「マクラーレンでキャリアを終える」とアロンソ。3度目のF1王者獲得を断念し、三大レース全制覇に照準を変更?

腕を組むフェルナンド・アロンソcopyright Mclaren

マクラーレン残留発表の後のアメリカGP公式記者会見を終えて、フェルナンド・アロンソはマクラーレンでキャリアを終える事になるだろうとの認識を示した。今年36歳のアロンソは、ルノー在籍時代の2005年と2006年に世界選手権を連覇、現役最高レベルのドライバーと見なされている。3度目の王者奪還を公言するも、以降は進むべき道を誤り続けキャリア16年目にして2度のタイトルに甘んじている。

オプション付きの1年契約

10月20日(木)の公式記者会見前、マクラーレンはアロンソとの契約延長を発表した。だが契約年数については明らかにせず、単年なのか複数年なのかは不明。具体的な数字については言及しなかったが、アロンソは1年契約ではなく長期的なものだと仄めかした。

「契約の細かなところについては発表してないけど、どちらかと言えば長期的なパートナーシップだよ。マクラーレンでキャリアを終えられれば最高にハッピーだね」

肝になるのは”どちらかと言えば”という発言。会見では、来年の第102回インディ500への参戦の可能性は除外したものの再度挑戦するのは確実だと主張し、2019年か2020年と具体的に示唆した。つまりは、アロンソの契約は単年のオプション付きである可能性が高い。勝てる見込みがあるなら再度延長、そうでなければ契約解消権を行使するといったところだろう。

トリプルタイトルの可能性

アロンソが所属するマクラーレン・ホンダは、シーズン前テストの段階からホンダ製エンジンの信頼性とパワー不足に苦しみ、シーズン序盤はトラブルによって多くのリタイヤを強いられた。アロンソは自身の残留条件としてホンダとのパートナーシップ解除を公言とチームに要求、結果的にマクラーレン・ホンダの名前はF1から姿を消すことになった。

マクラーレンが来季のパートナーに選んだのはルノー・スポール。グリッド上で3番目の競争力を持つと見なされている。今季ルノーエンジンを搭載するレッドブル・レーシングは、市街地コースのアゼルバイジャンGPとマレーシアGPの2レースで勝利を収めており、競争的なマシンであればルノーエンジンでも表彰台の頂点に立てる事を証明した。

来シーズンはレギュレーションの大きな変更は行われないため、各チームの勢力図は現状のまま接近するものと考えられる。だが、メルセデス、フェラーリ、レッドブルの上位3チームの資金力と人材リソースを考慮すれば、経験のない未知のエンジンを搭載した上に、マクラーレンが過酷な開発競争で3強チームより優位に立つのは極めて難しいと言える。

F1総合優勝ではなくトリプルクラウンに照準変更か?

昨月末、マクラーレンとの交渉が長引いていたアロンソは「どの位速いマシンを手に入れられるのかが不明だから」とその理由を語っていた。優勝が可能なのか、それとも3位表彰台が限界なのか、あるいはグリッド4番目のチームとして7番手・8番手争いをするのが現実的な落とし所なのか…。アロンソが契約延長をためらっていた背景にはこのような事情があると見られる。

アロンソは来年の1年間こそマクラーレンでF1に専念する覚悟があるものの、それ以降は未定。当のマクラーレンが来季優勝に足るだけの優れたパフォーマンスマシンを用意できるかも不透明。このような状況の中で、アロンソは全てを把握し将来を評価した上で契約にサインした。アロンソが3度目のF1ワールドチャンピオンになる事を諦めている可能性は否定できない。

アロンソはもう1つの目標としてトリプルクラウン、つまり世界三大レースのすべてで優勝する事を掲げている。F1モナコGP、インディアナポリス500マイルレース、そしてル・マン24時間レースの3つだ。アロンソは2006年にルノーRS26でモンテカルロのレースを制しているため、残るインディ500とルマン24時間の2つを制覇する必要がある。


© McLaren / インディ500に挑んだアロンソ

来年のインディ500も今年同様にモナコGPと日程がバッティングしており、契約上アロンソはF1を優先する義務がある。だが、ルマンの開催は6月16〜17日とされており、F1とのダブルブッキングは生じない見通しだ。

仮に3度目の王者の称号を手に入れたとしても、60年以上に及ぶF1の歴史にはさらに上を行くドライバーが大勢いる。7度の絶対王者ミハエル・シューマッハ、5回世界を制したファン・マヌエル・ファンジオ、これに4度の総合優勝を果たしたアラン・プロストとセバスチャン・ベッテルが続き、場合によってはルイス・ハミルトンが今年これに並ぶ可能性もある。

だが、モータースポーツの歴史そのものであり高い名声と伝統を誇る世界三大レースを全て制覇した男はグラハム・ヒルの一人のみ。野心深いアロンソが、その照準を変えたとしても何ら不思議はない。

F1アメリカGP特集

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