GM傘下のキャデラック、2028年より7番目のエンジンメーカーとしてF1に参戦…アンドレッティ内定 or 崖っぷちか
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2023年のF1ラスベガスGPの開幕に先立ち、アメリカの自動車製造大手ゼネラルモーターズ(GM)は11月14日(火)、F1パワーユニットメーカーとして2028年よりFIA-F1世界選手権に参戦する計画を発表した。エンジンには傘下の高級車ブランド、キャデラックのバッジを掲げる見通しだ。
GMはこの日、2028年のF1パワーユニット(PU)サプライヤーとして国際自動車連盟(FIA)に正式に登録した事を明らかにした。これによりPUサプライヤーは全7社に増加する。キャデラックが相対するのはフェラーリ、メルセデス、ホンダ、アウディ、ルノー、レッドブル・フォードだ。
GMはキャデラックを通して米国の名門レースチーム、アンドレッティ・グローバルと提携。2025年からのF1参戦に向けてFIAの承認を得ているが、フォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)との最終交渉に関しては現在も進行中と見られており、正式参戦が決まったわけではない。
しかしながらGMのマーク・ロイス社長は「アンドレッティ・キャデラックのF1エントリーがGM製パワーユニットを搭載する事になり大変嬉しく思う。我々は成功に向けたパワーユニットを開発し、アンドレッティ・キャデラックを真のワークスチームとして位置づけられると確信している」と自信を見せた。
F1は2026年より新たなPU規定を導入する。エンジンは1.6リッターターボが継続されるものの、複雑高価なMGU-Hは廃止され、PUシステム総出力における電動パワーは約50%にまで引き上げられる。また、100%持続可能な燃料が導入される。
FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長はSNSを通して「これはFIAのPU規定に対する更なる支持だ。アメリカを象徴するアンドレッティとGMという2つのブランドの参加はこのスポーツにとって良い知らせだ」と歓迎した。
仮にアンドレッティ・キャデラックのエントリーが最終的に認められたとしても、GMの供給は2028年以降となるため、つなぎのエンジンが必要だ。最有力候補は供給先が自らのワークスチームのみであるルノーとなる。
PUメーカーとしてのGMの参戦は、アンドレッティの承認に消極的とされるF1首脳陣に対する大きな圧力となり得る。
ロイスはAP通信とのインタビューの中で、アンドレッティ以外の他の既存チームと提携する意思がない事を強調している。FOMがアンドレッティの参戦を拒否した場合、PUメーカーとしての参戦を見送る可能性が濃厚だ。
反対意見に対してアンドレッティは都度、これに応える形でプロジェクトを前進させてきた。
チーム買収による参戦を試みるよう言われると、実際に交渉の席に着き、自動車メーカーを引き込むよう言われるとGMを説得して提携を結び、単なるバッジ契約ではなく真のワークスパートナーを見つけろと言われると、それを実現させた。
昨年の米新車販売でトヨタを抜いて首位を奪還したGMがPUメーカーとしての参戦を発表した事で、米国市場を重んじるFOMの母体、米リバティ・メディアがアンドレッティの参戦を拒否するのは間違いなく難しくなったと言えるだろう。ただ、懸案の一つである分配金の希薄化を巡る問題は、これを以て直接的に解消されるわけではない。
FOMとの商業交渉の結果が明らかにされていないこのタイミングでの発表は実に興味深いものがある。
PUメーカーとしてのキャデラックの参戦は遥か以前に決まっており、アンドレッティの承認が内定した事から発表へと至ったのだろうか。それともFOMから承認が得られる見通しがなく、崖っぷちに追い込まれたが故に、最後の説得材料として急遽、決定が下されたのだろうか。
GMは既にプロトタイプ技術の開発とテストに着手している事を明らかにした。PU開発は電動化、ハイブリッド技術、持続可能な燃料、高効率内燃エンジン、高度な制御機構、ソフトウェア・システムなどの分野におけるGMの専門技術を進化させることになる。