F1エンジン開発凍結もホンダ含む3メーカーは馬力向上? 疑惑の目を向けるアルピーヌ
現行の1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジンは昨年を以て開発が凍結されたものの、ホンダ(レッドブル)は10馬力、フェラーリは30馬力、そしてメルセデスは16馬力アップを果たしたとされ、アルピーヌが疑惑の目を向けているという。
2023年シーズンは2025年末に終了する4年間のパワーユニット(PU)開発凍結期間の2年目にあたる。ICE(内燃エンジン)とターボ、MGU-Hは昨年3月1日に、MGU-Kを含む他のエレメントは昨年9月1日にホモロゲーション期限を迎えた。
これによりパフォーマンス向上を狙うPU開発は凍結されたが、「信頼性、安全性、コスト削減、または最小限の付随的な変更のみを目的とした」ものであれば許可を得た上で変更する事ができる。
凍結中に馬力向上を果たした3メーカー
つまり理論上、信頼性を向上させる事によってこれまで引き出せなかったパワーを引き出す事は可能であり、伊「ガゼッタ・デッロ・スポルト」によると、アルピーヌ(ルノー)以外の3メーカーのPUはパワーが向上している可能性があるという。
特に大幅なパワーアップを果たしたのはフェラーリで、「30馬力」という数字が報じられている。
2022年型のフェラーリPU「066/7」は特にターボチャージャーとMGU-Hに深刻な信頼性の問題を抱えていた。その原因は乱流ジェット点火方式に起因するとされる。
これがネックとなりフェラーリは昨年、パワーを抑えての運用を強いられたと考えられており、この問題の解決により大きな前進を果たしたようだ。
メルセデスに関してはクランクシャフトやコンロッドなど、内部の摩擦低減とペトロナスの新しい潤滑油の投入により燃焼効率が改善された結果として、約16馬力の向上が見込まれるという。
ホンダ(Honda RBPT)に関しては、MGU-HやMGU-Kを含む信頼性を目的とした幾つかの改善により約10馬力の向上が取り沙汰されている。
曖昧な信頼性の境界線
ガゼッタによると唯一、馬力に変化がないアルピーヌは、ライバルメーカーのこうした改良が本当の意味で信頼性を目的としたものであるかどうかについて疑念を抱いているという。
英「The Race」によるとルノー製PUの本拠であるヴィリー=シャティヨンの責任者を務めるアルピーヌのブルーノ・ファミンは「純粋な、真の信頼性の問題とは何なのか?」と述べ、エンジン開発凍結ルールのグレーゾーンを指摘する。
「信頼性の問題の背後には当然、潜在的なパフォーマンス向上があることが多い。その境界は必ずしも極めて明確というわけではない」
「22年に我々が経験したように、ウォーターポンプに問題がある場合はそれが純粋な信頼性の問題であることは非常に明らかだ。より良い、または異なるウォーターポンプに変更して得られるものは何もない」
「だがピストンリングの材質を変更する必要がある場合はどうだろう。より強固なものに変更する事でより高いパフォーマンスを得ることができる」
「境界はどこにあるのだろうか? それは明確ではないのだ」
PUサプライヤーは互いに変更状況を知る事が可能で、その意味ではある一定の透明性が確保されている。
変更を希望する際はFIAテクニカル部門に書面を提出し、メーカーは必要に応じて問題が発生しているという明確な証拠を出さなければならない。妥当性を判断するためにFIAは提出された書面を全メーカーに配布し見解を募り、変更の可否を判断する。
ファミンによると2022年シーズン中に3つのライバルチームから出された変更申請は「30、40、50、70」に及んだという。
なおパッケージングという観点からマシン全体のパフォーマンスに寄与する変更を行う事は可能であり、ファミンは「レギュレーション上、可能性が残されているのはパッケージングだ。例えば、エンストンの同僚たちがよりよい空力特性を実現できるように吸気ラインや排気ラインを変更することなどが考えられる」と語っている。
またこれとは別に、エネルギーマネジメントの改善によってパフォーマンスを追求する事も可能だ。ただしソフトウェアのバージョンは1シーズンに1つしか許可されないため制限は大きい。