「2年のハンデ」は計算ずく─ニューウェイ衝撃発言の真意が明らかに、アストンを動かした天才デザイナーの“仕掛け”

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「2年のハンデ」は計算ずく──アストンマーチンF1チーム代表兼CEOのアンディ・カウエルが、“エイドリアン・ニューウェイ衝撃発言”の真意を明かした。

2025年シーズンで苦戦が続くアストンだが、チームの焦点はすでに2026年の新たな技術レギュレーションに移っている。その開発を率いるのが、今年3月にレッドブルから移籍した“F1界の天才デザイナー”ことニューウェイだ。

アストンマーチンのマネージング・テクニカル・パートナー兼株主への就任が発表されたエイドリアン・ニューウェイとローレンス・ストロール、2024年9月10日Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーチンのマネージング・テクニカル・パートナー兼株主への就任が発表されたエイドリアン・ニューウェイとローレンス・ストロール、2024年9月10日

モナコで飛び出した「2年のハンデ」発言

加入直後の数週間、ニューウェイはチームの内部構造を徹底的に分析。モナコGPをはじめ、複数のグランプリ現場にも帯同し、組織運営から技術的なインフラに至るまで細かくチェックを行った。

その過程で彼が問題視したのが、ドライバー・イン・ザ・ループ・シミュレーター(DIL)の性能だった。「基礎的な研究ツールであるにもかかわらず、現時点では相関性がまったくなく、むしろ制約になっている」と厳しく評価。改善に「2年」を要する「深刻なハンデ」とも語った。この発言は瞬く間にF1界を騒がせた。

当時カウエルは、「実際には年単位ではなく、数ヶ月の話だ」と指摘したが、約4ヶ月を経て英専門誌『Autosport』に対し、ニューウェイ発言の真意を明かした。

アストンマーチンのマネージング・テクニカル・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイ、2025年F1モナコGPCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーチンのマネージング・テクニカル・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイ、2025年F1モナコGP

「2年」はチーム鼓舞のための“仕掛け”

「あのインタビューを終えた直後、エイドリアンが私のところに来て耳元でこう囁いたんだ。『2年って言ったのは、チームを奮起させるためだ』ってね。顔を見合わせて笑ったよ!」

カウエルはそう、当時のやりとりを振り返る。ニューウェイの「2年のハンデ」発言は、チームに危機感を与えるための、ある種の“ショック療法”だった。

その効果はテキメンだったようだ。ジャイルズ・D・ウッド率いるDIL部門では改良作業が急ピッチで進められ、ドライバーの操舵感をより実車に近づけるための調整も続けられているという。

「当初は彼の発言を悪い意味に取ったメンバーもいたが、今ではあの言葉を力に変えてさらに一丸となって懸命に取り組んでいる」とカウエルは明かす。

カルディーレがもたらす2026年専念環境

現在、ニューウェイはほぼ完全に2026年型マシンの設計に専念している。現行マシンに関しては、昼休みの中の打ち合わせで助言する程度だという。この集中体制を可能にしているのが、周囲の徹底したサポートだ。

中でも重要な役割を担っているのが、フェラーリから移籍して2カ月ほどになるエンリコ・カルディーレだ。彼はシルバーストンの本拠地で技術部門を統括し、各部署の連携を進め、組織全体をまとめ上げている。

「エンリコの経験が各部門を結びつけている。これにより、ツールの改良にも、マシン開発そのものにも良い影響が生まれている」とカウエルは説明する。カルディーレの統括範囲には、シミュレーター部門も含まれている。

ニューウェイの戦略的発言は、狙いどおりチームの士気を大きく押し上げた。“2年のハンデ”という言葉とは裏腹に、アストンは新レギュレーション下で迎える新時代に向け、静かに、だが確実に飛躍のための基盤を築きつつある。