、キャラクターやアプローチがどう変わるのかという点で、彼らは縁石を過小評価していると思う」

「いずれ分かるさ。もちろん、ここを走るのは楽しいだろうけど、モンツァが持っていた”オールドスクール”な感じが少し失われた気がする」

リカルドは、コースの変更についてドライバー側には事前に何の相談もなかったと説明し、「少なくともフィードバックくらいはさせてほしい。お金を節約できるかもしれないし、縁石を変える必要はなかったかもしれないし」と付け加えた。

角田裕毅も同じように「コースはよりスムーズに、そしてフラットになり、縁石もフラットになったので、モンツァの個性が少し失われたように感じます」としたが、それが必ずしも”改悪”と呼ばれる変更かどうかは分からないとも語った。

「アスカリの最初の縁石はアグレッシブに攻めることができますが、ダウンフォースが他より少ないクルマの場合はそれができず、ラインを妥協しなければなりません。実際にどうなるかは分からないので、様子を見てみましょう」

モンツァ・サーキットのピットレーンでタブレットを見るダニエル・リカルドと角田裕毅(共にRBフォーミュラ1)、2024年8月29日(木) F1イタリアGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

モンツァ・サーキットのピットレーンでタブレットを見るダニエル・リカルドと角田裕毅(共にRBフォーミュラ1)、2024年8月29日(木) F1イタリアGP

GPDAの会長を務めるアレックス・ブルツは、木曜のトラックウォークを経てWhatsAppでドライバー達と議論を交わしたことを明かし、自身が改修の担当者であったならば「ああいった縁石を変更することについては、お金を受け取っても同意しなかっただろう。私にはそれらが危険だとは思えなかったし、コースを特徴付ける重要な一部だったからだ」と語った。

「アスカリのようなコーナーにあった縁石周りの状況は、非常にやりがいのある精密なドライビングをドライバーに要求するものだった」

「標準的な縁石に変更されてキャラクターを失ったのはモンツァが初めてというわけではなく、縁石に独自の仕掛けがあったブラジルでも同じことが起きた」

「説明するのが難しいが、モンツァにあった独特の縁石は、クルマの場所が僅か数ミリメートル違うだけでアンダーステアやオーバーステアを引き起こすものだった。フロントタイヤが小さな排水溝を捉えるかどうかで大きく変わった」

「ドライバーとしては、上手くやれるよう試みたものだ。上手くやれたときは最高にクールだった。それはモンツァのスタイルや性質、そして独自のキャラクターに合うものだった」

モンツァ・サーキットのアスカリ・シケインCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

モンツァ・サーキットのアスカリ・シケイン、2020年F1イタリアGP

早くも批判的な見解が飛び交う一方、ルイス・ハミルトン(メルセデス)は、翌日のプラクティスまで判断を待つべきだと考えている。

「走る前に判断したくない。もしかしたら走ってみたら最高の変更だと感じられるかもしれないし、墓穴を掘りたくないからね」とハミルトンは語る。

「結局のところ、僕らは以前のコースが大好きだった。長年に渡って、多くの場所がかなりバンピーだったけど、それがこのコースの特徴の多くを占めていた。縁石もほぼ20年以上同じだったと思う」

「だから大きな変化だけど、究極的には同じコースだ。明日にならないと分からないけど、見た感じでは、かなりスムーズになったようだし、おそらくかなり速くなると思う」

シャルル・ルクレール(フェラーリ)は、路面の再舗装は避けられないものだとした上で、現時点で「判断するのは難しい」としつつも、新しい縁石については少しばかり懐疑的な見方を示した。

「何年も何年も同じアスファルトを維持するという選択肢はないわけで、いつかは再舗装しなきゃならない。そうでないといつかは、酷いことになってしまうからね。特に今のマシンはかなり車高を落として走るから、コースをそれに合わせて新しくする必要がある。だから、その点については問題ないと思う」

「縁石に関しては、幾つかのサーキットには確かに歴史的な縁石があって、今年に向けてカナダは全く同じ形状の縁石に変えたわけだけど、あれは良かったと思う」

「でも現時点で僕は新しい縁石をまだ試していないから、もしかしたら古いものよりも良い感触を受けるかもしれない」

モンツァ・サーキットをサーキットを歩く周冠宇(ザウバー)、2024年8月29日(木) F1イタリアGPCourtesy Of Sauber Motorsport AG

モンツァ・サーキットをサーキットを歩く周冠宇(ザウバー)、2024年8月29日(木) F1イタリアGP

なおアストンマーチンは当初、フェルナンド・アロンソに代えてリザーブ・ドライバーのフェリペ・ドルゴビッチをFP1で起用する計画を立てていたが、改修の規模が予想以上に大きかったため急遽、計画を撤回し、アロンソにステアリングを託すことを決めた。

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