問題児ながらも愛すべき「カルト的」な角田裕毅を信じるレッドブル…日本人初のF1ウィナー誕生に太鼓判
角田裕毅についてレッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、感情の抑制がきかない問題児ながらも愛すべき「カルト的な存在」だと認め、日本人初となるF1ウィナーの誕生に太鼓判を押した。
2022年型F1マシン「AT03」の競争力が芳しくないためにランキングでは目立っていないものの、F1での2年目を迎えた角田裕毅はトップドライバーへと至る階段を着実に登っている。
特にそれは1ラップペースに表れている。角田裕毅はシーズン前半戦を終えて、タイトなミッドフィールドにおいてピエール・ガスリーとの予選平均順位差を僅か1.08位に押さてみせた。これは実質的に全チームの中で最も小さいマージンだ。
角田裕毅と岩佐歩夢の性格は正反対
成長著しい一方、イギリスGPでは同士討ちを喫するなど、依然としてミスが目につく部分もあり、また、プラクティス、予選、決勝の別にかかわらず、角田裕毅は今もしばしばコックピットの中で平常心をコントロールできていない様子を見せている。
無線での癇癪的な発言に関してヘルムート・マルコはMotorsport-Total.comとのインタビューの中で、「ある時期から、無線での怒り方が度を越えてしまったんだ」と指摘した。
「彼はカーリン(F2時代の所属チーム)で英語での悪態のつき方を学んだんだ。コーナリングの最中に悪態をついたり罵ったりするのは良くない」
「遅くなるだけから止めるべきだと説明したんだ」
「それに、エンジニアにしてみれば『くそっ、なんなんだこのクルマは!』といったフィードバックを返されても何もできない」
「チームとしてはクルマが具体的にどういう状況なのかを正確に把握する必要があるわけで、だからこそドライバーはそれを分析し、事実に基づいて物事を言わなければならないんだ」
ヘルムート・マルコ曰く、同じ日本人ドライバーであるにも関わらず、角田裕毅の性格はレッドブル・ジュニア生であり今季よりFIA-F2選手権に参戦している岩佐歩夢とは正反対だという。
「チームには2人の日本人がいるが、これ以上ない位に正反対だ。イワサはポールポジションからレースに勝てなかった場合『こんな結果ですみません』と言ってくるが、ユーキは全く違う」
「彼は何も気にしないんだよ。すごく感情的だし。日本人としてはむしろ例外的な存在なんだ」
自然体だからこそ愛される角田裕毅
無線で暴言を吐き続ける角田裕毅は今年始め、ヘルムート・マルコから「問題児」の烙印を押され、メンタルトレーニングの一環として心理学者を充てがわれた。
ヘルムート・マルコはこれが角田裕毅の助けになるはずだと認めた上で「この手の問題を抱えてメンタルトレーナーのサポートを受けているドライバーは何もツノダだけではないし、批判されるような事じゃない」と寄り添った。
ドライビングに影響が出るほどに内面をコントロールできていないのであれば問題だが、思った事がすぐ口から出てしまうのは率直である事の裏返しであり、必ずしも全面的に悪い事ではない。
F1という世界的に注目されるトップスポーツにおいてなお、自然体であり続けるところが人気の源でもあり、ヘルムート・マルコもそんな角田裕毅を気に入っている。
ありのままの姿だから好かれているという印象がありますが…とのインタビューアーに対してヘルムート・マルコは「そうだ。ユーキは我々の中である種のカルト的な存在なんだ」と語った。
F1の表彰台で君が代を聴く日は近い?
日本には「手がかかる子ほどかわいい」という表現がある。ただ、ヘルムート・マルコが角田裕毅を気にかけている理由は単に世話が焼けるからというだけではない。
マネジメントに携わって50年近いキャリアを持つ79歳のオーストリア人は角田裕毅に対して、佐藤琢磨や小林可夢偉がなし得なかった日本人初のF1ウィナーの可能性を見えている。
ヘルムート・マルコは「彼はグランプリで勝てるポテンシャルを秘めている。それはジュニア・プログラムで我々が目指しているものでもあるんだ」と太鼓判を押した。
ただ、レースで勝利する事とタイトルを獲得する事は別物で、ヘルムート・マルコは角田裕毅がF1王者になるためにはまだまだステップアップが必要だと指摘した。
「ワールドチャンピオンになるためには様々な物事が上手く噛み合う必要がある。ドライバーとしては人格という点で更にもう一歩成長しなければならない」
「なぜなら、ドライバーは肝心な局面でチーム全体を鼓舞する事も、崩壊させる事もできるからだ」
未だ発表がない角田裕毅の去就
ガスリーに関しては2023年のアルファタウリ残留が発表されているが、角田裕毅の去就はサマーブレイクに入ってなおアナウンスがない。
ただ、ヘルムート・マルコは次にアルファタウリのシートが空くのはガスリーがライバルチームに移籍する時だと考えている節が強く、有力な若手もいない事から角田裕毅の残留は依然として濃厚だ。
ジュニアプログラムから次にF1に昇格しそうなのは誰か?との質問に対してヘルムート・マルコはデニス・ハウガーに言及した。
「彼はF3で本当に素晴らしい支配的なパフォーマンスを発揮していたのに、F2では浮き沈みが多く一貫性がない」
「できると思っていたドライバーが急に駄目になったりする事はあるし、その逆もまた然りだからこそ、予測するのは難しいんだ」