タイヤに関する安全上の懸念を受けペイントによる疑似縁石が設けられたロサイル・インターナショナル・サーキットのターン12、2023年10月7日F1カタールGP
Courtesy Of Alfa Romeo Racing

F1カタールGP トラリミ違反54回の内訳:コーナー修正の影響、最多8回の一方で驚きの無違反が2名

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タイヤに関する安全上の懸念を理由とするターン12と13の修正はトラックリミットの回数にどのような影響を及ぼしたのか? という疑問に駆られ、2023年F1カタールGPの2日目に記録された全ての違反を集計してみた。

初日を経て「トッピングコンパウンドとカーカスコードの間のサイドウォールに剥離が発見された」事で、先の2つのコーナーの内側にペイントによる”疑似縁石”が設けられ、コース幅が80cmほど狭くなった。

ドライバーは僅か10分の「習熟セッション」のみでシュートアウトに臨まなければならなかった。世界最高峰のレーシングドライバーは、この限られた時間内に、初日に身体に馴染んだ感覚を修正できたのだろうか?

コーナー変更の後に行われたシュートアウトとスプリントのトラックリミットを集計。折角なのでコーナー別だけでなく、チーム別、ドライバー別にまとめた。イベントの2日目のロサイル・インターナショナル・サーキットで記録された走路外走行は計54回で、シュートアウトは31回、スプリントは23回だった。

コーナー別:3分の1が例のターン13

違反をコーナー別で見ると、最も多かったのが改修されたコーナーの一つ、ターン13で、全体の3分の1を占めた。ただ、ターン12は意外にも0回だった。前日の予選で最も多くのドライバーを苦しめたターン5が計16回でこれに続いた。

興味深いことにターン15はシュートアウトで僅か2回だったものの、スプリントでは11回に急増した。ターン5・13はこれとは対照的にシュートアウトからスプリントに向けて急減した。風向きが180度変化したのかもしれない。

ただ、他車とのバトルが生じるスプリントと、基本的には単独走行となるシュートアウトではそもそも、トラックリミットの意味合いが異なる可能性がある。

F1カタールGPの舞台、ロサイル・インターナショナル・サーキットのコースレイアウト図copyright Formula1 Data

F1カタールGPの舞台、ロサイル・インターナショナル・サーキットのコースレイアウト図

コーナー別トラックリミット違反回数
ターン シュートアウト スプリント 割合
ターン13 13 5 18 33.33%
ターン5 12 4 16 29.63%
ターン15 2 11 13 24.07%
ターン4 1 1 2 3.70%
ターン14 1 1 2 3.70%
ターン16 2 0 2 3.70%
ターン2 0 1 1 1.85%

チーム別:最多はフェラーリ

全てのチームが少なくとも1回の違反を犯した。最多は計10回のフェラーリ。最も少なかったのは2回のレッドブルだった。

ただ後述のように違反への影響の度合いとしては、クルマよりもドライバー個人の資質やスタンス、スキルの方が大きいと言えそうだ。同じマシンに乗っていてもドライバーによって違反回数は大きく異なる。

チーム別トラックリミット違反回数
チーム シュートアウト スプリント 割合
フェラーリ 5 5 10 18.52%
アストンマーチン 2 7 9 16.67%
アルファロメオ 4 3 7 12.96%
ウィリアムズ 6 1 7 12.96%
ハース 3 3 6 11.11%
メルセデス 3 1 4 7.41%
アルピーヌ 2 1 3 5.56%
マクラーレン 2 1 3 5.56%
アルファタウリ 2 1 3 5.56%
レッドブル 2 0 2 3.70%

ドライバー別:ラッセルとピアストリが無違反

最多はシャルル・ルクレール(フェラーリ)。8回もの走路外走行があった。同じくスプリントで4回に渡って「正当な理由なくコースを離れた」として、レース後に5秒加算ペナルティを科されたランス・ストロール(アストンマーチン)が7回でこれに続いた。

ルクレールのスプリントでの4回の違反はいずれも終盤に発生していた。ソフトタイヤのデグラデーションや、ランド・ノリス(マクラーレン)を含めたライバルとの接戦による影響も考えられる。ただシュートアウトでも4回の違反を犯しており、同じSF-23を駆るカルロス・サインツは2セッション合わせても2回に過ぎなかった。

キャリア初のスプリント優勝を飾ったオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2023年10月7日F1カタールGPCourtesy Of McLaren

キャリア初のスプリント優勝を飾ったオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2023年10月7日F1カタールGP

2名だけ無違反者がいた。ジョージ・ラッセル(メルセデス)とスプリントで優勝を飾った新人オスカー・ピアストリ(マクラーレン)だ。それ以外の18名は少なくとも1回は違反した。

ラッセルと同じメルセデスW14をドライブしたルイス・ハミルトンの違反は計4回、ピアストリのチームメイト、ランド・ノリスは計3回に渡ってトラックリミットを犯した。

ドライバー別トラックリミット違反回数
ドライバー シュートアウト スプリント 割合
シャルル・ルクレール 4 4 8 14.81%
ランス・ストロール 1 5 6 11.11%
周冠宇 4 2 6 11.11%
ルイス・ハミルトン 3 1 4 7.41%
アレックス・アルボン 3 1 4 7.41%
フェルナンド・アロンソ 1 2 3 5.56%
ケビン・マグヌッセン 1 2 3 5.56%
ニコ・ヒュルケンベルグ 2 1 3 5.56%
ランド・ノリス 2 1 3 5.56%
ローガン・サージェント 3 0 3 5.56%
ピエール・ガスリー 1 1 2 3.70%
カルロス・サインツ 1 1 2 3.70%
角田裕毅 1 1 2 3.70%
バルテリ・ボッタス 0 1 1 1.85%
リアム・ローソン 1 0 1 1.85%
マックス・フェルスタッペン 1 0 1 1.85%
セルジオ・ペレス 1 0 1 1.85%
エステバン・オコン 1 0 1 1.85%

セッション別

シュートアウト

No ターン ドライバー チーム ラップタイム
1 5 ニコ・ヒュルケンベルグ ハース・フェラーリ
1:44.048
2 13 ローガン・サージェント ウィリアムズ・メルセデス 1:27.337
3 13 ピエール・ガスリー アルピーヌ・ルノー 1:26.397
4 5 シャルル・ルクレール フェラーリ 1:55.220
5 5 ランス・ストロール アストンマーチン・メルセデス 1:56.874
6 13 周冠宇 アルファロメオ・フェラーリ 1:27.058
7 13 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:26.192
8 5 ローガン・サージェント ウィリアムズ・メルセデス 1:42.554
9 13 ニコ・ヒュルケンベルグ ハース・フェラーリ
1:26.640
10 5 アレックス・アルボン ウィリアムズ・メルセデス 1:59.437
11 13 ケビン・マグヌッセン ハース・フェラーリ
1:27.016
12 13 ローガン・サージェント ウィリアムズ・メルセデス 1:26.685
13 5 アレックス・アルボン ウィリアムズ・メルセデス 1:26.710
14 13 角田裕毅 アルファタウリ・ホンダRBPT 1:26.664
15 13 アレックス・アルボン ウィリアムズ・メルセデス 1:26.710
16 13 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:26.069
17 5 シャルル・ルクレール フェラーリ 1:26.110
18 5 周冠宇 アルファロメオ・フェラーリ 1:33.307
19 13 カルロス・サインツ フェラーリ 1:26.048
20 13 周冠宇 アルファロメオ・フェラーリ 1:26.274
21 5 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:25.626
22 15 リアム・ローソン アルファタウリ・ホンダRBPT 1:26.041
23 5 周冠宇 アルファロメオ・フェラーリ PIT
24 5 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 1:24.543
25 5 シャルル・ルクレール フェラーリ 1:43.046
26 13 シャルル・ルクレール フェラーリ 1:25.131
27 4 セルジオ・ペレス レッドブル・ホンダRBPT 1:25.374
28 15 エステバン・オコン アルピーヌ・ルノー 1:25.683
29 16 ランド・ノリス マクラーレン 1:26.127
30 16 ランド・ノリス マクラーレン PIT
31 14 フェルナンド・アロンソ アストンマーチン・メルセデス 1:24.959

スプリント

No ターン ドライバー チーム ラップタイム
1 15 フェルナンド・アロンソ アストンマーチン・メルセデス 1:43.688
2 15 ニコ・ヒュルケンベルグ ハース・フェラーリ 1:44.336
3 5 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:31.056
4 15 フェルナンド・アロンソ アストンマーチン・メルセデス 1:29.571
5 15 ピエール・ガスリー アルピーヌ・ルノー 1:30.366
6 2 ケビン・マグヌッセン ハース・フェラーリ 1:51.180
7 15 カルロス・サインツ フェラーリ 1:28.742
8 15 ランス・ストロール アストンマーチン・メルセデス 1:30.040
9 5 ランド・ノリス マクラーレン・メルセデス 1:28.901
10 13 角田裕毅 アルファタウリ・ホンダRBPT 1:30.692
11 4 ランス・ストロール アストンマーチン・メルセデス 1:31.350
12 15 バルテリ・ボッタス アルファロメオ・フェラーリ 1:31.020
13 13 周冠宇 アルファロメオ・フェラーリ 1:30.019
14 15 ランス・ストロール アストンマーチン・メルセデス 1:29.952
15 13 ランス・ストロール アストンマーチン・メルセデス 1:30.259
16 13 シャルル・ルクレール フェラーリ 1:30.632
17 14 シャルル・ルクレール フェラーリ 1:30.632
18 13 アレックス・アルボン ウィリアムズ・メルセデス 1:28.748
19 5 シャルル・ルクレール フェラーリ 1:30.632
20 15 シャルル・ルクレール フェラーリ 1:30.632
21 15 ランス・ストロール アストンマーチン・メルセデス 1:30.259
22 15 ケビン・マグヌッセン ハース・フェラーリ 1:29.900
23 5 周冠宇 アルファロメオ・フェラーリ 1:32.079

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