バーレーンでの「AT04」は、チーム自ら予選Q2突破は困難と予想するほど非力であったが、角田裕毅は3月5日(日)に行われた2023年シーズンの初戦で入賞を巡って見事な走りを見せた。

14番グリッドに着いた角田裕毅は、オープニングラップでウィリアムズ勢に先行を許して15番手に後退。不穏なスタートを切った。

だが、ライバルに先行して1回目のピットストップに動いた事で第2スティントで挽回。ウィリアムズのアレックス・アルボン、そして昨年までのチームメイト、アルピーヌのピエール・ガスリーを相手にポイント圏内を争った。

ペース良好も最高速で太刀打ちできず

最終スティントでは好ペースを背景に、当初3秒以上あったアルボンとのギャップをじわじわと縮めていき、終盤に向けてDRS圏内にまで詰め寄ってみせた。

ただ、ストレートのトップスピードで5km/h程度上回る直線番長、FW45を交わす事は難しく、1.096秒届かず11位でレースを終えた。

レースを振り返った角田裕毅は「レースペースは予想以上に良かったのですが、それよりもポイントを逃したことが本当に悔しいです」と述べ、落ち着き堂々とした振る舞いながらもフラストレーションをのぞかせた。

「スタートでウィリアムズにポジションを奪われてしまいオーバーテイクを試みたのですが、彼らのストレートスピードに太刀打ちできる速さはありませんでした」

「思っていた以上に苦戦することになりましたが、それでも自分のタイヤマネジメントは満足できるものでした」

「プッシュしようとするや否やタイヤがオーバーヒートし始め、リアが滑り出す状況だったんです」

AT04が抱える課題

バーレーンでのAT04はポイントを争うには明らかに力不足だった。チームとしてコンストラクターズ選手権6位を目指す以上、このままでは許されない。

チーム代表を務めるフランツ・トストは「自分たちのパフォーマンスは満足できるものではない」と述べ、アップグレードによる性能向上は必要不可欠だと訴えた。

「技術的な観点から言えば、我々のクルマは私が期待するレベルに達しておらず、取り組むべき仕事が山積みだ」

「クルマの欠点がどこにあるのかは分かっている。アップグレードによってパフォーマンスを引き上げられるよう作業に取り組んでいかねばならない。上手くいく事を願う」

テクニカルディレクターを務めるジョディ・エギントンは「シーズン最初のレースは終わったが、エアロ開発競争は終わっていない」と補足する。

「目下の課題はグリップ不足だ。解決の鍵となるエアロ開発に焦点を当てていく」

「パフォーマンス向上のためのアップデートを継続的に投入していくべく、空力部門と製造部門は集中して取り組んでいる」

ドライバーを高く評価する首脳陣

マシンが非力であったがために、ドライバー達の仕事ぶりは一層光った。ルーキーのチームメイト、ニック・デ・フリースも19番手からの14位完走を果たした。

トストは「予選で14位と19位だった事を思えばレースで挽回できたと言えよう。2人のドライバーは良い仕事をしたと言わざるを得ない」と評価する。

「残念ながらコンマ数秒の差で逃してしまったが、ユーキはトップ10入りを目指して懸命にプッシュしてくれた」

エギントンもまた「ユーキもニックも、今日はスタートからチェッカーフラッグまで実に見事な仕事を見せてくれた」と労をねぎらった。

「2人はタイヤを上手くマネージしていたし、ピットウォールへのフィードバックも良く、素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれた」

続くサウジ戦での苦戦を警戒

第2戦サウジアラビアGPの舞台は「史上最速のF1ストリートサーキット」を標榜するジェッダ市街地コースだ。角田裕毅はコース特性的に、2週間後に控える週末も厳しいものになると警戒する。

「サウジアラビアを皮切りに、コンスタントにミッドフィールドで争えるようにするためには、マシン開発という点でやるべき仕事が山積みです」

「高速パフォーマンスに苦戦している事を考えると、次のサウジは難しいレースになるかもしれません」

「ですがチームも僕も、クルマからスピードを引き出してポイントを獲得できるとポジティブに考えています」

2023年F1第1戦バーレーンGPの決勝レースはマックス・フェルスタッペンがポール・トゥ・ウインを果たし、2位にセルジオ・ペレスが続いた事でレッドブルが1-2フィニッシュを飾り、3位表彰台にフェルナンド・アロンソ（アストンマーチン）が滑り込む結果となった。

史上最速のF1ストリートサーキットを自称するジェッダ市街地コースでの次戦サウジアラビアGPは3月17日(金)のフリー走行1で幕を開ける。

F1バーレーンGP特集