悔しさと達成感、そして後悔…感傷に浸る角田裕毅、今季最上8位で締め括るもトストの引退戦に華を添えられず
3年目のF1シーズンを今季ベストタイの8位入賞で締め括った角田裕毅(アルファタウリ)はアブダビでの最終戦を経て、悔しさと達成感、そして後悔の念が入り交じる様子を見せた。
デビュー当時から時に厳しく、見守り続けてくれた恩師フランツ・トスト代表の引退レース。掲げた目標は7点差でリードするウィリアムズを打ち負かしての逆転コンストラクターズ選手権7位だった。
ウィリアムズは終始、ポイント圏外に沈むレースを展開した。角田裕毅がスタートポジションの6位を維持すれば逆転が可能だった。だがそれは決して簡単なことではなかった。
開始直後に2度のF1王者、フェルナンド・アロンソにポジションを奪われるも、すぐさま奪還。上々のスタートを切った。ミディアム勢としては誰よりも長く第1スティントを引っ張り、5周に渡ってキャリア初のラップリードを記録した。タイヤマネジメントの賜物だった。
戦略的にはトップ10フィニッシャーの中で唯一の1ストップと、果敢なアプローチを採った。だがこれによってレース終盤は逆に、オスカー・ピアストリやフェルナンド・アロンソ、ルイス・ハミルトンら2ストッパー勢に対して防戦一方の厳しいレースを強いられた。
残り11周のバックストレートでピアストリに交わされ、残り3周のターン 9でアロンソにオーバーテイクを許して8番手に後退。ハミルトンの追撃こそ凌ぎ切ったが、望んでいた6位を掴む事はできなかった。ただ、戦略についての後悔はないと角田裕毅は言う。
「ある時点ではトップ6に入れるかもしれないと思ってたのですが…、、上手くいきませんでした。ただ、1ストップ戦略に挑戦した事について、僕ら(チームを含めた自身)が後悔しているとは思っていません」
角田裕毅は時折、間を置き、顔を歪め、悔しさを滲ませながら、そう振り返った。
「もちろん、7位でフィニッシュできなかったのは残念です。ですが、少なくとも僕は全力を出し切りました。なので、、満足していますし…。。そういう感じです」
世界中のファンはこの日のドライバー・オブ・ザ・デイに角田裕毅を選出した。その得票率は24.2%と。14.3%で2位となったシャルル・ルクレールを大きく引き離した。
その事が伝えられると角田裕毅は「本当ですか? ありがとうございます」とファンに感謝の気持ちを伝えた。
「全体として楽しいシーズンでした。そう言いたいと思います。クルマのパフォーマンス的に本当に厳しいスタートではありましたが、個人として過去2年と比べて成長する事ができました」
ウィリアムズを逆転してのコンストラクターズ選手権7位は叶わなかった。その差は僅か3ポイントだった。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン)にオーバーテイクを仕掛けた事で接触、転落したメキシコGPで角田裕毅は8位入賞のビッグチャンスを逃した。無理に攻めず、ピアストリのタイヤがタレる終盤を待っていれば4ポイントを持ち帰れた可能性が高かった。
アブダビでの今季最後のチェッカーフラッグを経て角田裕毅の脳裏によぎったのは、このミスだった。
「最終的には報われませんでしたが、それでもコンストラクターズ選手権で10位から8位にポジションを上げる事ができたのは本当に良かったと思います」と角田裕毅は語る。
「ただ同時に、何度か酷いミスがありました。特にメキシコで逃したポイントが最終的に大きな痛手となってしまいました」
「…とは言え、ウィリアムズの皆さんを祝福したいと思います。彼らはそれに値します。彼らと争えて楽しかったです」
トストと共に歩むキャリアはこれで終わりを迎える。来年のピットウォールでその姿を見ることはできないが、角田裕毅は今後も連絡を取り合うつもりだと語った。
「フランツに対して改めて感謝したいと思います」
「彼と共にこの3年を楽しく過ごす事ができました。彼がいなくなると間違いなく寂しくなります。…でも、これからも連絡を取り合うつもりです」
11月26日(日)にヤス・マリーナ・サーキットで行われた2023年F1第23戦アブダビGP決勝レースでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がポール・トゥ・ウインを以て今季19勝目を挙げ、記録ずくめの支配的なシーズンを締め括った。
ポストシーズン・テストと、プレシーズン・テストを経て、2024年シーズンは97日後にバーレーンで開幕を迎える。