
2026年F1初陣キャデラック、ドライバー候補6名を分析―光る角田裕毅の魅力
キャデラックF1チームの2026年F1新規参戦が遂に正式承認された。となれば、次に注目されるのはドライバーラインナップだ。2つのシートを巡っては、すでに多くのドライバーから関心が寄せられている。
ゼネラル・モーターズ(GM)の強力なバックアップを受け、独自パワーユニットの開発も計画されていることから、将来性のあるプロジェクトとして、多くのドライバーにとって魅力的な選択肢となるだろう。
ドライバーラインナップについて、キャデラックのチーム代表グレアム・ロードンはF1公式サイトに対し、「まだ契約交渉のタイムラインは設定していないが、今後確実に進めていく」とコメントした。
また、アメリカンチームとして、アメリカ人ドライバーを起用する可能性はあるのか?との質問に対しては、その意向を認めつつも「完全に実力主義でドライバーを選ぶ」と強調した。
新規参戦チームにとっては、経験豊富なベテランドライバーと将来性のある若手をバランスよく起用することが成功へのカギとなる。ここでは、キャデラックが関心を持つとされる6人の候補を紹介する。
1. コルトン・ハータ
Courtesy Of Penske Entertainment
インディカー・シリーズ第6戦デトロイトでポールポジションを獲得したコルトン・ハータ(アンドレッティ)、2024年6月1日
インディカーで活躍するアメリカ人ドライバー、コルトン・ハータは、かねてよりF1参戦の噂が絶えない存在で、目下、最有力候補の一人と言える。
2022年にはレッドブルがアルファタウリ(現レーシング・ブルズ)のシート候補として検討したが、FIAスーパーライセンスのポイントが不足していたため実現しなかった。
現在、ハータはスーパーライセンスの取得に向けて順調にポイントを積み上げており、2025年シーズンの結果次第ではF1参戦の条件を満たす可能性がある。
キャデラックは「オール・アメリカンチーム」としてのアイデンティティに期待が寄せられており、その点でハータの起用は合致する。
一方で、2022年にポルトガルのポルティマオでマクラーレンのTPCプログラムに参加し、F1マシンをドライブした経験はあるが、ピレリタイヤでの走行経験はほとんどなく、F1サーキットの多くも未経験で、仮にF1に転向してもその道は険しいものになる可能性が高い。
2. セルジオ・ペレス
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ガレージに立つセルジオ・ペレス(レッドブル)、2024年12月1日(日) F1カタールGP決勝レース(ロサイル・インターナショナル・サーキット)
2024年を最後にレッドブルのシートを失ったセルジオ・ペレスも候補の一人だ。アメリカと国境を接するメキシコ出身のペレスは、豊富なF1経験を持つだけでなく、スポンサーの持ち込みを含めた商業的な魅力も高い。
2026年時点で36歳となるが、ルイス・ハミルトンやフェルナンド・アロンソの活躍を見る限り、十分に戦える年齢だ。特に新規参戦チームにとって、ペレスのような経験豊富なドライバーは、マシン開発において非常に重要だ。
懸念されるのはパフォーマンスだろう。昨年のF1ではマイアミ以降、急激に失速し、その結果としてレッドブルはコンストラクターズ選手権を失った。キャデラック上層部が不安視しても不思議はない。
3. バルテリ・ボッタス
Courtesy Of Sauber Motorsport AG
パドックに立つバルテリ・ボッタス(ザウバー)、2024年10月24日F1メキシコGP
ペレス同様、メルセデス時代に5度のコンストラクターズタイトル獲得に貢献したバルテリ・ボッタスもキャデラックにとって魅力的な選択肢だ。昨年末でザウバーのシートを失ったが、メルセデスのリザーブドライバーとしてF1復帰の機会をうかがっている。
経験豊富で、開発能力にも優れているため、新規チームにとっては頼れる存在となるだろう。ボッタス自身もキャデラックとの交渉を認めており、「非常に興味深いプロジェクトだ」とコメントしている。
4. 角田裕毅
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ガレージ内で腕を組む角田裕毅(レーシング・ブルズ)、2025年2月27日(木) F1プレシーズンテスト2日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)
角田裕毅もキャデラックの候補として挙げられるべき存在だろう。2025年もレーシング・ブルズに所属するが、レッドブルのシニアチーム昇格の道は閉ざされている状況で、他チームへの移籍を検討する可能性がある。
これまで彼を支援してきたホンダとレッドブルの双方が、角田裕毅が自らの道を進むべき時が来たと認めている。
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は昨年末、「サポートチーム(レーシング・ブルズ)に5年間も同じドライバーを留めておくことはできない。ずっと”付き添い役”ではいられない。その時点で彼を手放すか、別の選択肢を考える必要がある」と語った。
2026年にホンダと組むアストンマーチンが移籍候補先とも噂されるが、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールの契約が残っているため、現時点でシートに空きはない。そこで浮上するのが、2026年にF1デビューを果たすキャデラックだ。
キャデラックにとって角田裕毅は、F1での実績がありながらも、まだ若く成長途上にあり、知名度も併せ持つドライバーという点で魅力的な選択肢になり得る。
- 候補の中で唯一の現役F1ドライバー
- 毎年評価を高めており、その速さを証明している
- 新人と組ませる際に理想的なドライバーの一人
- 経験豊富なベテランドライバーと組ませてもバランスが取れる
新規参戦チームにとって、ドライバー選びは非常に重要だ。経験不足の新人2人を起用するのはリスクが高く、かといってベテランだけでは将来性に欠ける。その点で、角田裕毅は新チームにとって理想的な中堅ドライバーと言える。
5. 周冠宇
Courtesy Of Ferrari S.p.A.
スクーデリア・フェラーリの2025年F1リザーブドライバー就任が発表された元ザウバーの周冠宇、2025年2月5日
2024年にザウバーのシートを失った周冠宇も、キャデラックの候補者リストに入る可能性がある。チーム代表のロードンは周冠宇のマネージャーであり、中国人ドライバーの商業的価値を熟知している。
GMのグローバル販売に占める中国の構成比は2021年に46%に到達。最大の市場になったものの、EVシフトへの対応が遅れた結果、以降は販売が激減しており、昨年末には50億ドル(約7,400億円)もの損失を計上することが明らかにされた。
中国市場を意識したドライバーラインナップを考えた場合、周冠宇が候補に入るのは必然だ。加えてまだ25歳と若く、成長の余地もあるため、チームの長期計画にも適した選択肢となる。
6. ジャック・クロフォード
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
アストンマーチンの2025年F1リザーブ・ドライバーを務めるジャック・クロフォード
19歳のアメリカ人ドライバー、ジャック・クロフォードはFIA-F2選手権に参戦しており、昨年はランキング5位を獲得。アストンマーチンの若手育成プログラムにも名を連ねており、F1リザーブ・ドライバーを務める。
また、アンドレッティ・フォーミュラEチームのリザーブ・ドライバーも務めている。もしキャデラックが若手の育成を重視する場合、クロフォードは有力な選択肢となるだろう。