不可解な待機…レッドブルとアルファタウリが遅々としてグリッドに着かなかったのは何故か?
F1スペインGPではレッドブル・パワートレインズ(ホンダ)勢が遅々としてダミーグリッドに着かず、制限時間ギリギリまでガレージ内に留まる姿があった。ライバルは最小燃料温度への違反を避けるための策だったとみている。
セレモニーの開始に向けて他車がダミーグリッドに着く中、レッドブルのマックス・フェルスタッペンとアルファタウリのピエール・ガスリーはクルマを暖気させた状態で長らくガレージ内に留まった。コースに向かったのはピットレーン閉鎖の僅か20秒前だった。
この不可解な動きについてレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、予選でトラブルに見舞われたDRSの対策作業の追加チェックのためだと説明したが、実際には別の問題が理由だったとみられている。
燃料補給について定めたF1技術規則第6条4項2は、搭載する燃料の温度について「周囲気温」の10℃未満であってはならないと定めている。「周囲気温」は決勝の2時間前に記録された外気温に設定され、燃料温度はFIA指定のセンサーで測定される。
マイアミまでの5戦に関しては規定の「周囲気温」マイナス10度ではなく、別途、各開催地の平均を取った18℃が最小燃料温度に設定されていたが、バルセロナでは競技規定通りの実際の測定温度に戻され、周囲温度が35℃であった事から燃料は25℃以上でなければならなかった。
燃料は温度が低いほど密度が高いためパフォーマンス面で有利となり、信頼性の確保という点でも低いほうが望ましい。
給油そのものはスタートの2時間前に行われるが、合法性確認のための温度チェックはガレージアウト時の値で判断される。外気温が高ければ給油後もマシンの燃料温度は上昇し続ける。つまりできるだけ低い温度の燃料を給油するインセンティブが生まれる。
BBCによるとフェラーリのマッティア・ビノット代表は、実際に何が起きていたのかは分からないとしつつも「想像はつく。タンク内の燃料温度だろう」と述べ、ホンダ勢の2台が暖気を続けながらガレージ内に留まっていたのは最小燃料温度に違反する可能性があったからだと予想した。
なお現実にはピットアウト時の値で判断されているが、レギュレーションは温度測定の対象となる燃料について「マシンですぐに使用される予定の燃料」としており、文言的には幾らか解釈の余地がある。
ビノットは「イベント中は常にそうでなければならない。出庫時だけでなく、ガレージにいる時もそうだ」と述べ、チェックの対象タイミング拡大が望ましいとの考えを示した。
フェラーリ製パワーユニットとシェル供給のバイオ燃料は温度上昇による影響が低い可能性を示唆するという点でビノットの発言は興味深い。ホンダF1パワーユニット技術を採用するレッドブルは、灼熱のバーレーンGPで2台が燃料システムのトラブルによりリタイヤを余儀なくされている。
なおFIAは「我々は燃料温度をモニターしている。レッドブルがガレージを出ることを許されたということは、彼らの燃料温度は合法だったということだ」と述べ、レギュレーション違反はなかったと断じている。
第5戦マイアミGPではセバスチャン・ベッテルとランス・ストロール擁するアストンマーチンF1チームが決勝を前に急遽、ピットレーンスタートとなる事態が発生した。最小燃料温度に問題があったためだと考えられている。