オーバーテイク・キングの称号を巡るF1王者の”裏取引”、姑息な手段でライコネン撃退を画策するベッテルとアロンソ
激しい首位争いが繰り広げられているのはチャンピオンシップだけではない。奇しくも世界選手権タイトルを持つ3人のドライバーは、僅差で”オーバーテイク・キング”の称号を競り合う状況にある。
F1は今年、シーズンを通して最も多くの追い抜きを記録した”勇敢”なドライバーを称えるため「クリプトコム・オーバーテイク・アワード」を創設した。
当初はセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)が首位を維持し続けてきたが、第19戦サンパウロGPでフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)がトップを奪取。すると、前戦カタールGPでキミ・ライコネン(アルファロメオ)が3位に浮上し、トップ3をF1王者が占拠する事態となった。
第21戦サウジアラビアGPを前に首位に立つのはアロンソ(計116回)。これにベッテルとライコネンが2位タイ(計115回)で並んでいる。
順位 | ドライバー | オーバーテイク数 |
---|---|---|
1 | フェルナンド・アロンソ | 116 |
2 | セバスチャン・ベッテル | 115 |
2 | キミ・ライコネン | 115 |
4 | ランス・ストロール | 112 |
4 | セルジオ・ペレス | 112 |
6 | カルロス・サインツ | 104 |
7 | ダニエル・リカルド | 103 |
8 | ランド・ノリス | 98 |
ジェッダ市街地コースでの木曜会見で同席したアロンソとベッテルは、フェラーリ最後のタイトルホルダー、ライコネンが猛追してきた事を受け、裏取引をして意図的に追い抜き回数を水増しすることで賞を分け合おうと冗談を飛ばした。
”オーバーテイク・キング”のチャンスが懸かっている事は認識しているか?と問われるとアロンソは「数レース前に今のランキングを見たけどさ…」と返し、これにベッテルが「僕も同じだよ。でもまだ賞を獲ったら何が貰えるのか…」と被せた。
ベッテルの着眼点はアロンソを大いに感心させた。アロンソは「そう、そこなんだよ! 何が貰えるのか知っておかなきゃ。場合によっちゃお互いに50/50で取引して…」と述べ、姑息な手段でライコネンを振り切り、賞を山分けしようとベッテルに持ちかけた。
ただその一方で、キャリア通算349戦を以て今季限りでF1を去るフェラーリ時代のチームメイトに触れ「キミは今、3位につけてるみたいだけど、コロナで2戦欠場してるから、あいつが賞を獲るべきだと思う。アブダビでのF1ラストレースを1位で飾れたら良いよね」と王者らしく振る舞った。
とは言え、賞の内容によっては世間体より実を取るのがF1ワールドチャンピオンだ(?)。
ベッテルはアロンソの提案に同意して「上手いことでっち上げちゃえば良いんだよ。お互いにワザとオーバーテイクしあってさ…」と述べ、相互に追い抜き合う事で数字を上乗せしようと持ちかけた。
アロンソは「じゃあ今週末は20回追加するか!そうすればキミを出し抜けるだろう」と提案に乗り、かつてのタイトル争いのライバルの笑いを誘った。