マクラーレンのフェルナンド・アロンソ、2019年インディ500予選ラストシュートアウト後のプレスカンファレンスにて
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ホンダの前で”フェルナンド・アロンソ”の名を口に出すな、とレッドブル

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レッドブルは、ホンダ関係者の前でフェルナンド・アロンソの名を口に出したりはしないようだ。少なくとも、モータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、そのように気遣っているらしい。

マクラーレン・ホンダ時代、2度のF1ワールドチャンピオンは度々、ホンダ製F1パワーユニットを辛辣に批判してきた。中でも、ホンダのお膝元、鈴鹿サーキットで行われた2015年の日本グランプリでの発言はセンセーショナルだった。

ホンダの取引先や協力会社、会社の重役、そしてホンダ車を所有する顧客達がレースを見守る中、アロンソはチーム無線で「GP2エンジン!GP2エンジンだ!」と発言。PUのパワー不足を格下カテゴリーに例えることで、ホンダを揶揄し皮肉った。

アロンソは更に、マクラーレン・ホンダの崩壊が決定的となった2018年のプレシーズンテストにおいて「ドライバビリティは酷くとても走行できる状態じゃない。この状況ではテストをすべきでない。本当に酷いエンジンだ」と酷評。その様子は、Amazon制作のドキュメンタリー「GRAND PRIX Driver」にて全世界に公開された。

ヘルムート・マルコはこの程、独Auto Bildとのインタビューの中で、F1の商業権を持つ米リバティ・メディアが今年の夏に、アロンソのための2020年用の空きシートがあるかどうかについてレッドブル・レーシングに問い合わせがあった事を明らかにした上で、その時のやり取りを次のように説明した。

「我々は即座に、アロンソは不要だと申し出た。我々だけでなく、エンジンパートナーのホンダだって必要としていないのだから、上手くいくわけがない。アロンソという名前を聞くだけで、彼らはみんなゾッとするんだからね」

ホンダとアロンソとの関係が修復不可能である事を示す物語は他にもある。アロンソはトリプルクラウン獲得を目指してインディ500に2度参戦しているが、マクラーレン・ホンダ消滅後の2018年、初回参戦時に手を組んだ強豪アンドレッティ・オートスポーツとの提携が実現せず、アロンソは予選敗退の苦汁をなめた。

公にはされていないが、デトロイトを本拠とするAutoweek誌は、本田技研工業がアメリカ現地法人ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメントに対して、マクラーレンとの提携を禁止したと報じている。つまり、アンドレッティとの再提携が実現しなかったのは、ホンダとの関係悪化が直接の原因だというわけだ。

トリプルクラウン獲得を公言してF1を去ったアロンソだが、インディ500の壁は途方もなく高く、トップチームからのオファーであればF1への復帰を検討したい旨を明かしている。だが、レッドブルのような直球の返答でないにしろ、フェラーリもメルセデスもアロンソを受け入れる素振りは全くなく、現時点では復帰の見通しは極めて低いように思われる。

だが、Auto Bildの報道によれば、リバティ・メディアは未だアロンソの復帰を諦めていない様子で、仮にルイス・ハミルトンが2020年末を以てフェラーリへと移籍した場合、メルセデスにアロンソを押し込みたいと考えているようだ。

フェルナンド・アロンソは依然として抜群の知名度と高い集客力を持ち合わせており、広告塔として計り知れない価値を秘めている。Auto Bild曰く「リバティ・メディアにしてみれば、アロンソは金のなる木」というわけだ。