
角田裕毅、サポート役は「焦点に非ず」― 来季シートを懸けた残り4戦の“逆説的サバイバル哲学”
レッドブル・レーシングの角田裕毅が、一見矛盾するような興味深い哲学を語った。残り4戦、来季シートが決まる重要な局面で、角田は僚友マックス・フェルスタッペンのタイトル争いをサポートする役割を期待されている。
実際、チーム代表のローラン・メキーズは前戦メキシコGPの決勝に先立ち、「チャンピオンシップ争いにおいて極めて重要な役割」への期待を寄せた。
角田自身もその重要性を公言する。だが、実際に彼自身が焦点を当てているのは、フェルスタッペンのサポート役そのものではない。
2025年F1第21戦サンパウロGP開幕前のインタビューで、「将来のシート確保とマックスのサポート、二重のプレッシャーでは?」と問いかけられると、角田はこれを否定した。
「特にそうは感じていません。僕としてはただ、自分のパフォーマンスを最大化することだけを考えています」
サポートの重要性を角田は理解している。だが、それを「焦点」として意識することはない。その裏には、角田自身の”サバイバル哲学”があった。
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ドライバーズパレード中に会話するマックス・フェルスタッペンと角田裕毅(ともにレッドブル・レーシング)、2025年10月26日(日) F1メキシコGP(エルマノス・ロドリゲス・サーキット)
「ポイント取り逃がし」の悔しさを糧に
前戦メキシコGPで、角田はピットストップのトラブルにより11位に終わった。「7位か8位は狙えた」という角田の言葉には、明らかに悔しさが滲み出ていた。
だが、2週間を経て現地入りしたインテルラゴス・サーキットでの角田の表情は生き生きとして見えた。
「少しずつ良くなってきています。クルマに対する自信も高まっていますし、前戦のメキシコでも、すべてが順調にいっていれば確実にポイントを取れたと思います」
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インタビューに応じる角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年11月6日(木) F1サンパウロGPメディアデー(インテルラゴス・サーキット)
メキーズが「ペースは速かった」と評価したように、メキシコでポイントを取り逃した要因は、角田のパフォーマンスとは無関係だった。レースペースは確実に向上している。
「これまでの数戦の流れには満足していますし、この調子をキープしたいと思っています」と角田は語る。
サンパウロGPはスプリントフォーマットが適用されるため、週末の間に2回、ポイント獲得のチャンスがある。昨年ここで記録したキャリアベストの予選3番手――日本人3人目の快挙という記憶も、角田に自信を与えている。
「去年は雨の中でいい結果を残せましたし、いい思い出があります。やってみないことにはどうなるかは分かりませんが、それでもかなりの自信を持っています」
サポートは「結果」であり「目的」ではない
グランプリ初日を前に行われたインタビューで最も興味深かったのは、角田の「二重のプレッシャー」に対する否定的な答えだ。
シート確保とフェルスタッペンのサポート——この2つを両立させることが使命であるかのような質問に対し、角田はその前提そのものを否定した。
角田の論理は明快だ。予選で上位グリッドを獲得すれば、自然とフェルスタッペンを戦略面で助けることになる。それは同時に、自分のキャリアにもつながる。ゆえに、集中すべきは「自分のパフォーマンスだけ」というわけだ。
「予選でしっかりとパフォーマンスを発揮できれば、上位のグリッドからスタートできますし、そうなれば戦略面でレース中のマックスを助けることができます。それは僕の今後のキャリアにも通じることです」と角田は語る。
「各セッションで全力を尽くして、チームに良いフィードバックを提供し、週末を通してセットアップを改善していくこと。それだけに集中しています」
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パドック到着を経てファンからのサインの求めに応じる角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年11月6日(木) F1サンパウロGPメディアデー(インテルラゴス・サーキット)
「サポート」を意識しすぎると、自分のレースを見失う危険性がある。自分の順位やタイヤマネジメントを犠牲にするような「過剰なサポート」は、結果的にチーム全体のパフォーマンスを下げる可能性もある。
角田の言う「自分のパフォーマンスの最大化」は、決して利己的な姿勢からくるものではない。むしろ、チームにとって最も合理的なアプローチとなる可能性がある。
予選で上位に立てば、レース戦略の選択肢が増える。安定したペースを維持すれば、競合他車を抑える役割を果たせる。これらすべてが、結果としてフェルスタッペンのタイトル争いを助けることになる。「サポート」は角田にとって目的ではなく、結果なのだ。
ワールドチャンピオンの隣で学ぶ
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フリー走行前にF1参戦400戦を祝うレッドブル・レーシングのチームメンバーと角田裕毅、クリスチャン・ホーナー、マックス・フェルスタッペン、ヘルムート・マルコ、2025年5月16日(金) F1エミリア・ロマーニャGPフリー走行(イモラ・サーキット)
シーズン途中でレーシング・ブルズからレッドブルに移籍した角田。新しいマシンへの適応に加え、「ワールドチャンピオンの隣で走る」プレッシャーは想像を絶するものがあるだろう。
新しいチームに適応するうえでの最大の課題について問われると、角田はこう答えた。
「シーズン途中でまったく新しいマシンに乗り換えることですね。そのこと自体が、当然に難しいことだと思います。それに加えて、ワールドチャンピオンの隣で走るというのも、これまでとは違う種類のプレッシャーがあります。彼は間違いなくグリッドで最も優れたドライバーなので」
だが、角田はそれを前向きに捉えている。
「ただ今はそれを楽しんでいますし、彼から本当に多くを学んでいます。なので、すごく良い経験になっています」
残り4戦で問われる角田の”哲学”
サンパウロ、ラスベガス、カタール、アブダビ——残り4戦で、角田の2026年シートは決まる。それと同時に、サポートを焦点とするのではなく、自分の走りを追求し、その結果としてタイトル争いをサポートする――という彼の哲学も試されることになる。
複雑な計算や駆け引きではなく、ただ自らを信じ、パフォーマンスを追求すること。その結果として、すべてが良い方向に向かう――それが、5年間のシート争いを経験してきた角田が辿り着いた答えだ。
サンパウロGPは日本時間11月7日(金)23時30分からのフリー走行1で幕を開ける。昨年、雨のインテルラゴスで予選3番手を獲得した角田の走りに注目だ。