”ゼロポッド”の追求に慎重なマルコ、レッドブル「RB20」更なるメルセデス化を視野も
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、2024年の新車「RB20」が目指す”サイドボックス-レス”のコンセプトについて、現時点では必ずしも成功するとは確信していないようだ。
マックス・フェルスタッペンにとってF1ドライバーズ選手権4連覇が懸かる新しいシングルシーターは先代「RB19」の単なる改良に留まらない。中でもメルセデスが昨年、失敗と断じて追求を諦めた”ゼロポッド”との類似点が見られるサイドポッドは大きな注目を集めている。
RB20のサイドポッドのリーディングエッジは先代モデルのそれを上下逆転させたような形状で、前方に突き出したボディーワークの下部には水平横長のダクトが設けられているが、それだけでなく、垂直縦長のダクトのようなものがシャシー側に沿うように配置されている。
バーレーンでのプレシーズンテストを前に「Servus TV」に出演したマルコはRB20のコンセプトについて「メルセデスほど極端ではないかもしれないが、その方向性は似ている。風洞とシミュレーションではかなり上手く機能した」と説明した。
タイトル争いへの復帰に向けてメルセデスは昨年、グランドエフェクトカー導入初年度に採用したサイドポッドを可能な限り最小化する”ゼロポッド”コンセプトを継続したものの、「誤り」であったとしてシーズン序盤のモナコGPでのメジャーアップグレードを通してこれをお蔵入りとした。
マルコは「”サイドボックス-レス”のコンセプトについてメルセデスはデータを通して確信を持っていたが、実際には全く機能しなかった」と振り返る一方、「理論的に言えば、このようなアプローチはクルマの空気抵抗を低減できるため論理的だ」と付け加えた。
メルセデスの開発姿勢はグランドエフェクトカー時代の成功事例を生み出すには至らなかったが、レッドブルの最高技術責任者を務める天才エンジニア、エイドリアン・ニューウェイの琴線に触れたようだ。
マルコは、クルマのドラッグを可能な限り最小化するという点でニューウェイは「ラジエーターのないクルマを常に好んできた」と述べた。ただ同時に「しかしながら当然、エンジン部門の人間にとってそれは無理な相談だ」とも語った。
昨シーズンを通して圧倒的な優位性を発揮したRB19を更に改善するにはどうすればよいか? マルコの言葉を借りれば、その答えは「進化以上」の大胆なアプローチを採ることにある。その”原型”が今の我々が目にしているRB20だ。
レッドブルは鈴鹿サーキットを舞台とする日本GPでメルセデスのゼロポッドを彷彿とさせるアップグレードを導入する計画を立てているとも報じられているが、実際に導入するかどうかは現時点では未定のようだ。
マルコはローンチバージョンのRB20が2024年シーズンに投入されるクルマの「基礎」であるとしており、メジャーアップグレードにより更なる”メルセデス化”の道を辿る可能性がある事を示唆したが、コース上でのパフォーマンスはまだ未知数であるとして慎重だ。
「我々はこれから、この解決策、あるいは似たような解決策をうまく導入できるかどうかをテストで確認することになる」とマルコは語った。