ガレージからコースへと向かうダニエル・リカルド(スクーデリア・アルファタウリ)、2023年11月25日(土) F1アブダビGP予選(ヤス・マリーナ・サーキット)
Courtesy Of Red Bull Content Pool

逆転逃したアルファタウリ、F1アブダビ戦略の是非を考察するアストンの元ストラテジスト

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角田裕毅の奮闘にも関わらずアルファタウリは指揮官フランツ・トストの引退レースに「逆転のコンストラクターズ選手権7位」という花を添える事はできなかった。ピットウォールが採った戦略は最善のものだったのだろうか?

2015年から2022年にかけてフォース・インディア、レーシングポイント、そしてアストンマーチンでレース戦略を担当してきたバーニー・コリンズは、少なくとも角田裕毅の1ストップに関しては誤りだったと考えている。

アストンマーチンの戦略責任者を務めるバーニ・コリンズ、2021年7月19日F1イギリスGPCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーチンの戦略責任者を務めるバーニ・コリンズ、2021年7月19日F1イギリスGP

58周のレースに先立ち、ピレリは1ストップと2ストップの両方の可能性があると予想した。結果的にほとんどのチームはハードタイヤを2セット、ミディアムを1セット使うマルチストップ戦略を採った。1ストップ戦略をやり切ったのは角田裕毅、エステバン・オコン、バルテリ・ボッタスの3人だけだった。

ドライバー別タイヤ戦略、2023年11月26日F1アブダビGPCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ドライバー別タイヤ戦略、2023年11月26日F1アブダビGP

F1公式サイトの記事の中でコリンズは、あくまでも”レース後”の分析を通してではあるが、1ストップ戦略が2ストップ戦略より「約6.5秒」遅かった事は「明らか」と結論付け、その主な理由は想定を超えるデグにあったと指摘した。

フェルナンド・アロンソとマックス・フェルスタッペンはレース後、口を揃えて予想以上にタイヤの劣化が酷かったと語った。

コリンズは、フィールドの大部分が15周目までに最初のピットストップを終えた点に注目し、これよりスティントを伸ばした以下の4名のドライバーに触れ、角田裕毅を除く全員が後続のドライバーにコース上で追い抜きを許し、タイムをロスしたと指摘した。

  • 角田裕毅(~22周目)
  • ランス・ストロール(~22周目)
  • カルロス・サインツ(~23周目)
  • バルテリ・ボッタス(~29周目)

デグラデーションが大きいほど、スティントの終盤に向けてラップタイムの落ちは大きくなり、フレッシュなタイヤとのタイム差も大きくなる。そしてアンダーカットは強力に機能する。

コース上での防衛および、防衛に失敗して追い抜かれる事はタイムロスに繋がる。レイアウト変更前のアブダビはオーバーテイクが極めて困難なコースであったが、2021年以降はそうではない。

コリンズは「1ストップ戦略を採ったボッタスは、第1スティントで11個のポジションを失いました。ポジションを失うたびにラップタイムのロスが生じます」と指摘する。

「そのタイムロスは、追い抜かれる位置やどれだけ防御するかによって異なりますが、いずれにせよ常にロスに繋がります」

「サインツのラップタイムからは、15周目以降のオーバーテイクによって、その各々において少なくとも0.5秒のロスを抱えたことが分かります」

「同じ影響は、トラックポジションを保持して最終スティントを伸ばそうとするあらゆるドライバーにも見られました。1ストップ戦略の結果、ツノダはこのフェーズで6つのポジションを失いました」

ヤス・マリーナ・サーキットのバックストレートを走行する角田裕毅(アルファタウリ)、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)、2023年11月26日(日) F1アブダビGP決勝レースCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ヤス・マリーナ・サーキットのバックストレートを走行する角田裕毅(アルファタウリ)、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)、2023年11月26日(日) F1アブダビGP決勝レース

アロンソから3.5秒遅れで角田裕毅がフィニッシュした事に触れてコリンズは、仮に2ストップ戦略を採っていれば、7位入賞により更に2ポイントを多くを獲得できた可能性があると指摘した。

ただそれでもウィリアムズに対しては1ポイント足らない。もう1台のアルファタウリAT04をドライブしたダニエル・リカルドの戦略は適切だったのだろうか?

リカルドはレース開始早々に捨てバイザーがブレーキダクトに詰まるという予期せぬ問題に直面した。そのため予定より早い段階でピットストップを行う必要が出てしまい、必然的に2ストップ戦略を採る事となった。

追加得点の可能性がなかったウィリアムズは、ローガン・サージェントを使ってリカルドの妨害工作に打って出た。

リカルドが31周目に2回目のピットストップを消化してコースに戻ると、その前にサージェントが立ちはだかった。サージェントは意図的にスティントを伸ばし、5周に渡ってリカルドの前進を防いだ。

サージェットの仕事によってリカルドが失ったタイムは「約7秒」に達したとコリンズは分析した。

リカルドは10位入賞を果たしたランス・ストロールに僅か0.5秒差でフィニッシュした。サージェットの働きがなかった場合、アルファタウリはリカルドの1得点により、ウィリアムズと同一ポイントでシーズンを終える可能性があったとコリンズは指摘した。

レース終了後スタッフと抱き合うウィリアムズ・レーシング・チーム代表のジェームズ・ヴァウルズ-2023年11月26日F1アブダビGP決勝Courtesy Of Williams

レース終了後スタッフと抱き合うウィリアムズ・レーシング・チーム代表のジェームズ・ヴァウルズ-2023年11月26日F1アブダビGP決勝

ただ、このシナリオが現実になったとしても、アルファタウリがコンストラクターズ選手権7位を獲得するにはポイントが足らなかった。

同一ポイントの場合、シーズンを通した最高位によって順位が決着する。このシナリオの場合、両チームはいずれも2回ずつ7位を獲得することになるため、次善最高位で評価される事になる。

ウィリアムズは2度に渡って8位でフィニッシュしているが、アルファタウリは1回のみと1つ足らない。

コリンズは「7位を獲るためにはツノダかリカルドのいずれかが、上記のシナリオより少なくとも1つ上のポジションでフィニッシュする必要がありました」と結論づけた。

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