笑顔を見せるアルピーヌのフェルナンド・アロンソ、2022年6月12日F1アゼルバイジャンGP
Courtesy Of Alpine Racing

アロンソ、再審請求を経て7位奪還!罰則無効の”逆転裁定”へと至った理由と経緯

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国際自動車連盟(FIA)はアルピーヌF1チームからの再審請求を受け、アメリカGPでフェルナンド・アロンソに下された30秒加算ペナルティに関する審理は無効と判断。チェッカーから4日を経てリザルトが修正された。

ペナルティが科される事となった審理についてFIAスチュワードは、レギュレーションで定められた要件、つまり暫定結果発表の30分以内という規定時間内に提出されなかったにも関わらず異議(抗議)の申し立てが受理されたと判断した。これに伴いアロンソは7位入賞を取り戻した。

アルピーヌは「先週末のアメリカGPで発生した14号車に関する一件について、前向きな結論に達したことをFIAスチュワードに感謝したい」と述べた。

「チームはスチュワードの決定を歓迎する。14号車は7位に返り咲き6ポイントを獲得した。レースの質を確保し続けるために、今後もFIAと共に取り組んでいきたい」

「今週末のメキシコシティGPを楽しみにしている」

アロンソはランス・ストロール(アストンマーチン)との接触によりミラーが緩んだ状態でレースを続行。コース上にミラーが脱落した後もステアリングを握り続けて7位でフィニッシュした。

だがハースF1チームからの異議申し立てを経てスチュワードは「安全でない」状態のマシンを走らせたとして30秒ペナルティを科す裁定を下した。アロンソはポイント圏外の15位に降格した。

これを受けてアルピーヌは、ハースからの異議申し立てが締め切り時刻の24分遅れで受理された事を突いて異議を申し立てた。

異議申立てについて、FIA国際競技規定(ISC)第13条3項5には「暫定順位発表後30分以内に提出しなければならない。ただしスチュワードが、30分の期限を遵守することが不可能であると判断した場合はこの限りではない」と規定されている。

一度は退けられたアルピーヌの主張

メキシコGPの開幕を翌日に控えたメキシコシティ現地27日(木)18時からの聴聞会でスチュワードは、本件はそもそも異議申し立ての対象外だとしてアルピーヌの訴えを退けた

ISC第13条では、抗議の対象となる事象を「チームまたはドライバーのエントリー、コース全長、ハンディキャップ、ヒートまたは決勝の編成、競技中に発生し申し立てられたエラー、不正または規則違反、 車両に対する規定違反との主張、または競技終了時に確定した順位」と定めている。

つまりスチュワードの決定に対する異議申立ての権利は存在せず、スチュワードは、アルピーヌが採るべき行動は「異議申し立て」ではなく、FIA国際控訴審判所(ICA)への「控訴」だったと指摘した。

ただしこの場合であっても、アルピーヌの試みが失敗に終わっていた可能性は高い。アルピーヌが異議申立てを行ったのは決定から1時間8分後のことだった。控訴の場合は決定から1時間以内に控訴の意思をスチュワードに通告しなければならない。

アルピーヌ、却下を経て再審請求

これを受けてアルピーヌは別の手段、再審請求を行使した。

ISCは異議申立てや控訴の他に再審請求権を認めている。これは「競技中に利用できなかった重要かつ関連する新たな証拠」が事後に見つかった場合、スチュワードの決定に対して再審理を請求する事ができるというものだ。

同日20時45分より行われた一件に関する聴聞会では、アルピーヌが持ち込んだ証拠が再審請求の要件を満たすものかどうかが検討された。

アルピーヌのスポーティング・ディレクターを務めるアラン・パーメインが提出した証拠は「レース当日の20時53分(アロンソへの罰則裁定が決定された時刻)になって初めて、最初の異議申立てが通常の30分という期限を24分過ぎて提出された事を知った」というものだった。

また、27日(木)の聴聞会では、アメリカでのレース後に一件を巡ってハースがオフィシャルを訪れた際、ISCにより定められた「30分」ではなく「1時間」の猶予があると告げられた事が明らかになったが、これも新たな証拠として提出された。

なお、何故に「1時間」と通知されたのかについては明らかにされていない。

逆転裁定、期限延長は違法

スチュワードがこれらを要件に合致する証拠と認めた事で、そのまま継続して再審理が行われた。再審理では、ハースが規定の30分以内に異議を申請できる状況にあった事が明らかになった。

スチュワードによるとハースのトラックサイド・オペレーション・マネージャーを務めるピーター・クローラは「FIAオフィシャルから1時間の猶予があると聞かされていなければ、30分以内に手書きの異議申立てを提出しただろう」と認めた。

ISC規定の例外、つまり30分という提出期限について「スチュワードが不可能であると判断した場合はこの限りではない」との文言についてアルピーヌは、オックスフォード辞典を引き合いに出して「『起こりえないこと、達成できないこと』と定義されている」として、ハースが30分の期限内に抗議する事を妨げるものは何もなかったと主張した。

また、オフィシャルには「ISCに違反する許可を競技者に与える」権限はないとも指摘した。

ハースが「規定時間内に抗議でき得る」状況にあった事は知らなかったとした上でスチュワードは、本件は例の「不可能」な場合に該当せず、ハースからの異議は本来受理されるべきものではなかったと認め、アロンソにペナルティを科した裁定を「無効」とした。

その一方でスチュワードは、ミラーがグラつく状態でアロンソが走行を続け、これが許された事を「懸念している」として、必要に応じてオレンジボール・フラッグを振るか、あるいはチーム無線を通じてピットで修復するよう指示を出す事が「強く推奨」されるとも指摘した。

更にオレンジボール・フラッグの運用についての見直しを開始したとも付け加えた。

アロンソへの罰則裁定から無効判断までの経緯

  1. 10月23日 16時09分:暫定順位発表
  2. 10月23日 17時03分:ハースからの異議を受理
  3. 10月23日 20時53分:アロンソへの罰則裁定成立
  4. 10月23日 21時00分:最終順位発表
  5. 10月23日 22時01分:アルピーヌ異議申し立て
  6. 10月27日 18時00分:聴聞会
  7. 10月27日 20時40分:アルピーヌの異議却下
  8. 10月27日 23時25分:再審を経て決定無効と判断

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