なぜ破片を放置した? FIA、遅れたセーフティーカー導入とノリス厳罰を釈明
2024年F1カタールGPでのオペレーションを巡る批判を受け国際自動車連盟(FIA)は、セーフティーカー(SC)の導入や、ランド・ノリス(マクラーレン)に対する厳しいペナルティについて釈明した。
デブリ放置の問題
ロサイル・インターナショナル・サーキットで行われた57周のレースでは、アレックス・アルボン(ウィリアムズ)のFW46から脱落したリアビューミラーがメインストレートの非レーシングライン上に落下する事態が発生した。
新任のF1レースディレクターであるルイ・マルケスは、この状況に対して即時対応を取らず、デブリは放置されたままになった。ミラーが落下してから4周後、バルテリ・ボッタス(ザウバー)がこれに衝突し、メインストレート全体に破片が飛散する結果となった。
そして、その翌周、ルイス・ハミルトン(メルセデス)とカルロス・サインツ(フェラーリ)が相次いでパンクに見舞われ、計画外のピットストップを強いられた。これを受け、デブリを回収するために、ようやくSCが導入された。
FIAはこの対応について次のように説明した。
- デブリが少量かつレーシングライン外にある場合、通常はSCを投入しない
- デブリが広範囲に散乱し、その後にパンクが発生したためSC投入を決定
- 各車の間隔がまばらで、回収作業に十分な時間が確保できないためバーチャル・セーフティーカー(VSC)は解決策として不適切
FIAはさらに、「今回の特定の状況を分析し、今後に向けて異なる対応が必要かどうかを検討する」との見解を示した。
ミラーは確かにレーシングライン外に落下していた。だが、ロサイル・インターナショナル・サーキットにおいて、ターン1は唯一のオーバーテイクポイントであり、ボッタスのように青旗を守るためにラインを外れる車両が出る可能性が十分に考えられる位置だった。
ノリスへの厳罰「深刻な安全上の問題」
ノリスは、ダブルイエローが振られた状況で減速しなかったとして、10秒のストップ&ゴーペナルティを科された。
この処分は失格を除けば最も重いものであり、ノリスは当時、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)と僅差の優勝争いを繰り広げていたが、ペナルティによりフィールド後方に沈んだ後、10位でフィニッシュした。
マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は、違反の事実を認めつつも「決定には明確性と妥当性が欠けている」と述べ、ペナルティが違反行為に対して過剰であると批判した。
これに対しFIAは、2024年2月に各チームへ配布した「ペナルティガイドライン」に基づいて下された判断だと説明。ノリスの違反は「深刻な安全上の問題」として対処されたと指摘した。
なお、現行のV6ハイブリッド・ターボ時代(2014年以降)において、同じ違反行為でストップ&ゴーペナルティが科された例は過去に3件ある。
2021年のオーストリアGPではニキータ・マゼピンとニコラス・ラティフィが、2017年のベルギーGPではキミ・ライコネンが、いずれも二重黄旗無視により同様の処分を受けた。
SCライトの不具合
カタールGPにおける2回目のSC導入期間中、SCのライトが正常に作動しないトラブルが発生した。
この問題は、当時レースリーダーだったフェルスタッペンを混乱させた。リスタートの合図はSCに設置されたライトの消灯によって行われるためだ。
FIAは、2回目のSC期間中にライトの不具合が発生したことを認めた上で、全チームに対してSC解除を口頭で伝えたと説明した。また、「リスタートは通常通りに行われた」と主張した。
その後、問題の原因は特定され解決されたが、予防措置としてSCの車両交換が実施された。このため、3回目のSCで使用された車両は、前2回のSC期間中に使用されたものとは異なる車両であった。